【ヴァルプルギスの華燭】一日目昼――第一の間

アルティメット @ultbeelz

――だのに女人はその場から動こうとしなかった。 「あぁ、妾は名乗ることなど久しい身。真名ではなく二つ名であることを許してほしい」 機械的な名前よりはよほど格好が付くというもの。女人はたいそう楽しそうにしていた。 敵方に称賛を、異形の大蜘蛛に恐れず立ち向かった異質なモノに賛辞を。

アルティメット @ultbeelz

この声を聞き届けていただろうか。眠るように死した者は耳を最後に生きる器官とするらしい。気絶でも当てはまるのか、そもそもこれは人と同列視していいものなのか――あるいはそれは否定されるべき事柄だろうが――女人は杖を抱いて木の幹に持たれ込んだ。

アルティメット @ultbeelz

我等は独立した個体ではなく、二匹で一つの個体也。そも本体が蜘蛛であり、虚飾たる装飾品は本当のオマケに過ぎず。 此度の主役ではあるが、蜘蛛が死ねば死に至る、非力なものである。 だから、様々な体液に塗れた惨憺たる光景の蜘蛛が活動を停止した瞬間、装飾品の活動もまた緩やかに停止した。

《ヴァルプルギスの華燭》管理アカウント @walpurgis_marry

鐘が鳴る。 それは祝福であり凱歌である。 眠りはひととき。 その魂に休息を。 #ヴァル華