番外編1 「トールオーダーに風穴を」

脳内妄想艦これSS 咆哮提督様SSとのコラボ作品
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

Ex-1-23「爆風を意識して作ってみたんだがな…では2問目だ。その2発で可能な限り沢山の的を塗ってみてほしい」 「…分かった」 若葉は銃を受け取り、先程より集中して考える。 「(どうやら少しはやる気になってきたようだな)」 風見はそんな若葉の様子を見て、期待を高まらせた。

2016-08-09 23:08:50
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Ex-1-24 弾は2発。闇雲にぶつけても飛び散るインクは木々に阻まれ満足に行き渡らないだろう。そして、弾がペイント弾なだけに先程のように地滑りを起こすような荒業も使えない。 ならば、どうするか? 「イヤーッ!!」 回答は決まった。若葉は2発の弾を木々の間に差し込むように撃つ!

2016-08-09 23:09:37
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Ex-1-25 インクは爆心点を中心に球を作るように周りを染める。 であれば、爆風が最も遮られない場所の…特に枝先を狙ってインクを周りに行き渡らせれば良い! バァン!バァン!! 2つの破砕音が聞こえ、若葉の思惑通りに広範囲に渡って木々と的が蛍光ピンク色に塗られる。

2016-08-09 23:10:22
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Ex-1-26「これも見事な回答と言えるな。並の腕前ではここまでは狙えまい」 そう言いつつ、先程と同様に風見もペイント弾を込めた銃をセッティングし、狙いを付ける。 「なのでこれは別解として捉えてもらおうか。見ていてくれ」 トリガーを引いて連続で2発、風見が狙ったのは…遥か上方。

2016-08-09 23:10:53
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Ex-1-27 風見は1発目の円弧に合わせて、クレー射撃の要領で2発目を1発目にぶつけて空中高くでペイント弾を破懐。結果、高い位置で飛び散ったインクは広く拡散し、雨のように一帯に降り注いできた。 「爆風を想定するのなら同じ結果にはならないがな」 滴るインクを遠目に見て風見は言う。

2016-08-09 23:11:36
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Ex-1-28「ま、言いたい事はこうだ…『弾は使い方如何で結果が大きく変わる、その時々で最良の使い方を考える事』…俺達の武器は、単に相手を貫くだけが仕事の武器じゃない」 「使い方、か…」 若葉はインクで塗られた木々を再度見る。 この提督の従える艦娘達はどんな回答をしたのだろうか。

2016-08-09 23:12:14
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Ex-1-29「後3つだ、『全5問』…次は向こうだ」 風見は更に別の方角を指で示す。その方角にはこの辺りの中では最も太く、立派に育った大樹が見えた。 「あの一際大きい木…ここからでは見えないが、その裏手には1つ的を設置してある。お前さん、ここから位置は変えずにそれを貫けるかい?」

2016-08-09 23:12:48
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Ex-1-30「何だって?」 「あぁ、位置は変えずに、だ」 風見はそう言いつつ弾と武器を並べる。 「使うのは単装砲、そして使える弾は通常の弾が2発だ…よく考えてみてくれ」 「…」 準備を整えながら若葉は考える。 細い木なら貫通を狙う事は出来る。だが、目前の大木はあまりにも太い。

2016-08-09 23:13:40
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Ex-1-31 では、周りの木や石にぶつけて跳弾を狙うか? これは可能だが的の位置が把握出来ていない上、弾の制限は僅か2発。当てずっぽうでは当たらないだろう。 ならば、最初の問答のように地形を利用するか。 否、大木を動かせる程の土石流は起こせない。木の位置が悪い。

2016-08-09 23:14:33
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Ex-1-32「…」 大木をじっと見つめる若葉に、風見は一言だけ添える。 「2発とも使え。弾は余らなくていいぞ」 ーそういう事か。若葉の脳内でイメージが連結する。 BLAM! 若葉の初手。狙いは大木から大きく離れた一本の高い木。 鋭い精度で放たれた弾丸は、太い木の枝を吹き飛ばす。

2016-08-09 23:15:07
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Ex-1-33 それによって大木の周りにある変化が生じた。 太陽光を遮っていた木の枝が落ちたことによって大木の裏手に光が落ち、見えない的の「影」が伸びているのが眼下に確認出来るようになったのだ。 「そこか。イヤーッ!!」 若葉の2発目、跳弾!伸びた影の角度に合わせ弾を差し込む!

