番外編1 「トールオーダーに風穴を」

脳内妄想艦これSS 咆哮提督様SSとのコラボ作品
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

EX-1-48「いやいや、ここまでの逸材を見たのが久々だったもんでつい、な」 風見は若葉から単装砲を受け取り箱に詰め直すと、最初に来た道を引き返そうとする。 「ちょっと待った。問いは後1つあるのではないのか?」 その行動を不審に思い、若葉は反射的に彼を引き留めた。

2016-08-09 23:28:45
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EX-1-49「最後だけは場所が違うんでな。アレだ」 風見がくいと顔で示した方を見ると、木々の間に僅かに島の東端の岩礁が見えた。 … 若葉が四つの問いに挑んだ場所から暫く獣道を滑るようにして降り、先程上から見えた岩場に辿り着く。 何の変哲も無いその場所で、風見は荷物を下ろした。

2016-08-09 23:29:41
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EX-1-50「さーて、最終問題だな。正面の大き目で黒っぽい岩が見えるな?」 彼が目で見る方角には、説明通りの大岩が複数…その内の幾つかは砕けているのにも気付いた。 「同じ種類の岩の中でも密度の高い部分だ。鉄鋼程とは言えなくとも硬度は高く、厚みがある分下手な装甲より貫き辛い」

2016-08-09 23:30:30
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EX-1-51「さぁ、箱の中にある物なら何でも、幾らでも使っていい。最後の問題はあの岩の一つをとにかくぶっ壊す事。それだけだ」 若葉は瞬間理解した。周りで幾つか砕けている岩は、若葉が挑むよりも前にこの男の無理難題に挑んだ何者かが、同じように問われ、苦心の末壊した物なのだと。

2016-08-09 23:31:21
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EX-1-52「とにかく壊せば、それで良いのか?」 若葉は念を押すように確認する。 「ああ、それで良い。それだけだ」 「…」 若葉が箱から掴み出したのは、12.7cm連装砲、2門。 …普段使っている専用の艤装のように彼女の動きに合わせた調整は為されていない。 だが、十分である。

2016-08-09 23:33:19
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EX-1-53 BLAM!! 若葉が連装砲を掴み取って刹那、風見の前を一迅の風が通り抜ける。 …彼女はその位置から大岩を狙おうなどとは端から考えていない。 「イヤーッ!!」 銃器反動を初速に利用し疾駆した若葉はそこから更に跳躍! BLAM!BLAM!BLAM!!

2016-08-09 23:33:40
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EX-1-54 ロケットバーニアのように連装砲を操り、極短距離で最大速度を得た若葉は、眼前に迫る大岩を前に両手の砲に自らの全神経を集中… 「イィイイヤァアアアーッ!!」 気合一閃、解き放つ! 彼女が本来最も得意とする武道…ピストルカラテの連撃である!

2016-08-09 23:35:17
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EX-1-55「ぷっ…」 堪え切れずに吹き出す風見の前で、巨大な『的』は一点から真っ二つに裂け、土煙を上げながら左右へと崩れ落ちた。 …土煙が風によって散らされた後には、紫煙を燻らせて一服する若葉の姿があった。それこそ最初に演習場で見せた時と同じ「造作もない」という表情で。

2016-08-09 23:36:50
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EX-1-56「あっはっはっは!良く分かってるじゃないか。行儀の良い事なんて考える必要も無い…『狙うならば最大、最高火力』!そこで自分の持ってる物を注ぎ込めれば十分だ」 一頻りの高笑いを終えると彼は軍帽を整え直し、若葉の元へ歩み寄る。 「ちょっとでも参考になる事はあったか?」

2016-08-09 23:37:50
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EX-1-57「…こんな無理難題、付き合わされた側はたまったものではない、な。だが、悪くない」 「そうかい」 風見はそれ以上は追及しない。彼はそれでも十分満足気な顔だ。 …細かい感想などそもそも求めていないのだろうと、若葉は思考の端で納得した。 「…こんな所に居たのか?」

2016-08-09 23:38:52
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

EX-1-58 不意に何者かの声が聞こえ、声のした方を見る。リカルド大将が二人の姿を見つけ、近づいてきている所だった。 「オイ、こりゃ何だ。ウチのが迷惑でもかけたか?」 リカルドは砕けた大岩と若葉の手持ちの連装砲を交互に見て眉を顰める。 「あー…いや、迷惑をかけたのは私の方です」

2016-08-09 23:40:06
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

EX-1-59「素晴らしいものを見せて頂きました…いや、実に素晴らしかった。勝手に連れ回してしまって申し訳ない」 彼の脇にある箱の中身をサングラスの奥の目がちらと捉える。 「あぁ、構わんさ。艦隊の他の連中も暇そうにしてた位だからな」 「そうですか。それならば良かった」

2016-08-09 23:41:15
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

EX-1-60 そして『見たいものは見終わった』とばかりに後片付けを済ませると、風見は若葉に「この先の武運を祈っているよ」とだけ告げ、最後にリカルドに礼をしてその場を離れていった。 「…お前の目から見て、あいつはどう見えた?」 リカルドは風見の後ろ姿を見据えたまま、若葉に問う。

2016-08-09 23:42:22
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

EX-1-61「…そうだな…」 携帯灰皿に煙草の灰を落とし、一際大きな煙を空に伸ばすと…彼女もまた遠ざかる風見の背中を見る。 「…自信家で、屁理屈を並べるのが上手くて…『酔狂』だな」

2016-08-09 23:43:37
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ 番外編1「トールオーダーに風穴を」終わり__

2016-08-09 23:44:04