「バトルフィールド・ウィズアウト・アイサツ」

「用件を聞こう」
0
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「バトルフィールド・ウィズアウト・アイサツ」

2016-02-29 20:02:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

BRATATATATATA!KABOOOM!KABOOOM!BLAM!BLAM!BLAM!KABOOOM!KRA-BOOOOOM!マラッカ海峡とシンガポール海峡の交差水域に爆発音と砲撃の音が轟く。「被害状況報告!」黒煙立ち上る戦場で、旗艦・五十鈴は随伴の駆逐艦娘に呼びかける。 1

2016-02-29 20:05:49
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

返答は直ぐに返る。「大潮、小破です!」「涼風、損傷軽微!」「スミマセン!敷波、中破です!」「敷波、下がって!大潮!涼風!私に続いて!」五十鈴は直ぐ様状況判断し、命令を下す。敷波が後方に下がり、大潮と涼風が五十鈴の両隣に並ぶ。単縦陣だ。主砲を握り締める音が乾いて響く。 2

2016-02-29 20:07:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ZZTTTT…遠雷めいた轟音が遥か彼方の海から響いた。「構えて!」3人の艦娘が主砲を構える。程なくして、轟音が鳴り響いた方角から何かが高速で飛来する。艦娘視力を持ってしても何が飛んできているのかを確認できないそれを「砲撃用意…ってー!」艦娘達は迎え撃つ! 3

2016-02-29 20:10:48
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

BLAM!BLAM!BLAM!砲撃が直進する飛来物を捉える。KABOOOM!飛来物は爆発四散し、大気を揺らす。艦娘達は追撃に備え、主砲を構え続ける。水平線上に敵影は見えなかった。「五十鈴=サン」額から汗を垂らし、大潮が問い掛けた。「一体何なんでしょうか、この攻撃は」 4

2016-02-29 20:15:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「さぁ、分からないわ」五十鈴はただそう言い、背後を確認する。後方に離れた敷波の向こう側に、小さくなったタンカーの姿が見える。黒煙が棚引き、フラフラと頼りないが確実に戦場から離脱していた。((村雨と初雪は上手く護送出来てるようね…))五十鈴は思案する。((ホント、一体何なの)) 5

2016-02-29 20:23:14
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

五十鈴達はただいつもの様に、西方海域前線基地へと燃料を輸送するタンカーを護衛していただけだ。突如としてタンカーを遠距離から爆撃されたのだ。この海域はリンガ泊地の支配域。深海棲艦は発見され次第撃沈しているはずだ。監視の目を掻い潜り、敵がこの海に潜んでいるとでも言うのだろうか? 6

2016-02-29 20:29:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((けど、何よりも解せないのは))五十鈴は電探を再び確認する。敵影は捉えられない。そう、五十鈴達はいまだに敵の全容を確認できていない。敵の数も、艦種も、そしてその動向も。長距離からこれほど精密な、しかも直線の攻撃を繰り出すのも驚異的だ。((砲撃なら曲線を描く筈…新兵器?)) 7

2016-02-29 20:33:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ZZTTTT…再び遠雷めいた轟音が響く。五十鈴は一旦思案をやめ、再び攻撃命令を下そうとした。原理は分からないがこの轟音の後に幾分かのタイムラグを挟んで飛来物は飛んでくる。直線的かつ、構える猶予があるのなら迎撃は容易だ。「構えて!」KABOOOM!「ンアーッ!」 8

2016-02-29 20:36:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「なっ!?」五十鈴は驚愕し、横を、涼風の居た場所を見た。涼風は10数メートルほど吹き飛ばされ、敷波の傍に倒れ込んでいた!「ちょ、涼風!?涼風!?」敷波が涼風の体を揺する。艤装妖精によるアンダーシャツ機能が働いたのか、五体は無事だ。だが主砲や魚雷は完全に吹き飛んでいた。 9

2016-02-29 20:40:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「まさか」ZZTTTT…三度目の轟音。KABOOOM!「ンアーッ!」今度は大潮が吹き飛び、海面に叩きつけられる。「速くなってる…!?」五十鈴は自身の取るべき行動を高速思案した。ZZTTTT…破滅の轟音が無慈悲に響いた。五十鈴は咄嗟に主砲を構えた。飛来物は眼前に迫っていた。 10

2016-02-29 20:44:47
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

瞬間、五十鈴の主観時間が泥めいて凝った。五十鈴はハッキリと己に迫る物を見た。それは細長く、金属質で、4枚の羽根とプロペラを持っていた。五十鈴はそれをよく知っていた。((魚雷…?))その正体に辿り着くと同時に、五十鈴の視界は爆炎に覆われた。そして世界が暗転した。 11

