金剛VS加賀(仮題)

金剛VS加賀
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星金 剛 @DB_kongo000

ワタシは恐らく……などというまでもなく、人に見せるべきではない酷い表情を浮かべている。 それに気づいた祥鳳は、恐らく加賀が言っていることが全ての真実でないことを察したのだろう。 ワタシを落ち着かせようとしているのだろう、どうどう、どうどうと手で抑えるようジェスチャーをしている。

2017-03-25 01:37:34
星金 剛 @DB_kongo000

まぁ、加賀もウソは言ってないからね。 大丈夫、ワタシは冷静。 「動揺して、私達は……恥ずかしながら、冷静さを欠いてしまいました。空を跳び回る97式艦攻を追い求めて……その際に、酷い衝突をしてしまって」 「それで、金剛が怪我を?」 「エッ?エエ、まぁ……いたっ!」

2017-03-25 01:37:59
星金 剛 @DB_kongo000

思わず額に触れると、激痛が走る。 高ぶる感情で押さえつけていた痛みを、思い出してしまったようだ。 「思いっきり殴り合っていたように見えたがな。砲撃も」 「えっ?あ、いや、それは……」 やっぱりダメじゃないか。

2017-03-25 01:38:21
星金 剛 @DB_kongo000

そりゃあ提督だってボーっとしていたわけではないでしょうし、誰か一人ぐらい終始見てたでしょう。 狼狽する加賀に、笑いをこらえるのに必死である。 「ハイ。テートク」 「何だ、金剛」 もう笑いをこらえきれなかった。 ワタシは表情を崩しながら挙手。 提督に笑顔を向ける。

2017-03-25 01:38:43
星金 剛 @DB_kongo000

「申し訳ありまセン。私的な理由で少々喧嘩しまシタ」 「あれで少々か。解決したのか?」 「イエ全然。むしろ、解決することはないという結論が出マシタ」 「それは困るな」

2017-03-25 01:39:02
星金 剛 @DB_kongo000

「エエ、ワタシ達自身困ってマス。が。よくよく考えたら昔からそうデシタ。提督は特に気にしなくてもNo ploblemデース」 「確かにな。だがもう仲裁人はいないぞ。本当に、大丈夫か?」 「……イエス。ワタシ達も、少しは大人になりマシタから」

2017-03-25 01:39:08
星金 剛 @DB_kongo000

貴女はあの頃からいい年だったじゃない。 そんなことを言う足を踏んでおいた。 渋い表情を隠すように、額に手を当て俯く加賀。 「……ま、いいだろう。雨降って地固まる、ということにしておこうか。後始末でそれどころじゃないからな」 提督がゆっくり歩み寄ってきて、両手を挙げる。

2017-03-25 01:39:34
星金 剛 @DB_kongo000

思わず身をすくめる。 ポン、と。 ワタシの肩に提督の大きな手が、優しく置かれた。 加賀も同じ動作を受けたようで、やや腰が引けた状態で、片目だけを開いて提督を見つめていた。 「二人とも、お疲れ様。君達のおかげでこの鎮守府は守られた。本当に、良くやってくれた」

2017-03-25 01:39:50
星金 剛 @DB_kongo000

穏やかな笑みを浮かべる提督を見るのは、ワタシですら久しぶりで。 ワタシは思わず満面の笑みを浮かべ、照れ隠しの意味を込め、敬礼をした。 「「ありがとうございまス!」」 言葉が重なり、驚いて加賀を見やる。 向こうも同じ表情。 困惑を混ぜた笑みを浮かべるしかない。

2017-03-25 01:40:11
星金 剛 @DB_kongo000

「航空母艦、加賀」 「は、はい」 ワタシに背を向け、加賀へと向き直る提督と、緊張した面持ちで一瞬崩した姿勢を再び硬直させる加賀。

2017-03-25 01:40:27
星金 剛 @DB_kongo000

「艦隊司令官の名において、一時的に貴艦を私の指揮下に置く。それに伴い貴艦が前任の上官より受けた命令、及び、私が今これまでに貴艦に下した全ての命令は今この場で解除とする」 「……え」 「今まで長い間。苦しめてしまって、すまない。謝って済むことでは、ないが」

2017-03-25 01:40:40
星金 剛 @DB_kongo000

軍帽を取って胸に当て、提督は深く頭を下げた。 提督として、続けて一人の男としての謝罪。 静まり返った一同の視線が、二人に注がれる。 加賀は暫くの間、全ての力が抜けたかのように口を半開きにしたまま呆けていた。 次第に潤いを増す瞳。 溢れた涙が、頬を伝う。

