『戦国大名武田氏の戦争と内政』読了。

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日光81 @nikko81_fsi

眠いとかいいながら、鈴木将典氏「戦国大名武田氏の戦争と内政」読了。同氏の『戦国大名武田氏の領国支配』も読もうとは思っていたが、よい予習になる内容かな。丸島先生の本もまだ読んでないのに、持ち歩きやすいサイズの新書から読んじゃった。

2016-08-27 15:58:42
日光81 @nikko81_fsi

戦国大名の権力構造の初歩解説から、その構造が織田豊臣徳川となっても同じ人間の立場は変わることはあってもロジックには連続性があること。時代を通低する事情として飢餓・災害による食うに困る時代のヒト・モノ・カネの取り合いという側面という一般論の解説がわかりよい。

2016-08-27 16:02:51
日光81 @nikko81_fsi

その前提解説があるなかで、武田三代の①時系列の流れ・②政治軍事とその背景にある経済がすっきりマトリクス状に整理されてあって、わかりやすい展開でした。特に個人的には甲州法度の五十七か条の端的な解説とカテゴリわけが大変ありがたいですね。

2016-08-27 16:11:34
日光81 @nikko81_fsi

経済に関する内容が多いというのも、経済的な困窮を背景にした争いが戦国と考えるとわかりやすい。つまり年貢所役・所領問題というが先に来てるし、二十五か条版から追加された借銭・棟別役なども合わせると、経済的な内容が33か条にも及ぶ。

2016-08-27 16:19:00
日光81 @nikko81_fsi

訴訟7か条ある意味経済的な訴訟が多いと考えると、ある意味これも経済的な内容に近いのかもしれない。今川仮名目録と共通するのは、この訴訟と経済ではない刑事事件、他国との交渉(外交)、被官・下人(人事)という点も興味深い。それだけ甲斐の困窮ぶり、モノの取り合い感が想像できる。

2016-08-27 16:22:03
日光81 @nikko81_fsi

ただ個人的な関心事というと、訴訟のところが関心が高いかな。公平にエコヒイキなく、言いたいことを言わせるよう努めていて、信玄その人が決断を下すまでのプロセスは努めてフェアにもっていこうとしている感じがする。自力救済の否定をする以上、その納得感って大事だったのだろうなと。

2016-08-27 16:32:39
日光81 @nikko81_fsi

もう一点は宗教問題。法論禁止はまぁ知っているとして、禰宜・山伏の主人をもつなというのもなかなかおもしろい。これに違反すると武田領国での徘徊禁止。基本的に仏教(神道はよく知らない)は幅広い宗派の信仰の自由があった武田領国。神職が特定の主人に仕えることで宗教をまきこんだ揉め事の防止?

2016-08-27 16:36:34
日光81 @nikko81_fsi

第六章ではこの訴訟の事例が紹介されていて、より武田の実態に即した理解ができる。郡内の揉め事で弥三郎信有が裁定に困っていたところ、今で言うエスカレーションをして甲府の信玄の下までもってきてるとか。でも信有の嘆願で裁定は小山田に、ということで信玄もこれを了承。

2016-08-27 16:40:14
日光81 @nikko81_fsi

小山田の国衆としての立場を示すもの(信玄が郡内の裁定に基本的には関与しない)ということもあるけど、それを超えて信玄に訴訟持ってくるあたり、揉め事の多さと争いの激しさを感じますね。

2016-08-27 16:42:14
日光81 @nikko81_fsi

もうひとつ気になったのは、信玄時代後半の民衆動員。主に信濃~西上野制圧までの前半は信虎時代の税制を体系化して発展的に継承した一方、後半期の三国同盟破棄から駿河侵攻、遠江・三河戦線の時代は、前半で軍役衆同様棟別銭や普請役を免除する代わりに従軍を求め、税収から兵力への転換を図ってる。

2016-08-27 16:50:18
日光81 @nikko81_fsi

ある程度、領国が拡大して「棟別銭・普請役負担」と「軍役負担」のバランスをより軍役に振れるくらいの資金的な余裕ができたということなのかな?同時に兵役を全うするにあたり、数合わせに老人子供をつれることを禁じ、有徳(富裕層)や武勇の人を選りすぐるように命じているらしい。

2016-08-27 16:53:58
日光81 @nikko81_fsi

つまり、兵の数を増やしながらその質も高める転換をしているということ、またそれができる経済的環境が武田家中にあったということ?これ長篠敗北後の勝頼の施策とちょうどついになっているようで(ツラいんだけど)ちょうど裏返しになってるように思えてならない。

2016-08-27 16:57:25
日光81 @nikko81_fsi

多くの将兵の犠牲者をだした長篠合戦の後、15歳以下60歳以上(真田丸で出てきた上杉軍の援軍みたいな)を条件付ではあるけど狩りだして兵力を補い、かつ棟別銭の賦課強化と惣国一統普請という領国全体の人足徴発。トレードオフであるはずの課税強化と兵力強化を同時にせねばならないツラミ。

2016-08-27 17:04:46
日光81 @nikko81_fsi

実際兵力低下は敵国からも非戦闘員ばかりと噂されるほどで武勇の者を!とは命じるものの、ないものねだり。信玄西上作戦のときの大兵力や勝頼序盤の快進撃が、領国の選りすぐりの精鋭に支えられてたとすると、辛さや焦りは容易に想像できる。討死した将の家の引継ぎも山積してたはずだし。

2016-08-27 17:09:42
日光81 @nikko81_fsi

西上作戦でできるだけ兵力を温存し、城を力攻めしないという方針も従来からあっただろうけど、こういう経済的な側面と徴兵の考え方の転換とも関係あったんだろうかとも思いが広がる。

2016-08-27 17:12:39
日光81 @nikko81_fsi

とすると、長篠合戦の影響は、重臣クラスの討死は、勝頼の権力強化にプラスに働いたかもしれないが、むしろ一万八千の精鋭の相当数が討死のほうが武田へのダメージが大きかったのかも。この時点でかつての武田軍と同じ戦はできなくなっていたのかも・・・という気がしました。個人の想像ですけど(完)

2016-08-27 17:19:03