金剛VS加賀(仮題)

金剛VS加賀
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星金 剛 @DB_kongo000

左右から厚い鉄板を叩きつけられた衝撃のあまり、加賀の手から離れた小太刀が海中へと沈む。 「あがぁっ!ぐぅっ……」 本来ならば鉄板同士の凹凸が噛みあい、巨大な盾となる。 が、使い方次第では大ハサミだ。 凹凸があるので二本鋸の方が正しいだろうか?

2017-03-25 01:26:28
星金 剛 @DB_kongo000

「こっ……金剛、貴女……!」 鋏に捉えられ、宙ぶらりんの加賀は口から血を掃出し、苦しそうに呻く。 「ごめんネ,加賀。流石に挟み殺すつもりはないので、安心してくだサイ」 主砲の狙いを定める。 「……しょ、正気?身体への、がぁっ……衝撃を恐れて距離をとったのでは、なかったの?」

2017-03-25 01:27:04
星金 剛 @DB_kongo000

呻き、片目を閉じながら、それでも加賀は逃れようともがく。 力の入らない、真っ白の腕でハサミを叩く。 「無駄死にする気はないからネ。だけど、刺し違えたのならば無駄では無い」 「く、ウぅ……相変わらず、貴女の価値観はおかしいのよっ……」

2017-03-25 01:27:26
星金 剛 @DB_kongo000

「昔馴染みの縁で一緒に死んでやるって言ってるんだヨ。っていうか、今の貴女にそれ言われたくないデース」 加賀が必死にもがく振動で、ワタシも揺れる。 その動きの中で、彼女の腕が上衣の中へと伸びていく様子をワタシは見逃さなかった。

2017-03-25 01:28:21
星金 剛 @DB_kongo000

加賀が懐から抜き、その動作のまま放った小太刀。 回転しながら眼前に迫りくる 加賀の体重を艤装で支え、しかも彼女は暴れている。 重みに振り回され、大きな回避運動は取れない。 だが彼女も必死なのだろう。 狙いはロクについてはいない。

2017-03-25 01:28:38
星金 剛 @DB_kongo000

首を右へと折り曲げると、ヒュヒュンという音と共に頬の上を小太刀は通り抜けて行って、ぽちゃんと音を立てて海に落ちた。 首を元に戻すと、血がつぅっと流れ落ちていくのが分かった。 手の甲で拭う。 額からのものと合わせて、更に顔が赤く染まってしまった。 「残念だったネ」

2017-03-25 01:28:59
星金 剛 @DB_kongo000

「ええ……これで完全に、お手上げよ」 ピタリと抵抗をやめ、険しい顔のまま、ただ艤装に挟まれぶら下がる加賀。 口先の作戦である可能性が否定できないので、手は抜かない。

2017-03-25 01:29:27
星金 剛 @DB_kongo000

「加賀。運が悪かったら、地獄で会おうネ」 「ええ……そうね。そこで……決着をつけて、あげるわ」 「もうついてるヨ。ワタシの勝ちか、相打ちか」 主砲が僅かに起動し、微調整を済ませる。 爆風でどうなるか……とはいえワタシの身体だ、破片さえ刺さらなければどうにでもなるだろう、恐らく。

2017-03-25 01:29:48
星金 剛 @DB_kongo000

「have a nice day,加賀。全砲門……」 その時、耳に届いた振動。 それは聞き間違えるハズもない、幾度も聞いたレシプロエンジンの音。 深緑色が、ワタシと加賀の間を駆け抜けて行った。 その深緑の胴体に光る、赤い日の丸。 曲がりの無い、綺麗にほぼ直線の翼。 流星……か?

2017-03-25 01:30:21
星金 剛 @DB_kongo000

それにしては、速度が遅い。 ワタシと加賀はただ、空へと消えていくその姿を見送っていた。 「97式艦攻……」 加賀が言うからには、そうなのだろう。 ぽつりとつぶやいた彼女へと視線を戻し見つめると、彼女は首を横に振った。

2017-03-25 01:30:38
星金 剛 @DB_kongo000

「……違うわ、よ。見ての通り、弓を持ってないもの。それに、私が持っていた艦載機は、流星よ。旧型の97式をわざわざ使う理由はない」 「そう、デスカ」 ガシャン、と。 艤装が駆動し、サブアームの関節を軸に回転。 巨大な盾は二分割され、元の背部を守る鉄板となる。

2017-03-25 01:31:01
星金 剛 @DB_kongo000

解放された加賀は器用にも沈むことなく海面に着地する、も、ワタシに向かって崩れ落ちて来たので、正面から受け止めた。 どうしてこいつと抱き合わなきゃいかないんだろう。 「……居心地が、悪いわね」 「エエ、どうにも。見ていますよ、と……そんなメッセージを感じないこともありまセン」

