ヴェリー・クローズ、インフィニトリィ・ディスタント・シー

深海棲艦と人類、彼らの棲む海は極めて近く、そして限りなく遠い
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」イクサ場に現れ出る新たな戦士の影。「あれは…」ライオンハートは目を見開いた。それは電であった。その背には、黒い装甲の艤装。手持ち携帯タイプの黒い主砲に、黒鉄の大錨。読者の皆様はこの装甲を知っている!深海棲艦の装甲である!電は、音を立てて両手を合わせた。 28

2016-09-16 17:53:07
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして見よ。黒い主機が粟立ち、人の上半身を生やした。それは黒い装甲服を纏い、白い髪を持ち、碧色の瞳で戦艦悽姫を睨んでいた。彼も両手を合わせた。そして、同時にオジギをした…アイサツである!「ドーモ、暁型4番艦・電です」 「アケロオス改めて、シロ・アケロオスです」 29

2016-09-16 17:56:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「チィーッ!」戦艦悽姫はヒステリックに髪を振り乱し、電とシロを鬼めいた形相で睨み付けた。「死ニ損ナイノ人間ト、スクラップ寸前ノガラクタガ何の影用ダ」「基地への攻撃を阻止しに来ました」電は淡々と答える。「それと、今まで虐められた分を倍返ししにだ」「ホザクナ、小舟風情ガ!」 30

2016-09-16 19:11:35
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

いかなクローンとは言え、纏う覇気とカラテは紛うこと無き本物である。電たちの肌が、戦艦悽姫の怒気でビリビリと痺れる。ライオンハートは、二人を庇うように前に立った。「さて、これで2対2、だな」ライオンハートは二人に視線を送り、人の良い笑みを見せた。 31

2016-09-16 19:16:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「人類の味方になるつもりは更々ないが、同胞がそうしたい、というのなら仕方が無い」ライオンハートは芝居がかった動きで頭上で巨剣を振るうと、王者の如く堂々と振り下ろし、構えた。「ディープ・オーダー盟主ライオンハート。今この一時、義によって人に刃を預けよう!」 32

2016-09-16 19:20:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「高々ザコヲ味方ニツケタ程度デ、イイ気ニナルナヨ、ガラクタァ!」 「本体を頼む!」ライオンハートは短く叫ぶと、巨人型艤装に踊り掛かった!「イヤーッ!」「GAHHHHH!」鉄塊めいた巨剣と丸太めいた巨腕がぶつかり合い、鎬を削る! 32

2016-09-16 19:26:07
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」戦艦悽姫はライオンハートの背後から仕掛けんとした。「イヤーッ!」大錨が飛来!アンブッシュが妨げられる!大錨はブーメランめいた軌跡を描き、電の手元に収まる。「アンタの敵は僕たちだ」「イイダロウ…ソンナニ沈ミタイナラ、望ミ通リニシテヤル」戦艦悽姫は骨槍を構えた。 33

2016-09-16 19:30:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

電は大錨を中段に構える。対する戦艦悽姫は這う様な低い姿勢だ。互いに敵の力量を推し量る。無闇に動くことはない。タツジン同士のイクサは、ボタンひとつの掛け違いで結果が変わるほどに過酷な世界。無駄は、許されない。一瞬、沈黙が場を支配した。薄氷めいた、決壊が約束された沈黙だ。 34

2016-09-16 19:37:58
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」「AGAHHHH!?」ライオンハートの刃が、巨人型艤装の左腕を根本から斬り裂いた。斬り落とされた腕が、水面を割った。それが決壊の合図。「イヤーッ!」仕掛けるは戦艦悽姫!彼の者はチーターめいた速度で低い姿勢のまま駆け、電に近づくとトビウオめいて跳ね飛んだ! 35

2016-09-16 19:43:21
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」「イヤーッ!」電は大錨で槍の切っ先を逸らす。だが、狡猾なるは戦艦悽姫!彼の者は槍と共に自身の体を跳ね上げた際に膝蹴りを仕込んでいたのだ!膝蹴りは電の腹部に突き刺さる!「イヤーッ!」「ンアーッ!」電の体が海面に叩きつけられる!「温イ!」「電=サン!?」 36

2016-09-16 19:49:18
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

電は直ぐ様体勢を立て直し、大錨を脇構えに構え直した。右斜め後ろに先を向けた大錨を見て、戦艦悽姫は追撃を諦める。「電=サン」「大丈夫です。戦うのは、久しぶりでして」電は、シロを励ます様に不敵に笑った。「けど、もう思い出したのです。安心してください」その目の闘志は消えていない。 37

2016-09-16 19:54:47
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」「AGAHHHH!」一方、ライオンハートと巨人型艤装のイクサは、ライオンハートが一方的に蹂躙する様を呈していた。これは当然の結果である。巨人型艤装は自立戦闘が可能とは言え、所詮戦艦悽姫の追加兵装である。主から離れては、愚鈍なカラテしか振るえぬのだ。 38

