番外編1 「トールオーダーに風穴を」

脳内妄想艦これSS 咆哮提督様SSとのコラボ作品
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

※このお話は現在リカルドさんが連載中のコラボ作品の2と3の間にあたるお話です。 メインシナリオの傍らで起こっていた出来事。

2016-08-09 22:47:23
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ 番外編1「トールオーダーに風穴を」__

2016-08-09 22:48:04
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

Ex1-1「ったく、勝手なもんだ」 監獄島に突然の監査が入り、てんやわんやの内に時刻は昼時。 勝手に決まって勝手に始まった監査は、向こうの都合でタイムテーブルやオーダーが定められ、風見は尋問されるだけされると自分の居場所である執務室からも突っぱねられ、手すきになってしまった。

2016-08-09 22:48:42
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Ex-1-2 こういう時、風見の向かう場所は一つきりしかない。 外界と隔絶され、また艦娘のように海の上を走ることも出来ない風見が、娯楽も得られぬこの島において自分の「テリトリー」と言える場所。 風見は、射撃演習場の扉を開くと真っ直ぐに棚に向かい演習用具の中から狙撃銃を掴み出す。

2016-08-09 22:49:31
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Ex-1-3 この演習場も午前の内に監査対象となった。だが、殺風景かつ古びたこの場所を隅々まで調べる者は碌に居なかった。 調べたところで出てくるのは溜まった埃かそこかしこに転がる薬莢程度のものだ。心底どうでもよい。 風見は無造作に箱から演習弾を掴むと、銃を台に乗せ準備を整える。

2016-08-09 22:50:16
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

Ex-1-4 取り付けたスコープを覗き込み意識を集中。初めは近めの的へ、そこから角度を変えつつ併設された遠い的へ…弾を込めてはほぼ無心にトリガーを引き、狙撃を叩きこんでいく。 この狙撃音のみが静かな演習場に響く時間が、今の風見にとっては最も周りの柵から離れられる時間であった。

2016-08-09 22:51:41
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Ex-1-5「そんなところに居ないで入ってくるといい」 次弾を装填しながら、風見は的を見据えたまま徐に口を開く。 そして、その言葉に演習場の扉の影でぴくり、と反応する艦娘が一人居た。 演習場の中に入ってきたのは、やや表情の固い艦娘…駆逐艦のようだ。 風見も銃を一旦置く。

2016-08-09 22:52:04
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Ex-1-6「貴方がこの島の提督か」 「一応な…風見と言う。君は?」 風見の名乗りに対し、艦娘は特徴的な挨拶を返す。 「ドーモ、初めまして風見=サン、若葉です。今日は大将の…言うなれば付き添いか」 「リカルド大将の所の艦娘か。遠路遥々ご苦労様だ…碌にもてなしも出来ず済まんな」

2016-08-09 22:53:09
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Ex-1-7「銃の音が遠目に聞こえたので、見に来てみた…相当な腕前と見える」 若葉はこれまでに風見の撃ち抜いた的を横目に見ながら言う。 的の大半は、遠近に関わらずほぼ中心を捉えられていた。 「お褒めの言葉有難う、お嬢さん…どうやら暇しているようだな?言わなくても分かる」

2016-08-09 22:54:46
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Ex-1-8 風見は喋りながらゴソゴソと棚を探ると、若葉の方に何かを投げて寄越す。 「俺がここに来る時と同じ退屈そうなオーラだ…ついでに、射撃の自信も有りそうだな?」 「…」 若葉がキャッチしたのは演習用の単装砲だ…何者かの手でカスタマイズが為され、狙撃に適した調整がされている。

2016-08-09 22:55:38
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Ex-1-9「遠慮する事は無い、暇潰しに撃っていってくれ」 風見に勧められるまま、若葉は単装砲を装備すると風見の銃の隣の台に着き、狙いを定めていく。 BLAM!BLAM!BLAM! 銃声は3発。…しかし的には当たった様子が無い。 だが、風見は非常に楽し気な顔をしている。

2016-08-09 22:56:55
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Ex-1-10「素晴らしい」 …若葉の撃った弾は確かに的には当たっていない。だが、風見の目は見据えていた。 若葉の撃った3発の弾は、既に風見の撃ち抜いた3つの的の、『風見の撃ち抜いた穴』を的確に通り抜け、新しい穴を開けることなく的を通過している。 「この位の距離なら造作もない」

