- Uroak_Miku
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1)ずいぶん前ですがこんな随筆を読んだことがあります。戦前に中国東北部(満州と呼ばれていた)に日本から入植して、日本の敗戦で引き揚げてきた夫婦が、何十年ぶりかでその土地に観光旅行を果たした。懐かしさで胸いっぱいのなか、現地のひとびとに中国語で話しかけたけれどさっぱり通じない。
2016-10-06 03:43:332)「おかしい。暮らしていたときはちゃんと通じたのに」 通訳さんが諭す。「その中国語では通じませんよ。きっとお二人が暮らしていたときは、まわりのひとたちが必死に意を察してくれたのでしょう。日本人に逆らったら何をされるかわからないと恐れて」
2016-10-06 03:45:115)異文化コミュニケーションにはこういうことがいっぱいあります。私自身、相手がどうしてあのときああいう反応をしたのか後になって気がついてorzになったことが何度もあります。
2016-10-06 03:48:456)ついさっき、河合塾(予備校の大手)発行の文法問題集を開けてみたんですよ。使い込んでもうボロボロなのを先日スキャンしてPDFで読めるようにしたの。で時制がらみの択一問題をざっと眺めてみました。
2016-10-06 03:50:227)問題として取り上げられる英文に間違ったものは見つかりませんでした。四択のなかに必ず正解があるようネイティヴチェックされているのも眺めていてわかる。
2016-10-06 03:51:378)けれども解説がなんというか、これではニュアンスがさっぱり理解できないじゃないかと叫びたくなるような解説がされていました。
2016-10-06 03:52:399)こんな英文が載っています。We didn't expect that she ( ) join us.(ぼくらに彼女が同行する気になるなんて予想しなかったよ)さあカッコに入る単語は四つあるうちのどれでしょう?という問題。
2016-10-06 03:54:3410)正解はwould。willでは不可、と解説されています。むろんそれでいいのですが、それではどうしてwillではいけないのかというと、時制の一致の法則によるとしか書かれていない。主節が過去時制だから従属節も時制が過去寄りに引きずられるのだ、というわけです。
2016-10-06 03:57:2112)「she will join us.は『彼女は絶対俺らに同行するだろう』。ところが主節が We didn't expect(俺らは予想していなかった)と宣言しているのだから『あいつ絶対同行するぜ』では論理の不整合を起こすわけです」。
2016-10-06 04:00:5913)「そこで will を would にする。ただしこの would は will の過去形ではありません。will は「絶対~する気だ」なので、それを和らげるために would に変形します。この場合の would は過去形でもなく仮定法でもありません」。
2016-10-06 04:03:5714)「主節との論理的不整合を和らげるための would ですので、どちらにも分類されません。分類できない曖昧さゆえに、主節と従属節のあいだをうまく取り持ってくれるのです」。
2016-10-06 04:05:1916)こんな問題も載っています。I don't know when she (will come), but I will tell you when she (comes). カッコに部分に四択から正解を入れる問題で、ここではあらかじめ正答を入れてあります。
2016-10-06 04:07:5717)有名問題ですね。センター試験で毎年必ずといっていいぐらい頻出です。「彼女がいつやってくるかわからないけれど、やってきたら教えてあげるよ」。
2016-10-06 04:08:5818)will には「意志」のニュアンスがあります。she will come. なら「彼女は絶対やってくるであろう」とも取れるし「彼女は絶対来る気だ」とも取れる。
2016-10-06 04:10:3819)高校の文法では「時や条件の副詞節では時制が過去寄りにずれる」と教わります。「名詞節のときはこの法則が効かない」とも。
2016-10-06 04:12:2320)この説明は本当はおかしい。時や条件を表す副詞節でも will を使うことが実際にはいくらでもあるのだから。If I'll be late, I'll call you.(もし残業で居残ることになったら電話入れるから)など。
2016-10-06 04:14:5121)I don't know when she (will come), but I will tell you when she (comes). についてはどう教えるべきか。
2016-10-06 04:15:4622)I don't know when she (will come), については説明するまでもないでしょう。「彼女は絶対やってくるとして、それがいつになるかはわしゃわからん」。
2016-10-06 04:16:5723)but I will tell you when she (comes). これは生徒が納得するよう説明するのにコツが要ります。動詞の現在形は実は「現在」ではなく「状態」、それも「日々の状態」を表すことをまず事前にしっかりわからせておく必要があって、その上でさらに説明する。
2016-10-06 04:18:5724)ある映画のなかで、ザルツブルグのある殿様(一応聖職者です)が自分の家臣に You have leave to try.(そなたは試みる許可を得ている)と重々しく語る場面があります。吹き替えでは「やってみるがよい」でした。このほうがニュアンスが出る。
2016-10-06 04:21:2525)leave はこの場合は「殿様のお許し」ですね。try は「(そなたの息子をウィーンから連れ戻す)試み」。この家臣の息子が、殿様と仲が悪くてとうとうウィーンで皇帝陛下の側についてしまった。殿様は皇帝とはかねてより不仲で、それでさらに腹を立てた。家臣は息子と殿様の板挟みに。
2016-10-06 04:23:56