2016-09-16 19:57:56
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

だが、ライオンハートの表情に余裕はない。彼の内蔵レーダーと第六感は察している。徐々にこの周囲を包囲する深海棲艦の数が増加している。戦艦棲姫の手勢である事は自明だ。このままでは数の差で圧倒される!「イヤーッ」「AGAHHHH!」ライオンハートは決着を急ぐ為、奥義を準備した。 39

2016-09-16 20:02:58
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ライオンハートが地面に水平に構えた左腕に、6本の触手主砲が木の根めいて纏わり付いた。その瞬間、イクサの空気が変わった。ここがポイント・オブ・ノーリターンであると!「イヤーッ!」戦艦棲姫は再び低姿勢突撃を仕掛ける! 40

2016-09-16 20:08:04
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((如何ニ私ヲ攻撃シヤスイ構エトハイエ、リーチハコチラノ圧倒的有利!))戦艦棲姫の主観時間が泥めいて凝る。電は構えを変えない。戦艦棲姫は大錨の届かないギリギリの距離で跳ね上がる。掬い上げる様に振り上げられた大錨が空を切った。((獲ッタ!))「沈メ!艦娘!沈メーッ!」 41

2016-09-16 20:11:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

槍の長さ全てを利用した神速の突きは、電の体を無慈悲に貫く…はずであった。切っ先が、胸の手前で突如として止まった。戦艦棲姫はあり得ぬ事態に困惑した。「何…ガ……!?」彼の者は見た。己の体を拘束する、ウロコを備えた、細長い尾を。艤装の主機からのびた、アケロオスの下半身を! 42

2016-09-16 20:17:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『確かに僕はお前の装甲を貫くのは厳しい』主機からシロの声が木霊した。『けど、お前の動きを止める程度なら、容易い!』「コノ、コノガラクタ風情ガァーッ!」戦艦棲姫は怒り狂い、叫んだ。だが、彼の者は気付くべきであった。ギロチンめいて振り下ろされる大錨の存在に! 43

2016-09-16 20:20:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」KRAAAAASH!「アバーッ!」大錨が 戦艦棲姫の頭部を砕く!白い脳漿が飛び散る!「アバッ…コンナ事デ…」『イヤーッ!』シロは尾で戦艦棲姫を投げ飛ばす!その先は…「グワーッ!」「AGAHHHH!?」ナムサン!今まさに最後の反撃をしようとした巨人型艤装である。 44

2016-09-16 20:25:48
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

二者はもつれ合い、その場から動けなくなる。『さっきのお返しだ!』シロはキツネ・サインを突き立てる!それを見て、ライオンハートは薄く微笑み、巻き付いた6本の触手によって3倍以上に膨れ上がった左腕を構えた。6門の砲門が、すべて開いた。「これなるは、我が奥義…」 45

2016-09-16 20:29:53
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

それを見て、戦艦棲姫は恐れた。来る。己を沈めうる攻撃が、確実に。彼の者は逃げようとした。脳の損傷で体の動きがままならぬ。脳裏に過ぎるは、「インガオホー」の文字!「ヤメロー!」戦艦棲姫は情けない悲鳴を上げた。だが、虐げられた者達の王に、慈悲などない!「六連主砲―――斉射!」 46

2016-09-16 20:35:00
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

KRA-DOOOOOOOOM!カラテパンチにより巨剣を軽々と振るうカラテの速度が砲撃に乗算!6つの砲撃は巨人型艤装ごと、戦艦棲姫の体を、粉々に粉砕した!「アババババーッ!」ライオンハートの元に、戦艦棲姫の頭部が飛来!「予告通り、マメピストルで殺してやったぞ…」 47

2016-09-16 20:40:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「サ…」「おおっと」ライオンハートは左腕を元に戻すと、素早く戦艦棲姫の頭にセメント色の妙薬を注射した。瞬く間に戦艦棲姫の顔が凝固する。それと同時に前方で、残った体と艤装が爆発四散した。「サヨナラは言わせない。お前には聞きたいことがあるからな」酷薄な声で、王はそう告げた。 48

2016-09-16 20:45:36
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして王は歴戦の勇士と、変幻の怪物に向き直った。「ようやく名前が聞けたな。シロ・アケロオス=サン」シロは艤装へのヘンゲを解き、ライオンハートの正面に立った。「いい目だ」ライオンハートはただそう賞賛した。KABOOOOM!その時、遠くから爆音が轟いた。 49

2016-09-16 20:51:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『センセイ!ご無事ですか!』電のインタラプト通信機から、平賀の声が響いた。『報告通り来てみれば、スゴイ数の深海棲艦じゃないですか!ご無事ですか?すぐ救助します!』「どうやらあまり時間はなさそうだな…」ライオンハートはそう語ちると、シロへと手を差し伸べた。 50

2016-09-16 20:55:31
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「シロ・アケロオス=サン。君には二度助けられた。私はこの恩を返したい…どうだろう?君さえ良ければ、私の友達に、ディープ・オーダーに来ないか?」「……」シロはライオンハートの青い瞳を見た。純粋な善意からの言葉であることが分かる。「お誘い、ありがとうございます」「では」 51

2016-09-16 20:58:34
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