2017-03-25 01:41:03
星金 剛 @DB_kongo000

「ぐっ……ひぐっ……どうか……顔を、上げてください、提督。全ては、ひくっ……全ては私の弱さが、こんな形でしか自らの気持ちを表せない私の弱さが招いた、自己責任なのですから。顔を、上げて」 提督が顔を上げると、加賀はゆっくりとその身体に近寄っていき、胸の中に自らの顔を埋めた。

2017-03-25 01:41:26
星金 剛 @DB_kongo000

「申し訳、ありません。今の顔を、見せたくないので……少し、隠させて頂きます」 「あ、いや、その……だな」 提督は驚き、反射的にあげてしまったのであろう両手をゆっくり降ろし、片手で加賀の背中を支え、もう片手でほんの少し茶色がかった加賀の髪を撫でた。 絹物でも扱うかのような手つきで。

2017-03-25 01:41:50
星金 剛 @DB_kongo000

「……ハァーーーー」 上がった手は提督の二本だけではない。 思わず上げてしまった、拳。 加賀のむせび泣く声を聞いたワタシは大きく深呼吸することで気持ちを抑え、ゆっくりと下ろした。 数歩下がって、壁に背中を預ける。 「いいの?」 そろそろと横歩きで近寄って来た伊勢が囁いてくる。

2017-03-25 01:42:16
星金 剛 @DB_kongo000

「良くないヨ。でも無粋な女にもなりたくはありまセン」 「拗ねないの」 「拗ねてまセン」 腕を組み、眉を寄せ、口は奥歯までしっかりと噛みしめ、特に何がある訳でもない部屋の端へと目を向ける。 暫く時間が経ち、加賀の泣き声が聞こえなくなってからワタシは視線を中央の二人へと戻した。

2017-03-25 01:42:42
星金 剛 @DB_kongo000

丁度提督が加賀の両肩に手を置き、そっと後ろへ下がらせたところであった。 パンパン、とそのまま両手を打つと、提督はいつものように、険しい表情で声を張り上げた。 「さぁ、ここから忙しくなる! 皆作業に取り掛かれ。金剛、加賀。お前達にも手伝ってもらうからな」

2017-03-25 01:42:49
星金 剛 @DB_kongo000

「「了解!」」 空を切るように一同が揃って敬礼。 これで一件落着……か?

2017-03-25 01:42:53
星金 剛 @DB_kongo000

~ あれからについて、少し手記を残そうと思う。 あの若き提督は戦果を、栄光を手にするために艦娘を犠牲にするような指揮をとることが常だったそうだ。

2017-03-25 01:43:21
星金 剛 @DB_kongo000

まぁ、あれだけの練度を持つ加賀がいれば大抵の深海棲艦はそれだけで撃滅できるのだろうし、後の艦娘はせいぜい加賀を守るための盾、狙いを分散させる為の的と認識していたらしい。 ご執心の加賀以外の艦娘は眼中になかったようだし。

2017-03-25 01:43:59
星金 剛 @DB_kongo000

しかし上官が部下の命を顧みない上に無能、というのは戦時中まるでない話ではない。 それでも彼が問題となったのは、自分に悪いイメージがつかぬよう、艦娘の轟沈の報告を怠り、もしくは改竄していたこと。 資材の為にその艤装を解体するということも行われていたようだ。 当然報告はせずに。

2017-03-25 01:45:02
星金 剛 @DB_kongo000

資料上では100人に近い艦娘が所属しているハズであるのに、実際は四分の一ほどしかいなかったらしい。 それでも艦娘100人分の資材を受け取っていたのだから、これは立派な違反である。 一点でも違反があれば、グレーゾーンにも目が向けられる。 采配、指揮次第で回避できた幾多の犠牲。

2017-03-25 01:45:27
星金 剛 @DB_kongo000

放置された重症の艦娘達。 治療用の資材は山のように備蓄されていたのにも関わらず。 ……本人は否定しているようだが、それらを隠匿するために日記に事細かな記録を残していた剣崎……軽空母祥鳳に過酷な出撃をさせたこともほぼ事実として取り扱われている。

2017-03-25 01:46:07
星金 剛 @DB_kongo000

艦娘や海兵の証言、現場の有様、そして剣崎の日記。 全てが彼の悪行を示しており、これを払拭することは不可能だろう。 彼が再び表舞台に立つことはもうない。 結果、書類上轟沈となっていた剣崎も、軽空母祥鳳として再び正式に軍属の艦娘として認められた。

2017-03-25 01:47:05
星金 剛 @DB_kongo000

これからどうなるか分からないが、恐らくどこか、まともな……監視の意味を込めて、本部に近い、平和な鎮守府で丁重に扱われることになるだろう。 また、鎮守府にいた艦娘達も、辛い思い出だけが残されているあの鎮守府にはいたくないようだ。 転属願いが続々提出されている、と聞いた。

2017-03-25 01:48:25
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