【ヴァルプルギスの華燭】二日目昼――第一の間

昼フェイズ、戦闘
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《ヴァルプルギスの華燭》管理アカウント @walpurgis_marry

聞こえるか、あの鐘の音が。 聞こえるか、命の潰えるあの音が。 力を持ち、その足で立つならば。 その命の意義を果たさなければならない。 聞こえるか、君の心音が。 君が愛する、或いは求める、その音が。 #ヴァル華

2016-08-11 20:00:02
マリア・ガルシア @ro_akiyui

顔のない人形に、案内されるままに扉の前に立つ。己の他に人は見えず、本当に此処に入ればいいのかと疑問に思う。けれども他に行くべき先なんてのは分からず、進むより他に無い。マリアは扉をじっと見つめ、ゆっくりと手を伸ばした。 触れる。木で出来た扉の感触。そっと押せば、扉はひとりでに開く。

2016-08-11 22:19:34
マリア・ガルシア @ro_akiyui

であれば、と。マリアは扉の先へと足を進めた。 「————」 そうして現れた世界に、マリアは絶句した。 「こ、ここは……」 空が青い。鳥が飛んでいる。けれども生き物ではなく、金属の塊だ。金属の塊が、空を悠々と飛んでいる。しかも、複数。

2016-08-11 22:20:01
マリア・ガルシア @ro_akiyui

中空を、四角い箱が走っていく。一本の長い金属にぶら下がっているように見える。箱に窓はあるが、人の姿は見えない。知識として持つ列車と言うものに似ていると思ったが、列車は無人で動くものではないと記憶していた。 「ここは……」

2016-08-11 22:20:19
マリア・ガルシア @ro_akiyui

塔が立っている。けれども見たこともないような形だ。少なくとも物見の為にあるとは思えない。 潰したボールを繋げたような、曲線の目立つ建物が多い。マリアにはその建物が人の住居であるとは分からなかった。 「…………ここは……」

2016-08-11 22:20:31
マリア・ガルシア @ro_akiyui

全てが初めて見るものだった。全てが知らないものだった。もしも人間社会にもう少し詳しければ、それが近未来都市と表現されるような場所であると察せられただろう。 「ここは……?」 しかし悲しきかな。質素な生活を送り、娯楽に手を伸ばしたことさえ無かったマリアには、その発想が無かった。

2016-08-11 22:21:18
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

大広間から出る際にしっかり回収しておいた角を片手に、彼は人形に案内された扉の前にいた。次はどちらだろう、と大広間で見た姿を思い返しながら扉を開けて、 「…………?」 なんぞここは、と首を傾げた。 扉の向こうの方が広いことに驚きはしない。それはもういい。しかし、ここは一体何なのか。

2016-08-12 08:58:09
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

森ではないのはわかる。とりあえずと踏み入れた先は慣れ親しんだ土ではない硬い感触を返してくる。屋敷内の柔らかなあれはすぐに慣れたが、こっちはちょっとすぐに慣れそうにない。 周囲を見渡す。轟々と音を立てて鳥のようなものが遥か上空を飛んでいる。

2016-08-12 08:58:33
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

…ものすごく高いところを飛んでいるようなのに姿がくっきり見えるということは、とても大きいのではないだろうか、あの鳥は。しかし羽ばたいているようには見えない。 周囲を見渡す。何か長いものが動いている。やたら丸みを帯びている岩やら(家だと気づけなかった)、

2016-08-12 08:59:31
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

木のように背が高いが木ではなさそうな何かとか(塔を知らない。知っていてもあんな形状であんな高さのものは知らない)、未知の世界である。何だこれ。魔界か何かか。 「これは…何なのじゃ…?」 森で暮らしていた彼には、ここにあるものはほぼ全て未知である。

2016-08-12 08:59:42
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

街路樹(という名称は知らない)がぽつぽつ植わっているのを見てちょっとほっとしている。ひとは既知のものがあるとほっとするものだ。 恐る恐る、といった風に彼は都市の中を進んでいく。

2016-08-12 09:00:03
マリア・ガルシア @ro_akiyui

周囲を見回し、困惑のままに歩き出す。本当に此処に誰かがいるのだろうか、と人の気配のしない街に疑いを持つのが半分。誰かいて欲しい、と見慣れない物に囲まれた不安が半分。硬い地面——コンクリート?違う気がする——をパタパタと音を立てて歩く。無人の箱——空にあるものより小さい。