2017-03-25 01:31:21
星金 剛 @DB_kongo000

戦闘機の飛び去った空を見つめる。 視線を感じて加賀を見ると、彼女はワタシの肩の上で普段より僅かに目を大きく開き、半ば呆けたようにワタシを見つめていた。 「覚えていたのね。赤城さんの愛機」 「会話に詰まると赤城と艦載機の話を始めたのはどこの誰だヨ」

2017-03-25 01:31:39
星金 剛 @DB_kongo000

「……そんなことあったかしら」 「オイ」 ふいと首を曲げ、空を見上げる加賀。 ワタシも倣い、再び視線を空へと移す。 「昔から。揉めごとの仲裁に入るのは赤城さんだったわね」 「エエ。揉め事の5割はワタシとアナタだったケドネ」 「……5割で済むかしら?」 「済みまセンネ」

2017-03-25 01:32:02
星金 剛 @DB_kongo000

互いに変な笑みを浮かべているところで、目が合ってしまった。 「……何だったのかしら。あの97艦攻は」 「さぁ。真実は空の彼方へ……ワタシ達の知ったところではありまセン」 「えぇ。そうね」 暫し沈黙。 互いに、戸惑い、困っているのだ。 この状況に。

2017-03-25 01:32:37
星金 剛 @DB_kongo000

思い出と幻想の亡霊に、痛みも無く牙を抜かれてしまった。 「私を生かしておいてくれるのならば……帰った方がいいんじゃないかしら。そろそろ、誰か送られてきてもおかしくないわ」 「……まぁ、巻き込むのは本意ではありまセンネ」

2017-03-25 01:33:09
星金 剛 @DB_kongo000

加賀は気まずそうと言うか、能面のように薄い表情に珍しく、はっきりと見て取れる戸惑いを浮かべていた。 ワタシも恐らく、同じ顔をしているだろう。 「……金剛。一つ、頼みがあるのだけれど」 「何?」 「も、もう暫く、肩を貸して……もらえないかしら。その……凄く、痛いわ。お腹が」

2017-03-25 01:33:29
星金 剛 @DB_kongo000

加賀は腹部を抑えたまま、更に表情を歪めた。 「……ソーリー」 ワタシは……貧血だろうか。 少しふらつくが、まだ意識ははっきりしている。 加賀の手を取り、首へと回し、そこでふと彼女の顔を見る。

2017-03-25 01:34:00
星金 剛 @DB_kongo000

「……まだ何か隠してないデショーネー?」 「あったとしても使わないわ。少なくとも今は」 「嫌な答えだネー」 姿勢を低くし、加賀の体重を受けながらもう一度背を伸ばす。 そして、海面を滑り出す。

2017-03-25 01:34:08
星金 剛 @DB_kongo000

こうやって肩を貸すのはいつ以来だろうか。 互いに渋い顔の中で、ワタシはそんなことを考えていた。 同じ表情の加賀は、どうだろう。 もしかしたら、同じようなことを考えているのかもしれない。 よくワタシに引き摺られていた、新人の頃を。 思い出しているのかもしれない。

2017-03-25 01:34:11
星金 剛 @DB_kongo000

~ 「……説明してもらおうか?」 「イヤ~その、アハハ……」 加賀を引き攣れドッグに戻ると、提督が腕を組んで待っていた。 その後ろで顔を青くした祥鳳が、両手を上げ、おろおろと手持無沙汰にしている。 ワタシもまさか加賀の頭がおかしいから殺そうとしたなどと言う訳にもいかず。

2017-03-25 01:34:40
星金 剛 @DB_kongo000

苦さ9割、誤魔化し笑い1割を浮かべて後頭部をさすることしかできない。 「提督。発言、よろしいでしょうか」 「許可する」 加賀がすっと伸ばした手。 こいつ今しれっと提督呼びしたね、ウチの艦娘でもない癖に。 「その……信じられないような話なのですが」

2017-03-25 01:35:09
星金 剛 @DB_kongo000

顎を引き、困ったような表情を演出。 且つ、上目気味に、潤った瞳で提督を見つめる加賀。 あざとい仕草も表情も、作ってるのがバレバレなんだよこのアマァ。 涙を貯める為に瞬きしてなかったし。 「……それは聞いてから、私が判断する。話してくれ」 「はい、提督」

2017-03-25 01:36:01
星金 剛 @DB_kongo000

頷くと加賀は瞳を閉じ、大きく深呼吸をした。 その胸を上下させる間に、薄く開いた目がワタシを見つめ、得意げに口の端をほんの少し吊り上げやがりましたよこいつぅ。 ……耐えてよ、ワタシ。 この提督のことなら何でも分かるのよとでも言いたげな女を今すぐぶちのめしてやりたい衝動を堪えるのだ。

2017-03-25 01:36:31
星金 剛 @DB_kongo000

「あの時、我々は97式艦攻を発見しました。私や、この鎮守府の艦娘の物ではありません。既に最低でも天山級までの艦載機を揃えているから」 「97式艦攻?というと……」 「ええ。赤城さんの……愛機です」 「赤城の……」 演技が妙に上手いのがワタシの苛立ちを加速させる。

2017-03-25 01:37:25
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