レジェンド・オブ・エイトフィート

創作勢百物語企画! 子供を攫う不気味な巨人に狩人達が挑む!
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは島を見渡し、吹雪と嵐を指差す。「よし、お前らは島の外側に痕跡がないか調べてくれ」「司令官は?」「俺は鳥海と一緒に森の中を虱潰しに…鳥海?」リカルドは周囲を見渡した。共に来たはずの鳥海の姿がない。「どこ行ったアイツ」「…あそこかと」吹雪が指差して示した。 16

2016-08-15 15:59:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そこには、岩陰で蹲る鳥海の姿があった。リカルドは近づいて、問い掛けた。「何してんだお前」「アイエエエエエエ…もう帰りましょうよぉ…」鳥海は蒼褪めた表情でリカルドを見上げた。その眼尻には涙が溜まっていた。「オバケなんて艦娘の専門外ですよぉ…」「オバケじゃねぇ。化け物だ」 17

2016-08-15 16:02:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「どっちも同じですよぉ!非科学的ですよぉ!」鳥海は悲鳴を上げた。高雄型4番艦・鳥海。鹿屋最強の重巡と名高い戦績を持つ彼女であるが、ただ一つだけ弱点があった。己の理解が及ばない存在…すなわちオバケが、大の苦手であった。リカルドは顔を顰め、鳥海の襟首を掴んで引きずり出した。 18

2016-08-15 16:08:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「オラとっとと行くぞ!人命かかってんだよ今回はよぉ!」「ヤメテー!離してくださーい!吹雪ちゃん!嵐ちゃん!助けてー!」情けない悲鳴を上げて、鳥海はリカルドと共に森の中へと消えていった。「「……」」吹雪と嵐は互いに顔を見合わせた。「…行きますか」「…そうっすね」 19

2016-08-15 16:11:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

2人は溜息を吐き、島の外縁部に何らかの証拠を見出すために歩き出した。そして森の中、リカルドは鳥海と共に慎重に探索を開始していた。「し、司令官さん」少し後ろを歩く鳥海が怯えた声で問う。「その、化け物って…一体何なんでしょうか?」「さぁな」リカルドはカラテ警戒のまま答えた。 20

2016-08-15 16:22:42
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「実物を拝んでみてみないことには、何とも言えんな」「そうですか…」「だが、もし奴が殴れて、血を流すなら殺せる。俺が言えるのはそれくらいだ」「そう、ですか…」鳥海は息を吐き、幾分か顔色を元に戻した。「落ち着いたか?」「はい…」「なら、二手に分かれるぞ」「えっ」 21

2016-08-15 16:32:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「それ本気ですか…」「俺とお前、単体でも動ける戦力を一緒くたにする必要もないだろ」リカルドは心底不思議そうな表情で鳥海を見た。「相手にできないと思えば救援を呼べ」リカルドはそう言うと、風のように駆けて森の奥へと消えた。「イヤーッ!」「ちょ、ちょっとぉ!?」 22

2016-08-15 16:43:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

鳥海は空しく手を伸ばした。リカルドの姿はもう見えない。「そ、そんなぁ…」鳥海は辺りを見渡した。周囲一面鬱蒼とした樹木が生い茂り、夕刻と言うともあってか辺りは薄暗い。聞いたことのないような獣や鳥の鳴き声が遠くから聞こえた。鳥海は唐突に、己の孤独を突き付けられた。 23

2016-08-15 16:55:14
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「わ、私も探索しないと…」鳥海は孤独を紛らわせるように呟くと、周囲に何らかの痕跡がないか探し出した。森の中には何の気配も感じられない。地面には何らかの小動物がいた形跡が見受けられたが、巨人のような大物がいた形跡までは…「ん?」その時、鳥海は何かを見つけた。 24

2016-08-15 17:11:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

それは、木の幹についた跡であった。幹はまるで、5本の縄に絞め潰されたかのような凹みができていた。「これって…」鳥海はその跡に手を当てた。その跡は、指の形に酷似していた。「まさか…早速当たりですか」鳥海は額から汗を流しながら、通信装置を起動した。 25

2016-08-15 17:17:37
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「モシモシ…リカルド司令官ですか?はい、私です。鳥海です」風でガサガサと草木が揺れる。数羽の鳥が飛び立った。「はい…はい…はい、合流しましょう。確認をお願いします」鳥海は通信を終え、辺りをふと見渡した。一瞬、何かの気配を感じた気がしたが…「気のせい…ですかね?」「鳥海」 26

2016-08-15 17:27:26
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

呼ぶ声が聞こえた。リカルドの声だ。鳥海は安堵して振り向こうとした。だが、脳裏に過った疑念により、その体が硬直した。((待って…私が通信を終えたのはついさっきよ…なのにこんなに早く…?))ふと鳥海は地面の影に目を落とした。そこには己の影と……長髪の巨大な影が! 27

