【ヴァルプルギスの華燭】一日目昼――第一の間

昼フェイズ、戦闘
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アルティメット @ultbeelz

――やはり女人の糸はあまりに脆い、と宙に愚痴る。 蜘蛛の糸ならまだわからんともあれ、この糸でさえ一介の雑兵を根こそぎ縊り殺せる強度を持つというのに、あまりに頑丈、あまりに剛毅。 「ならばその四肢から食らってくれよう。あぁでも吾(わたし)、角は食わないで。駄菓子にする」

2016-08-02 21:45:09
アルティメット @ultbeelz

蜘蛛に落とされた彼の体、その一撃を真正面から受ける。非常に不快感を示す肉のひしゃけた音と、外骨格にぶつかる骨音。 蜘蛛は一瞬遅れて痛みに悶えて咆哮を上げる。耳障りな甲高い鳴き声を上げて木に張り付いていた。体が堕ちる。蜘蛛らしく自身もまた糸を吐いたものだから地面と接触は免れる。

2016-08-02 21:46:59
アルティメット @ultbeelz

しかしどこまでもまっすぐにぶつかり合うのが好みというなら、落下の際に蜘蛛が足で彼の体を抑え込むだろう。逃げるのを許さないとばかりに。 巨体が巨躯の男の身を枝葉の如く折らんとする怪力で締め上げていくことだろう。

2016-08-02 21:47:17
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

「食われてはやらぬと、言うておる!!」 潰しひしゃげた感覚が脚に伝わる。ひしゃげた様子が目に入る。甲高い鳴き声が耳を劈く。彼の身体は自由落下のまま、落とした蜘蛛と共に落ちる。着地の勢いを殺そうと蜘蛛を更に蹴りつけようとして、その前に蜘蛛の脚に捕まった。そのまま締め上げられる。

2016-08-02 22:33:45
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

「く、あ――!?」 身体を強化して抵抗する。蜘蛛の腕の中から抜け出そうと足掻く。落下の衝撃は未だなく、蜘蛛が糸でそれを避けたともがきながら知る。 身体強化にも限度はある。このまま力比べをするには、蜘蛛の負傷があってもこちらが不利だ。

2016-08-02 22:34:09
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

足掻きながらどうにか上半身と首を反らせるだけ反らして、角を強化する。 頭の両側、角が伸びる。早回しで樹の成長を見るように。 ――蜘蛛の脚の拘束から抜け出さなければ、相手の大きさに対して有効な打撃は少々難しい、と彼は判断した。 常の数倍伸ばした角、頭がやや重くなった感覚。

2016-08-02 22:35:06
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

その角を一息に、蜘蛛めがけて薙ぐように振り抜こうとする。

2016-08-02 22:35:25
アルティメット @ultbeelz

蜘蛛は臆病な生き物だ。しかしヒトほど感受性豊かではない。 恐怖も痛みも一塩なれど、それで後退するほどの感性はない。 足掻けどしっかりと捕らえた彼の体は動けまい。多少ばかり硬い体故に"折る"のも骨だが、体格差では歴然である。

2016-08-02 23:31:52
アルティメット @ultbeelz

相手はしかし、それでも抗う。手足を封じた蜘蛛の節々に封じられてなお。 彼は動いた。肥大化した角は年輪を深く刻んだ大木を想起させる。 女人は静止したまま、その光景をずっとずっと見つめていた。 「さすがにそれは外殻が傷付く。吾(わたし)が格好悪くなる」

2016-08-02 23:32:17
アルティメット @ultbeelz

「だが不格好になっても足やガワならまた生える。妾(わたし)が願おう。二本ほど犠牲にして良いから食うと良い」 薙ぐ一振りに恐れを抱いたのもつかの間。蜘蛛の巨体が刻まれる覚悟を決めた。 如何ともしがたい色の体液が流れるものの、蜘蛛が、生き物が、躊躇うリミッターが外される絶好の好機。

2016-08-02 23:33:48
アルティメット @ultbeelz

――シュルララララ 十の眼が血走った眼でリーズヴォルフなるモノの角を牙が止めた。丸のみにしかねんほどの大口で開け、拘束する自身の足ごと食らう勢いで顎を開く。 しかして実際に食らえるのは角か半身か。野性的に振る舞い、知能の無い虫は食のみを極めて思考し、実行する。

2016-08-02 23:34:08
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

薙いだ角は牙に止められた。舌打ちをこぼして、次いで大きく開かれた顎を見た。……身体強化は健在で、まだ競り負けてはいない。ならば。 蜘蛛の顎が迫る。それを見据えながら、 ――鹿の角は生え変わるものだ。 牙に止められていた側の角が取れる(・・・)。取れた角を握りしめる。

