フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #7「桐葉隊②」

フォビドゥンフォレスト＠カクヨム投稿中 @fbd_forest

やがて完全に大型が死ぬと４人は警戒を解いた。繭の近くで助けた男を看ている姉弟２人の元へ急ぐ。 遠目では直接生死は分からなかったが、２人の様子からすると死んではいないようだ。 霜夜が体力回復薬を水で希釈して、ゆっくりと飲ませている。 「大丈夫ですか！大丈夫ですか！」 18

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霜夜が声を掛けても保葉が軽く頬を叩いても返事はない。生きてはいるが、衰弱が激しい。 「今、本部に手配して車で来てもらうところです」 保葉が不安げに将雄や桐葉を見る。将雄が霜夜と場所を変わり脈などを観る。 「血でも吸われたんでしょうか…？」 「吸われてたら死んでるよ」 19

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「佐祐里ちゃん達が助けた娘の彼氏…には見えねぇよな」 幸市が言う。彼氏は２０代の筈だ。目の前のスーツ姿の男は明らかに４０代以上だ。20人以上が捕まっていたのが事実なら、２０分の１以下の確率である。そう都合良くは行かないし、幸市達にとっては誰でも同じことだ。 20

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「どういうことだ…？」 手当てを将雄と後輩に任せ、荷物を探っていた義奥が訝しむ。 「何だよ？ヨッシー？」 義奥は軽口にも応えず、なお考え込む。 「どうした」 「…見てください」 21

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義奥は大きい石の上に布を拾げ、見つけた男の所持品をそこに並べた。サイフ、未開封のタバコとライター、車の鍵などが出てきた。 「全部スーツから出てきたものです」 他にカバンなどは見当たらない。繭の中はまだ調べていないが、あっても小物くらいだろう。 22

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更に綺麗に畳まれたレシートを広げ、風邪で飛ばぬよう免許証類をその上に重ねる。 「これがどうしたって…？」 「ここです」 義奥は免許証類の住所と、レシートに印字された店の住所、そして買い物の中身を示した。 「「………？」」 桐葉と幸市はそれらを眺めたあと互いに顔を見合わせる。 23

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「あっ！」 話の途中からこちらを覗き込んでいた保葉が叫んだ。 「この住所！隣の県じゃない！」 「それが…？」 保葉の驚いた声に桐葉は面食らう。 「しかも西の方！…だから前で助けた娘と逆方向！分かる！？」 「そりゃそういうこともあるだろ」 24

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確かに免許証の住所は風科から西に数十キロだ。買いものをしたコンビニも近所のようだ。 「別にその辺りで攫われたと決まったわけじゃあ‥」 「それだけならノリオちゃんが騒ぐわけ無いでしょ！おバカ！」 「ええ、その可能性が高いと思います」 義奥が肯定する。 25

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「桐葉ちゃん達がおバカって可能性が？」 「おい」 「その可能性も高いですが、買ったものを見て下さい」 「おい…なんだタバコじゃねぇか」 レシート数枚のうち、一番新しいものはタバコ１個を買ったものだった。桐葉は詳しくないが、銘柄からして恐らくここにあるタバコだろう。 26

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「良いですか？…この人は、衰弱ぶりからして少なく見ても２・３日は絶食状態だったでしょう…遅くとも土曜日には捕まった筈です」 「ああ」 「このタバコを買ったのは金曜の夜、佐祐里さんが助けた人が捕まったらしき時間の１日くらい前ですね？」 「まあどっちも未確定だけどな」 27

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「金曜の夜から２４時間かけて、風科か彼女と同じ場所に行ったとすれば捕まったタイミングは一致しますが、僕は買った直後に捕まったと考えています」 桐葉は無言で続きを促す。 「何故ならタバコに手を付けてないからです」 「あとの楽しみにしてたんじゃ無ぇか？」 28

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「いえ、それはない筈です。彼は数日は吸っていない筈だと言うのにまだ臭いがする程のヘビースモーカー、買ったらすぐ1本くらい吸うはずです」 「他に吸いかけが有ったんじゃねぇか」 「吸いかけがあればポケットに入れておくでしょう」 「じゃあ自販機で買ったとか」 29

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「いえ、自販機用のカードがありません。憶測ですがポイントを貯める為にコンビニで買うようにしてたんでしょうね、ホラ」 ポイント残額の項目を指差す。 「うわ、凄」 ３０００円相当が溜まっていた。このコンビニは通常１００円で１ポイントなので３０万近く買ったことになる。 30

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「オクノリ君の説を信じるとして…そんなに長く捕まってて何で無事…とは言えないが生きてんだ？水無しで洞窟の中だろ？」 幸市は顎に拳を当てる。肘は斧に置いた右手の上だ。 「そこまでは…何とも」 「何でこんなにポイントが…」 「ポイント専売商品でもあるんですかね…」 31

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「そもそも敵の行動範囲が広過ぎるわよね…」 「まさか…」 将雄が桐葉を見る。桐葉も何かに気づいた様子で幸市や保葉を見る。 「どうしたんです？」 義奥と霜夜は意味が分からず二人で顔を見合わせる。 「いや、この件は佐祐里達には伏せとけ。後ろにだけ連絡だ。私と将雄さんがやる」 32

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ツクヨミ部隊の小型車が２台到着した。助手席がなく、後部は詰めて２人という狭さで、雪中の長距離進軍には向かないものだ。一台は生存者を乗せてすぐに引き返し、もう一台は山小屋へ向かうべく一向に随行することとなった。桐葉と将雄はその中に半分づつだけ体を入れ、後方へ通信を行った。 33

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