【ヴァルプルギスの華燭】二日目昼――第一の間

昼フェイズ、戦闘
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リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

強化をしていたとはいえ、腕は受け止めた衝撃に痺れている。ろくに扱えなくなったなら角は持っているだけ邪魔だと放り捨てて、脚を優先し強化で治しながら吹き飛ばしたマリア目掛けて走る。 脚は大切だ。立つ、走る、生きる為には脚が第一だ。脚が駄目になるというのは死とほぼ同義だ。

2016-08-13 19:17:44
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

…初撃を食らった後ろ脚はまだ癒えきってはいなかった。それを承知でその上で先ほどの攻撃を受け止めた。受け止めたものの、やはり、響いている。走る姿から初撃の時の軽やかさが失せて、ややぎこちないものとなっているのは直ぐに気付けるだろう。彼も自覚している。

2016-08-13 19:18:22
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

その上で走る。起き上がるマリアを目掛けて。その蹄を振り下すため。間に合うか、どうか。俊敏さに欠けている今では。

2016-08-13 19:19:15
マリア・ガルシア @ro_akiyui

——音がする。足音が、駆ける音が。 マリアは顔を上げ、リーズヴォルプを見る。微かにぎこちない足音を聞きながら、避けようともせずただ正対する。

2016-08-13 21:19:38
マリア・ガルシア @ro_akiyui

——蹄の音。 距離が縮まる。 ——毒を。 距離が無くなる。 ——安らかな眠りを。 振り上げられた蹄が、目前に迫る。 ——神よ、私は祈ります。

2016-08-13 21:19:56
マリア・ガルシア @ro_akiyui

マリアは両腕を変化させる。二匹の目の無い白い蛇が顎を開き、その牙に毒を滴らせて襲いかかる。力を失し、柔らかな眠りへと誘う毒を。 蹄がマリアを打つのが先か、牙がリーズヴォルプを噛むのが先か、それともそれらが全く同時か。 一種の賭けのようなものだった。

2016-08-13 21:20:01
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

駆けて駆けて辿り着く。標的はまだ動いていない。彼女はまっすぐこちらを見ている。何か手がある、とは察せるが、けれどそれが何なのかまではわからないし、ここまで距離を詰めたなら引き返すよりも。 一撃加えることを選んだ。 前脚を振り上げる。 ――無防備になった胴に、彼女の牙が突き刺さる。

2016-08-13 22:59:37
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

「――――!」 痛みと、熱。ぶれ始めた視界に、毒かと思うもののもう遅い。 それでも、振り上げた脚を振り下ろした。 ぐらぐら揺れる視界では、まともに狙いを定められなかったけれど。

2016-08-13 22:59:51
マリア・ガルシア @ro_akiyui

牙が皮膚を食い破る。攻撃はマリアが一瞬速かった。毒は身体を巡るだろう。そのうち痛みも分からなくなる。 マリアは微笑んだ。その胸に、蹄が振り下ろされる。避けようともせず、受け入れた。 「ッ——」 毒を与え動きを鈍らせ、その足がぶれたとて、正面から受ければ衝撃は重い。

2016-08-13 23:56:22
マリア・ガルシア @ro_akiyui

かは、と。肺の中から空気が押し出される。胸部に走る痛みは激痛と呼ぶに相応しく、意識が揺らぐ。それでもマリアは意識を留め、両腕の蛇を振るってリーズヴォルプを投げ飛ばそうとする。

2016-08-13 23:56:26
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

脚を振り下ろせたのは意思と自然落下とが半々。どうにか当たったらしい、その感触は遠い。感覚もだが意識も遠い。毒が回るのが早い。僅かに咳き込む音が耳に届いたけれどその音が何なのかを考えるには至れなかった。当然、彼女の両腕が振るわれることに気付けるはずもなく。 抵抗なく投げ飛ばされた。

2016-08-14 00:22:15
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

地面に叩きつけられる。衝撃に、呻くこともなく。 …何かされたのは分かるが、どうなっているのかがわからない。うまく動けない。今自分はどうなっている。とにかく立ち上がらなければ、立ち上がらなければならない。感覚が遠い。地面はどこだ。どうなっている、何か、何かを、しなければと思うのに、

2016-08-14 00:22:54
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

……それすら分からなくなって。 倒れ伏したまま、彼はそれきり動かなくなった。

2016-08-14 00:23:14
マリア・ガルシア @ro_akiyui

彼の身体を投げ飛ばす。その反動で、マリアは地面に転がった。彼の身体を投げ飛ばす、その力を支える力がマリアには無かったのだ。 けほ、けほ。咳き込みながら、なんとか身体を起こす。身体が痛い。これで更に戦うのは難しいだろうな、とぼんやりと考える。でも生きている。 ——神よ

2016-08-14 01:10:57
マリア・ガルシア @ro_akiyui

マリアは祈る。頭を動かし、リーズヴォルプを探す。倒れた彼を見つければ、マリアは腕を使いながらなんとか彼に這い寄った。 「リー、ズ、ヴォル、プ、さま、」 その身体に触れる。それは生きている者の感触では無かった。 「——憐れみたまえ」 言葉は、吐息と共に。

2016-08-14 01:11:25
マリア・ガルシア @ro_akiyui

疲労した身体では言葉一つを滑らかに口ずさむのすら難儀する。 「憐れみたまえ」 息が苦しい。マリアはゆっくりと身体を倒す。 「……憐れみたまえ」 そうしてリーズヴォルプの身体に寄りかかるようにしてマリアは全身の力を抜き。 「あなたに、幸いあれ」 静かに瞼を下ろした。

2016-08-14 01:11:37
マリア・ガルシア @ro_akiyui

——祈りの言葉は癖のようなもの。情の如何に関わらず、その言葉は女の心から溢れ出す。 ——けれども一つ、女は一つの情を落とす。 ——貴方に敬意を、と。

2016-08-14 01:11:46
《ヴァルプルギスの華燭》管理アカウント @walpurgis_marry

目覚めれば、また眠る。 始まれば、また終わる。 全ては廻る。 であればこそ、今眠る君に安らぎを。 #ヴァル華

2016-08-15 11:32:06