2016-08-03 21:47:48
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

大きく開かれたその口の中へ、握りしめた角を突き出した。同時、無理矢理な姿勢だと承知の上で勢いのままもう片側の角で薙ぐ動作。

2016-08-03 21:48:02
アルティメット @ultbeelz

砕き、折り、ご自慢の角が落ちる。 しかして勝ちを確信するには至らない。真なる捕食をせねば蜘蛛は満足しない。 だが、予想に反して――相手が半獣のよな風貌であることを念頭においても――その再生能力の見極めが足りなかったことを痛感する。

2016-08-04 00:11:34
アルティメット @ultbeelz

シュルルルルルル――― 食ってかかろうとした矢先に蜘蛛の口に角が食らわれ、切り裂かれていない反対側に角が刺さる。 倍近い体格差をもつ者だのに、生き物らしく奇狂うよに悶えて体液をまき散らす。 もはや噴出していた糸も身悶えする巨体に耐え切れず糸が切れて滑り落ち、落下していく。

2016-08-04 00:11:59
アルティメット @ultbeelz

蜘蛛に捕食するだけの力はない。正確には地面に潰れる己が身を間に合わせることは叶わない。 それでも腹を見せて落下する無様だけは晒したくない。六肢を蠢かせる愚者になりたくない。 蜘蛛は彼を掴んだまま、彼を下にして落下する。 しかし先より力もないことは明白であり、脱出も容易いだろうか。

2016-08-04 00:15:05
アルティメット @ultbeelz

「矜持がないと云ったのは訂正しよう。妾がそう思ってしまった。吾には悪いけど、妾はそう考え至ってしまったわ」 枝の上で腰かける装飾品はなおも壮健とばかりに足をふらつかせる。 「申し遅れたが、最後に妾と吾の名を語ろう。我等は『アルティメット」。ガラス瓶の中で生まれた兵器だ」

2016-08-04 00:23:52
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

痛みに蜘蛛が悶えるのに振り回される。この内に拘束から抜け出そうと暴れようとして、落下していることに気付く。自分が下になっていることにも同時に。 冗談ではない。食われるのも御免だが、潰されるのも御免である。我儘が過ぎるかと彼は思うも、本心なのだ仕方ないと開き直る。

2016-08-04 19:37:00
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

蜘蛛の拘束には先ほどまでの力はない、しかし振りほどく前に地面は迫っている。 (間に合わ、――!) 身体強化はしているが、それでも落下の衝撃は響くし何より上には蜘蛛がいる。 重い音を響かせて諸共に落ちた。 落下の衝撃と蜘蛛の重みとに耐えかねて呻く。

2016-08-04 19:38:56
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

下敷きにされた蜘蛛の下からどうにか這い出て、頭上から落ちてきた声にのろのろと首を上げる。我等、と白い女は言った。この蜘蛛と白い女はふたりでひとつということだろうか。がらすびん、へいき。森の中で過ごしていた彼にはそれらは縁遠く耳慣れない言葉であり親しんでいないモノである。

2016-08-04 19:39:38
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

なので彼はそれは何なのかと聞きたくなったけれど、それよりも落下の衝撃だとか潰されたこと負傷が彼の目を回していたし、散り散り気味になっている思考にはその辺りを考える余裕がなくて、 「あるてぃめっと、…アルティメット。おう、覚えたぞ。うん、いい名だのう」

2016-08-04 19:39:55
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

そういえばここまで名前を聞いておらなんだと、場違いなくらいのんびりとしたことを言った。口を滑らせたとかその類である。口に出すタイミングとかを悩む余裕もなかったのだ。

2016-08-04 19:40:21
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

そして倒れた。前脚から勢いよく崩れ落ちた。 気絶である。どうにか気力だけで意識を保っていたが、うっかり気が抜けてしまったのだった。脳が揺れていたのだった。よくここまで保ったと褒められてもいいのでは、とのちに回顧して彼は思う。

2016-08-04 20:06:05
アルティメット @ultbeelz

樹上でなおも語り掛けるのは、話好きなチェシャ猫か。口元に笑みを絶やさずにいる。 その眼はフードの奥で隠れているが、確かに笑みと同様の感情を表しているのだろう。 本来ならば好機であろう。隙をついて一撃を見舞い、名乗りを上げるとともに武勲を示すチャンス。欲すものはただの結果のみ。

2016-08-04 20:51:53
アルティメット @ultbeelz

蜘蛛が這い上がろうとして一度体を持ち上げるが、稼働に耐えられず蜘蛛は節々を再起動させることはとうに叶わずにいた。 ――蜘蛛は、ここで眼の色を失い、立ち上がることはなかった。それこそただの蟲のように、何でもないように崩れた。

2016-08-04 20:54:03