レジェンド・オブ・エイトフィート
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「「「……」」」映像が終わり、リカルドと吹雪、そしてタウイ長官は息を飲んで沈黙した。「これは…」「どうだ海軍=サン」代表者はタウイ長官を見た。「これでも動けないと言うか?」「…そうだな」タウイ長官は頷いた。「直ぐにでも調査隊を編成しよう」「おお!」男たちは歓喜の声を上げた。 24
2016-08-14 17:55:40「ありがとう…海軍=サン!ありがとう!」代表者は涙を浮かべ頭を下げた。やがて、男たちが全員退出すると、タウイ長官は深く息を吐いた。「まさか、本当に化け物とは」「長官、一体何なんだ?この状況は」リカルドは困惑し、問い掛けた。「ああ、急に巻き込んでしまって悪かったね」 25
2016-08-14 17:59:19タウイ長官は姿勢を正し、答える。「最近、海に出た子供たちが行方不明になるという事件が起こっていてね…最初はただの海難事故かと思ったんだが、一人だけ戻ってきた子供が言ったんだよ。「化け物に襲われた」とね」「それが…」「ああ、たぶんさっきの映像の奴だろう」 26
2016-08-14 18:03:02「で、何をさっきからそんなに悩んでるんだ、あんたは」リカルドは不思議そうに問うた。実際タウイ長官はただ頭を抱えるのみだ。「さっさと艦隊でも派遣して、倒せば終わりじゃないのか?」「実は、一回秘密裏に派遣してるのだよ」「ほう?」「だが、結果は散々だった。全員轟沈寸前の大怪我さ」 27
2016-08-14 18:07:46その言葉を聞き、吹雪が眉を顰めた。「その時はまだ噂レベルだったから、精鋭クラスまでは派遣していなかったが、それでも弱い子達じゃなかった。それが手も足も出ずにやられてしまったんだ。こちらの精鋭を出して無事な保証がない上に、そろそろ大規模作戦が近いときた」 28
2016-08-14 18:09:45「成程、大規模作戦を前にして、いらん消耗は避けたいと」「そうはなるね…だが、化け物の存在は住民の知るところになった」タウイ長官は深く腰掛け、溜息を吐いた。「これはもう動かない理由がないんだよ…これからどれだけの損害が出るか、考えるだけで頭が痛いよ」「なら、俺達が行こうか?」 29
2016-08-14 18:11:46「えっ」タウイ長官は顔を上げる。「幸い化け物退治には一家言を持っていてな」リカルドは獣めいた笑みを浮かべた。「依頼をくれ。ぶちのめしてやるぜ」 30
2016-08-14 18:15:00#2
数時間後!リカルドは海図を広げ、子供を攫われた親たちの代表者から情報を確認していた。「ここが、あんたらが化け物と遭遇した地点で」リカルドは海図の一点に赤いペンで丸を記す。「で、この方向に逃げたと」「そうです」代表者が頷くのを確認すると、リカルドは丸から一本の矢印を伸ばした。 1
2016-08-15 15:04:58「で、子供たちが行方不明になったと思わしき場所が…」リカルドは海図に黒いペンで8つの点を記す。それらの黒点は円環上に海図の中の孤島の周囲に落とされた。「これは」「逃げた方向とも一致するな」リカルドは赤い矢印を指差した。化け物が逃げたと思わしき方角は黒点に囲まれた孤島を示した。 2
2016-08-15 15:08:46「つまりだ」代表者は希望に満ちた表情でリカルドを見た。「この島に子供たちが…スルトやスノルが!」「それがあんたの子供の名前か…」対するリカルドの表情は硬い。彼には懸念があった。「正直、俺達は化け物を退治しに行くだけだ…子供たちの無事までは保証できん」「それは…」 3
2016-08-15 15:11:12「そもそも、あの化け物はなんで子供ばかりを攫っているんだ?俺にはそれが疑問だ。生きていれば僥倖だが……」リカルドは渋い表情で言った。「ともあれ、俺が確実に約束できるのはこれ以上被害を広げないようにすることだけだ…子供の無事は、奴さんの気分次第だ」「それでも…頼む」 4