2016-08-12 12:04:13
マリア・ガルシア @ro_akiyui

車だろうか——がその傍らを走って行く。 「どうしましょう……」 誰かの姿を探して、足は速く動く。次第に走り出し、そして。 「——いました!」 見えた誰か——少なくとも人の形とは違う——に、マリアは何も考えずに駆け寄った。それが戦う相手だ、という発想は、抜け落ちていた。

2016-08-12 12:04:19
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

歩いても歩いても見慣れない風景。点々と生えている樹だけがなんというか頼りである。本当にここは一体何なのか。朽ちた森のほうがマシなんじゃなんて思う日が来るなんて思ってもいなかった。動く岩みたいなものまである。先程なんて危うくぶつかりかけた。 「……ん?」

2016-08-12 12:27:06
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

道中は轟々と低い音ばかりで、昨日の森と同じく生き物の気配はない。のに、今、何か軽い音を耳が拾い上げた。聞き間違いでなければいました、とも聞こえた。 声のした方を向くと、黒い装いの、確か、 「…マリア?」…だったかの? やっと樹以外にも知ってるものを見つけた安堵で息を吐いた。

2016-08-12 12:28:09
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

…戦わなければとは思わないでもないのだが。 でもちょっと、ここまでが心細すぎた。このあと戦うとしても一呼吸入れるくらいあっても良いと思うのだった。

2016-08-12 12:28:24
マリア・ガルシア @ro_akiyui

どうにか見つけた人影に駆け寄り、その手前で立ち止まる。ふう、と息を整える。ふと、そう言えば名前を呼ばれたような、と思い至る。声は聞いたことのあるものだ。 「……リーズヴォルプ様?」 鹿の身体に、人の身体。見覚えのある角の方。ああ!、とマリアは明るい声を上げた。

2016-08-12 12:49:15
マリア・ガルシア @ro_akiyui

「では、貴方が私と戦ってくださる方なのですね!」 黒い布の下で笑い、軽くお辞儀をする。 「よろしくお願いしますね。ああ、それにしても良かった。私、何処か関係無いところへ飛ばされてしまったのかと思いました」

2016-08-12 12:49:25
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

マリアへ名を呼ばれて、むう、とちょっとだけ複雑、というか不満げ、に見えなくもない表情。…様か。様付けかあ。なんとなく落ち着かない、と思ったのが顔に出たのだった。割と分かりやすいのだった。しかし、とすぐその表情を引っ込めて答える。 「おう、そうなるじゃろうな」

2016-08-12 13:04:00
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

彼がここで出会った人物はマリアのみである。 「こちらこそよろしく頼む、マリア。……ああ、我もだ。……ほぼほぼ見知らぬ光景での、異界にでも迷い込んだかと思うたぞ……」 言いつつ軽く頭を下げて、後半はやや虚ろな表情で。

2016-08-12 13:04:14
マリア・ガルシア @ro_akiyui

「異界、ですか」 リーズヴォルプの表現に頷く。 「そうですね。私もそのように思えました。これは人の世界なのでしょうか?けれども私の知識には、機械を用いた人の世界はあっても、このように、まるで機械が生きているかのような世界はありません」

2016-08-12 13:34:26
マリア・ガルシア @ro_akiyui

列車は知っている。車も知っている。舗装された道も鉄塔も知っている。人の智慧の生み出すものは、力を至上命題とする闇の者にはどれもこれもが目新しい。このような物を作れるのかと、感心したのは数限りない。 「人の世界はいつかこのような世界に到達するのでしょうか」

2016-08-12 13:34:37
マリア・ガルシア @ro_akiyui

私には想像出来ませんが、と言いながら。マリアは周囲を見回し、街を見てこう思う。 畏れを忘れた街だ、闇の者が蹂躙するに難しいとは思えない、と。

2016-08-12 13:35:19
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

……きかい、とは。 う、うん?と彼はとりあえず相づちを打ちながら、頭の中を疑問符で埋め尽くしている。きかいって何だろう。ここで合流するまでに見た色々のことだろうか(どうにか察するに動いてるものが特にそうらしい)。 …繰り返すが。森で暮らしていた彼には、こういうものは馴染みが薄い。

2016-08-12 14:05:22
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

金属製の武具ならばまだ知っているが、機械仕掛けなどもってのほかである。彼の知っている場所には、そんなものはあったのかも知れないが、彼が親しむほどには無かったのだ。 マリアは凄いなあ、物知りだな、と己の無知を恥じ入る心持ちである。

2016-08-12 14:05:47