2016-08-15 17:30:49
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「鳥海」認識した瞬間、鳥海の行動は素早かった!回転回し蹴り!「イヤーッ!」「鳥海…グワーッ!」リカルドの声で、白く巨大なものが吹き飛ばされる!「触れれる!」鳥海はファイティングポーズを取って先制アイサツ!「ドーモ、高雄型4番艦・鳥海です!」「ぽぽぽ…」 28

2016-08-15 17:34:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

巨人は頭を振って立ち上がった。鳥海はその巨躯を見上げた。何たる巨大さか。目測でも、8フィートは優にあるであろう。巨人は口から奇妙な音を漏らしながら挨拶を返した。「ぽぽぽぽぽ……エイトフィート……ぽぽぽぽぽ……」「アイサツを返せる知能がある…」鳥海は冷静に分析した。 29

2016-08-15 17:37:19
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

鳥海の脳裏に、リカルドの言葉が過った。「なら、あとは血が流れるなら倒せる…!」「イヤーッ!」エイトフィートは見た目に反した素早い動きで長い腕を叩き付ける!KRAAASH!地面が砕け散るが、鳥海はもうそこにはいない!彼女は懐に潜り込み、サマーソルトキックを繰り出した! 30

2016-08-15 17:40:36
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」「グワーッ!」サマーソルトキックがエイトフィートの顎を捉える。その口から微かに血が零れた。鳥海はその色を見逃さない。「成程、貴方の正体は…!」「イヤーッ!」だが、ナムサン!エイトフィートはサマーソルトキックの衝撃に耐え、恐るべき速さで鳥海の胴を掴んだ! 31

2016-08-15 17:42:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ンアーッ!?」鳥海は苦悶の悲鳴を上げる。計算外の速さだ。加えてこのタフネス。そして声を掛けられるまで傍にいることに気づくことのできなかった野伏力。油断ならぬ強敵である。鳥海は拘束から逃れようと身を捩ったが、マンリキめいた力がそれを許さない。エイトフィートは拳を引いた。 32

2016-08-15 17:45:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ナムアミダブツ!この拳が鳥海の頭部に命中すれば、ウォーターメロンめいて拉げることは必定である!鳥海は逃れんとした。「ぽぽぽぽぽ……!」エイトフィートは嘲笑うような仕草をして、カラテストレートを……「イヤーッ!」「グワーッ!?」エイトフィートの体がくの字に曲がる! 33

2016-08-15 17:47:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

拘束が緩み、鳥海は見た。荒々しく吹き荒ぶ蒼黒の風を。キャノンボールめいて叩き付けられたヨロイ・トビゲリを。「司令官さん!」「無事か!」着地し、鳥海とリカルドは互いを確認した。そしてリカルドは電撃的にアイサツを繰り出した。「ドーモ、リカルド・べレンゲルです」「ぽぽぽぽぽ……」 34

2016-08-15 17:51:28
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

エイトフィートは口から血反吐を吐き出してアイサツを返す。「ぽぽぽぽぽ……エイトフィート」「こいつ」リカルドは血反吐の色を見て片眉を吊り上げた。「オバケの正体見たり、か?」「イヤーッ!」エイトフィートはお辞儀を終えると同時に連続バク転で森の中へと消えた。「なっ」「待て!」 35

2016-08-15 17:54:20
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

2人は急いで逃げたエイトフィートを追う。途中、リカルドは地に落ちた血反吐を踏みつけた。その血反吐はコールタールめいて青黒い色をしていた。 36

2016-08-15 17:58:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「何の証拠もないっすねぇ…」同時刻、嵐は暇そうに手元の爆雷を弄びながら呟いた。「足跡とかあった方が面白いと思ったんだけどなぁ」「どうやら敵は相当に用心深いようですね」吹雪は海から森へと視線を巡らせ、言った。「ソウル痕跡すら探知できないとは」「化け物は深海棲艦なんですかね?」 38

2016-08-15 18:04:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「さぁ、分かりません」吹雪はゆっくりと立ち上がった。「仮に深海棲艦であったとしても、どのような分類の深海棲艦なのかまではわかりません。自我を持たぬ者。ネームド。そして海底民族。深海棲艦と言うレッテルは、我々が勝手に貼っているだけに過ぎません」「そういうものですか」 39

2016-08-15 18:07:38
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「まぁ何にしろ、倒すんですよね?」「ええ、情状酌量の余地はありませんから…あと、そこまで畏まらなくてもいいですよ」「えっ、いや…」嵐は口籠る。「オレごときが馴れ馴れしい口を聞くのは烏滸がましいっていうか…」「私はただの駆逐艦娘ですよ」吹雪は呆れたように溜息を吐いた。その時。 40

2016-08-15 18:11:17
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