2016-08-09 22:57:27
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Ex-1-11 若葉の言う事にはもっともな部分がある。駆逐艦の用いた12.7cmの連装砲であっても、元来の海上砲戦においては砲撃が長射程を埋める。基準が異なっているとはいえ、射撃の腕に秀でた若葉にとって『人間』の高々数100mは短く感じられたかもしれない。

2016-08-09 22:59:58
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Ex-1-12「…若葉、まだ時間はあるか?」 風見は何やら意味ありげな笑いを顔に浮かべながら、若葉に問うた。 「それなりには」 「良いだろう。お前さんにも是非伝えておきたい事がある」 風見はそう言うと手近な箱に棚から幾らかの用具を引っ掴んで入れていく。 「付いて来てくれ」

2016-08-09 23:00:05
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

Ex-1-13 演習場を出ていずこへか向かう風見の後ろに、若葉は黙って付き従う。 建物の方には向かわず、どうやら島の内側、山林の地形になっている場所を目指して進んでいるようだ… 「…どこまで移動するんだ」 木々に阻まれ完全に鎮守府や港が木々で見えなくなった頃、若葉は風見に聞いた。

2016-08-09 23:00:56
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Ex-1-14「あぁ、もう目の前だ。ここでいい」 木々の間に僅かに見える海は眼下。若葉は山のようになっている島の中央部、その一番高度のある辺りに自分達が居るものと判断する。 「ちょっと前にウチの連中ともここに来たんだけどな。折角だ、お前さんも俺の持論を味わっていってくれ」

2016-08-09 23:01:28
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Ex-1-15 風見は幾らかの演習用武装が詰められた箱を置くと、自分は側にある切り株に腰を下ろす。 「…なぁ、若葉、正面にやや大きな木があるのが見えるな?あそこの木には食料にもなる木の実が生っている」 若葉が風見の視線の方向を見やると、確かに大粒の実が生っている木が一本。

2016-08-09 23:02:09
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Ex-1-16「武器は単装砲を使え。そして弾は一発…特別な弾を使うのではなく、通常の弾限定とする。さて、お前さんは一発でどれだけの実を落とすことが出来る?」 風見は若葉に問いかける。これは風見からの挑戦なのか? 若葉は指定の通りに単装砲を手に取ると、「最適な位置」を探り始める。

2016-08-09 23:03:06
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

Ex-1-17「イヤーッ!」 そして彼女はその位置を見つけ出し、狙撃する…最も多く実の生った太い枝の根元付近、構造的に脆くなっている部分だ。 バキッ! 大きな音を立てて枝は粉砕され、その先の実は丸ごと地面に落ち…いや、それだけではない。更に貫通した弾は別の枝も粉砕!

2016-08-09 23:03:58
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

Ex-1-18「一発で複数の脆い部分を撃ち抜いたか。文句の付けようがない位置取りだ」 風見は腰を持ち上げると、自らも狙撃銃を持ち、弾を込める。 「だが、単に実をどれだけ落とすか、という話になれば…こんな方法もある」 風見はスコープを覗き、一発! しかしその方向は木の方角ではない。

2016-08-09 23:04:49
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

Ex-1-19 パキッ… かなり上方で何かが砕ける音がするとー ズズ…ミシミシミシッ!ゴゴゴゴゴッ!!! …木の生えている斜面の上、風見が狙ったのは地層の脆くなった部分だ。 支えを失った土が、岩が一気に押し寄せ、対象の木を薙ぎ倒して進む。

2016-08-09 23:05:34
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Ex-1-20「要は考え方一つだ、若葉。何も対象を倒すために狙撃するのは対象そのものである必要はなく、また、それが対象の周りにあるかと言えばそういう訳でもない…色々と見てみないとな」 風見は若葉の目を見て言葉を重ねる。 「1つ。『見えるもの全てが狙撃対象となり得る』…忘れるな」

2016-08-09 23:06:48
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Ex-1-21 若葉は何も言わない。ただ、風見の言葉に黙って頷いただけだ。 「よし、次だな。既に見えているかもしれないが、この方角一帯の木々の間には設置位置の高さ、角度等多様になるように設置した演習用の的がある」 …木々の間を注視すると、演習場で見た的がばらばらに配置されている。

2016-08-09 23:07:14
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

Ex-1-22「次に狙うのはこれらの的だ…そして使う弾は、コイツだ」 風見は箱から若干爆雷に似た弾を取り出して2つ若葉に渡す。 「銃はこっちの大口径のを使うといい…その弾はペイント弾になっていて、着弾するとその周り広範囲にインクを撒き散らす仕組みになっている」

2016-08-09 23:08:01