2016-08-15 15:12:50代表者は深々と頭を下げた。リカルドはサングラスの下でわずかに目を丸くした。「海の事故で失ってしまったってんなら納得できる。俺たちが生きているのはそういう場所だ…だが、あんな得体の知れない化け物に子供を奪われたんじゃ、誰も納得できない。せめて、形見だけでも取り返してくれ」 5
2016-08-15 15:17:06代表者の体は僅かに震えていた。理不尽への怒りによって。その手は白くなるほどに強く握りしめられていた。「……承知した」リカルドは深く軍帽を被り直し、応接室から退室した。代表者はリカルドの姿が見えなくなるまで頭を下げていた。「……」戸を閉め、リカルドは深く溜息を吐いた。 6
2016-08-15 15:19:22「司令官」戸の傍に凭れ掛かっていた吹雪が呼び掛ける。「ああいう頼み方は卑怯だろうに…」リカルドは小さく呟くと、吹雪に指示を下した。「行くぞ」「はい」「化け物をぶち殺して、子供たちを取り戻す」「はい」師弟は屹然とした視線を交わした。そして二人は港湾部へと歩き出した。 7
2016-08-15 15:25:58同時刻、タウイタウイ基地入口で、泥酔した浮浪者の老人が警護の兵士に管を巻いていた。「ヒック…」「おい爺さん」兵士は呆れ果てたと言わんばかりに警棒で老人をつつく。「ここはあんたの家じゃないぞ」「ウィー…」老人はアルコール臭のきつい息を吐き出した。「どうすんだこれ」「……巨人」 8
2016-08-15 15:29:45「あ?」兵士は訝しんだ。老人はトランス状態めいた恍惚とした表情で朗々と語り出す。「古の時代より眠り続けていた巨人様が蘇られたのだ…」「どうした爺さん?完全に酔ったか?」「巨人様は!」老人は天を仰いで絶叫する。それは何らかの神託を授かった預言者めいていた。「お怒りである!」 9
2016-08-15 15:34:08「古の時代がそうであったように、無垢な子らの生贄のみが、巨人様の怒りを鎮めるであろう!」そう言い切ると、老人は突如としてうつむいた。「…爺さん?」兵士は老人の顔を覗き込んだ。老人の顔は蒼褪めていた。「あっ、拙い」「オゴー!」「グワーッ!」老人は嘔吐!吐瀉物が兵士を濡らす! 10
2016-08-15 15:36:30「テメッコラー!何しやがるバカヤロー!」吐瀉物に塗れた兵士は激昂し、警棒で老人を叩いた。「アイエエエエエエ!」地に転がり、老人は情けない悲鳴を上げた。「話が終わったんならとっとと帰れオラー!」「アイエエエエエエ!」兵士の怒号を受け、老人は尻尾を巻いて町へ逃げ出した。 11
2016-08-15 15:38:11「まったく…」兵士は溜息を吐き、そして己から漂う吐瀉物の匂いに顔を顰めた。「……着替えるか」兵士は交代を要請する通信を入れながら基地の中へと歩き出した。同時に、港湾部から高速艇が一隻、出港した。 12
2016-08-15 15:40:22夕刻、リカルドたちは小さな孤島へと降り立った。「ここが」吹雪が島を見る。鬱蒼とした森と、岩肌が剥き出しになった小さい岩山があるばかりの無人島であった。「こんなところに噂の化け物がいるってのか」爆雷をお手玉めいて手元で弄ぶ嵐が不敵な笑みを浮かべた。「冒険みたいで面白そうだな」 14
2016-08-15 15:45:50「楽しむ暇があるとは思えねぇがな」蒼黒の甲冑・ダマスクに身を包んだリカルドが硬い声でそう言った。「今回は人命救助の仕事だからな」「…そういや、そうだったな」嵐はしょぼくれた表情を浮かべる。「しかし、本当に生きてんのか?そのガキ共は」「知らん。それを確かめるのも任務の内だ」 15
2016-08-15 15:50:48