2016-02-29 20:50:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ララララー、ララララーラララーラー、ラララ、ラララ、ラーラー」どこか勇壮なマーチを口遊みながら、リカルドはゆったりとした足取りでリンガ泊地の司令部へ向けて歩き続ける。「ララララー、ララララァーラララッラ、ラララ、ラララ、ラァーラァー」 13

2016-02-29 20:56:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

珍しい姿である。葛葵中将や美影少将が見れば己の目を疑ったことであろう。だが彼とて歌の一つくらい歌う時もある。特に、今の様に茹だる様な暑さのリンガ泊地では。歌の一つでも口遊まなければ気分が滅入る、概ねリカルドはそう考えているのだろう。 14

2016-02-29 20:59:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

やがて司令室の扉が見えてきた。リカルドは口を噤み、衣服の乱れを整える。そして扉の前に立ち、軽く二度ノックした。KNOCK!KNOCK!リカルドは室内からの返答を待った。しかし、いくら待てど返答はない。「あン…?」リカルドは首を傾げ、もう一度ノック。KNOCK!KNOCK! 15

2016-02-29 21:03:42
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

やはり待てども返答はない。「ん?」リカルドは扉を改めるが、特に外出中という但し書きも無い。懐から懐中時計を取り出し、時刻を確認する。特に司令室を空ける様な時間とも思えない。リカルドは耳を澄ました。中から数人が話し込んでいるような声が聞こえた。((会議中だったか?)) 16

2016-02-29 21:11:32
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

やがて話し声が止み、扉に向かう足音が聞えて来た。「おっと」リカルドは直ぐに脇に退いた。扉が開け放たれた。3人の提督が部屋の中から出てきた。「ん?」一人がリカルドを見た。「ドーモ」リカルドは会釈する。「「「ドーモ」」」提督達は会釈し返し、廊下へ歩き去って行った。 17

2016-02-29 21:14:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドはそれを見送り、扉をノックした。KNOCK!KNOCK!「…入れ」中から、僅かに疲れの滲んだ声が聞えて来た。リカルドは訝しみながらも、入室する。「失礼します」「…ああ、君か」寄り掛かるように椅子に座りながら、リンガ泊地司令はリカルドを出迎えた。「ドーモ」 18

2016-02-29 21:24:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「今回もかね」「ええ」リカルドは頷いた。「西方前線基地への物資輸送のため、燃料の補給をお願いしようかと」リカルドはもはや言い慣れたセリフを口にした。昨今の西方海域での深海棲艦の動向を牽制する為、鎮守府は西へ戦力を一定数常駐させる方針を取った。 19

2016-02-29 21:28:49
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

これにより、リカルド達鹿屋や岩川などの前線支援組の任務の一つに西方海域前線基地への定期的な物資輸送が加わった。リカルドがこの任務に従事するのは既に3度目である。特にそろそろ秋の大規模作戦が近い。トラブル無く運び入れればならないだろう。だが「すまない、少し待ってくれないか」 20

2016-02-29 21:32:48
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「今、何と?」リカルドは聞き返した。「燃料は提供しよう…だが、輸送は少し待って欲しいんだ」リンガ長官は疲れた表情でそう言った。「理由をお聞きしても?」「実はつい先日から正体不明の深海棲艦がシンガポール海峡に潜み、輸送隊を攻撃しているんだ」「何?」「信じられんのも無理はない」 21

2016-02-29 21:36:50
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「だが、これまでに輸送船団が3回、下手人討伐の為の艦隊が6回、その深海棲艦の討伐に失敗している」リンガ長官は疲労が詰まった溜息を吐き出した。よく見れば目元に隈が出来ていた。「一応、敵が極めて特殊な深海棲艦ただ1隻だと言う事までは分かったんだが、それだけだ」 22

2016-02-29 21:43:48
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「特殊…?」リカルドは顎に手を当てた。「ともあれ、この問題が解決するまで、西方前線基地への輸送は控えるべきだろう。特に君が運ぶ物資は極めて重要だ。万が一沈められることがあっては…」「今後、如何するおつもりで?」リカルドはリンガ長官の言葉を遮り、問うた。 23

2016-02-29 21:47:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「どう、か…」リンガ長官は遠くを見て、答えた。「数日中に大規模な討伐隊を編成するつもりだ」「それだと、西の奴等を無駄に警戒させませんかね?」リンガ長官はリカルドの顔を見、問うた。「…何か案があるのかね?」「案と言うか、まぁ、少しね」リカルドは獣めいて笑った。 24

2016-02-29 21:51:12
1 ・・ 4 次へ