2016-08-09 23:15:54
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Ex-1-34 …ショットの直後、影の先端、丸い部分が大きく振れるのが見て取れた。 「跳弾も使いこなすか…いや、素晴らしいな」 風見は実に楽しそうに笑っている。しかしながら、若葉は若干不満げだ。 「ヒント無しで撃ち抜けた方が素晴らしかった」 「あんなものはヒントの内に入らんさ」

2016-08-09 23:16:33
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Ex-1-35「『一発で倒せないなら、一発で優位を取る』だ、若葉。ほぼ全ての狙撃には意義が生じると言っていいと俺は考えている…例えどこにも当たらなかった弾でも、だ」 「因みに、貴方ならどう撃つんだ」 若葉は一応聞いてみる。 「俺か?日が傾くまで待つか、雨で的が倒れるまで待つ」

2016-08-09 23:17:14
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Ex-1-36「…」 あまりの回答に若葉は言葉を失った。…序でに聞いてみたことを後悔した。 「んで一発で撃ち抜くさ」 だが、風見は構わず飄々と言ってのける。 「…それはずるー」 「くない。お前達が戦ってるのはそういう理不尽な場所だって、お前なら言わなくても分かるよな?」

2016-08-09 23:17:51
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Ex-1-37 予想していたとばかりに風見は若葉の不満を制する。 「一発当てれば勝ち、一発当てられたら負け…そんな状況だったら、時間でも天候でも地形でもありとあらゆるものを味方につけて戦うしかないんだよ。こんな話、昔のお偉いさんがたの物語の中にだって幾らもあるだろう」

2016-08-09 23:18:31
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Ex-1-38「…」 それは確かにそうだが、若葉の今の状況ではその選択肢は取りようがないのは明らかである。 だが、噛みついたとしてもこの男は別の捻くれた手段を提示してくるだろうと考え、それ以上の言葉は飲み込んだ。 「…それで、4問目は何なんだ」 「あー…ちょっと待っててくれ」

2016-08-09 23:19:20
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Ex-1-39「次のはちょいと仕込みが必要でな」 風見は持ってきた箱から何やら小さな麻袋を取り出すと、それを持って木々の間に消えて行った。 …そして、程なくして元の場所へ帰ってくる。 「オーケーだ。今、次の的を仕込んできた…今までのとは違う青い的だ。見れば直ぐに分かる」

2016-08-09 23:20:17
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Ex-1-40「それを撃ち抜けばいいのか?」 「ご名答だ。但し、その的は『時間が経過すれば消えてしまう』だろう」 風見はズボンに着いた土をパッパと払いながら説明する。 「何…?」 「今いるこの高台で動いても構わない…が、自分から探しに行くのはNGだ。武器はさっきと同じ。弾は一発」

2016-08-09 23:21:19
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Ex-1-41 先程よりも明らかに難易度が高い。弾の数も減らされ、そして今度は的が遮られているどころか、的の形状も大きさも、位置さえも分からない。 「これはヒント無しでは難しい…先にキーワードを教えておく。『一発で狙えるチャンスを逃さない』…これだ。チャンスは一度だけ訪れる」

2016-08-09 23:22:11
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Ex-1-42 若葉は一発きりの弾を込めると目を閉じ、頭に見たもの、聞いたことを思い浮かべる。 狙うのは青い的。それは風見がたった今置いた物。 『チャンスは一度だけ訪れる』…何故か分からないが、その的は一度だけ狙える機会が訪れる。 的が見えるようになるか、的が動くか…その線だ。

2016-08-09 23:23:12
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Ex-1-43 脳内のイメージは更に加速する。 『時間が経過すれば消える』…的が動いて無くなる、という意味だろうか?如何にして? この男の持っていた物。『小さな麻袋』…あれに的が入っていたのか? …これだけでは情報が足りない。 若葉はこれまでの問いも合わせて思い出す。

2016-08-09 23:23:55
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

Ex-1-44 この場に見える物全てが狙える物。そして使える物。 ならば、的にもこの場で使える物を仕込んだのではないか? 若葉は目を開け、今度は自分の周りの景色、音、それら全てに集中する。 生い茂る木々、横たわる礫、鳥の囀り、木漏れ日、波の音… 風見は様子をじっと見守っている。

2016-08-09 23:24:52
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Ex-1-45 ふと、若葉はその中の「鳥の囀り」が今までより近くなっているような、そんな感覚を覚えた。 …思考回路はすぐさま結論を出す。 「そこかっ!!」 若葉が単装砲を放った先、そこには今しがた草むらから飛び立った一羽の小鳥。 …小鳥が咥えた『何か』には青い物が絡まっている!

2016-08-09 23:25:46
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Ex-1-46 パシッ!と高い音を立てて、対象の青い的は弾け飛んで草むらへと落下した。若葉はこれを、小鳥に弾を当てることなくやってのけた。 「完璧だな」 風見もこの結果には唸る。 「…麻袋の中身は鳥の餌、か?」 「その通りだ。あの鳥は餌を巣に持ち運んでは溜める習性があってな」

2016-08-09 23:26:49
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Ex-1-47「全くリカルド大将も恵まれたものだ…おっと、これじゃ俺の配属の艦娘達では不足と言っているように聞こえてしまうな。失敬」 そう言う彼は何故か妙に嬉しそうで、口元を見ても取り繕おうとしているようではあるが緩んでいるのを隠せていない。 「…貴方も大概変わっているな」

2016-08-09 23:27:47