第13話 輸送任務と黒い波 エピローグ

脳内妄想艦これSS 独自設定注意
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

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2016-10-11 19:30:58
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__ 埃を被った通信機が動くとき… __

2016-10-11 19:32:08
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__ 第13話 輸送任務と黒い波 エピローグ __

2016-10-11 19:32:16
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13-E-1 オリョール海から佐伯への航路。傾いていく日を横目に、潜水艦娘達がゆっくりと進んで行く。 うち一人が、もう一人を抱えるようにして泳いでいるためだ。 「ん…うぅ…」 「気付いたでちか、新入り」 気を失って抱えられていた艦娘…伊29がその途中で漸く目を覚ました。

2016-10-11 19:33:53
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13-E-2「ここは…あ…痛っ…!」 目覚めて直ぐに伊29を襲ったのは、左足の激痛。 …ぼんやりと思い出してくる。正体不明の怪物に掴まり、逆さ吊りにされて、皮膚を溶かされて… 「まだ下手に動かしちゃダメなのね。最低限の応急処置はしたけど…普段とはちょっと違う傷だし」

2016-10-11 19:34:48
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13-E-3「…イク、有難う」 伊29はぎこちない微笑みを伊19に返す。 「ニム、ほんとにだいじょーぶ?何だかぼんやりしてない?」 「大丈夫、大丈夫だよ…」 呂500も心配そうに聞いてくる。 …確かに足は痛む。 だがそれ以上に、もやもやとした気持ちが伊29の心を包み込んでいた。

2016-10-11 19:36:44
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13-E-4「(なになに…何なのコレ…)」 フラッシュバックしてくるのは、宙吊りになった伊26を助けるために綾波が狙撃を行った瞬間のビジョン。 綾波の研ぎ澄まされた目、火を噴く銃口、爆音、そして伝わってくる熱… あの一瞬の出来事が、伊26の頭の中では繰り返し再生されていた。

2016-10-11 19:39:55
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13-E-5「それにしてもあの艦隊…『鳶』?ゴーヤ達とはまた違った意味で面倒を抱えてそうな艦隊だったでち」 「そーなの?でっち」 伊58は、彼女らとの別れ際に頼まれた事を一つ一つ思い出す。 今回の任務中に見た事は絶対に口外しない事。 そして、報告は可能な限り誤魔化す事。

2016-10-11 19:41:39
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13-E-6「怪我人も出てるのに無茶言ってくれるでち。帰るまでにどうやって誤魔化すかを考えておかないと…」 また一つ厄介な仕事が増えた、という顔で伊58は溜め息をついた。 「でも、あの人達とはまた会いたいのね!その時はお礼もしなくちゃ!」 伊19は先の苦労を感じさせない明るさだ。

2016-10-11 19:43:14
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13-E-7「そう…でちね。借りはちゃんと返すでち」 呂500と伊19の疲れをものともしない明るさに、伊58の顔にも少し笑顔が戻って来た。 …そんな中、伊26は静かに眠りに落ちていた。いや、寝たふりをしていたのだ。 とても笑顔にはなれないざわつく心を、仲間に気取られないように…

2016-10-11 19:44:53
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13-E-8「はぁあああ~…」 …所変わって、監獄島のドック。 明石の『芸術作品』から流れ落ちる熱い湯が、体の疲れと緊張感をようやっと解きほぐしてくれる。 「今回ばっかりは死ぬかと思ったわ…」 中でもとびきりぐったりとした様子で浴槽の縁に突っ伏しているのは五十鈴だ。

2016-10-11 19:46:47
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13-E-9 怪物に溶かされた右肩の傷は、既にゆっくりと塞がりつつある。 他のメンバーよりは長風呂になるだろうが、きちんと完治するだろう…これが艦娘のカラダというものである。 …そんな万能の湯も心労は癒せないし、心の傷も塞げない。 そして『疑念』も取り去ってはくれない。

2016-10-11 19:48:12
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13-E-10 作戦は成功し、潜水艦達も全員生還した。五十鈴が出発前に掲げた、当初の目的は達したと言える。 その功績とは対照的に湯船の四人はどこか浮かない表情だ。 浴場には流水の音が静かに響くばかりである…。 「…ねぇ、兄さん」 やっと口を開いたのは綾波…綾香だ。

2016-10-11 19:49:47
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13-E-11「…どうした」 浜風も大智に意識を切り替えて応える。 浜風と大智のどちらの意識が前に立っているかを綾香が直感で判別できるように、大智にも分かる事がある。 『兄さん』と切り出してくる時には、浜風としての自分ではなく、大智としての自分に話を聞いてもらいたい時なのだ。

2016-10-11 19:51:29
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13-E-12「あの化け物って、結局何だったんだろうね?」 「俺も考えてたんだけど…さっぱり分からないな。あんなのが何匹も居てたまるかとは思うんだが」 合点がいかないのは辛くも撃破した先の巨人の事である。 「深海棲艦もアイツに攻撃してたよね…共通の敵、なのかな?」 「どうかな…」

2016-10-11 19:52:02
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13-E-13「気になるのはアイツの事だけじゃないわよ」 五十鈴は頭を持ち上げ、ぼんやりと浴場の入り口の方を見たままで口を挟む。 「アイツが崩れて消えた後…提督は先ず潜水艦達への口止めを頼んだ。それは分かる。でも、その後に回収した…アイツの本体から出てきた部品?何だったのかしら」

2016-10-11 19:54:28
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13-E-14 巨人の崩壊後、風見は4人に妙な指示を出した。 『怪物の崩れた跡を探し、変わった部品のような物がもし排出されていたら回収する事ー』 …そして、風見の言う通り巨人の居た辺りの海上に、用途の分からぬ部品が浮いているのを発見し、回収したのだ。

2016-10-11 19:57:17
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

13-E-15「深海棲艦でさえ跡形も無く溶けてたって言うのに、本体の『脳』にしろあの部品にしろ何で溶けないの?…っていうか、何で提督はそれを知っていたのよ」 「…聞いても教えてくれねぇとは思うがな」 照海は照海で溜息をつく。 「アイツは手の内を明かす奴じゃねぇぞ」

2016-10-11 19:59:26
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

13-E-16「しかし…なんだ。深海棲艦でさえ跡形もなく、か…」 …全員の顔が晴れない理由はもう一つ。 最初の輸送艦隊、そして2度目の輸送艦隊が痕跡も無く消えてしまった謎。 その真相が、今なら火を見るよりも明らかだったからだ。 「…」 その後は、誰も口を開こうとはしなかった。

2016-10-11 20:03:38
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

13-E-17 ガチャリ。 重たい金属の錠前が解かれ、長い間開けられる事の無かった扉が部屋の中に久方ぶりの空気を送り込む。 埃の積もった絨毯を踏みしめてその部屋に入室したのは…風見玲二。 彼は扉を閉め、暗い部屋で通信機の電源を入れると、後は何もせずそのままじっと待った。

2016-10-11 20:08:31
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13-E-18 …30秒、1分、2分… 3分が経過したころ、不意に通信機がザリザリと音を立て始め… 『風見、貴様!どういうつもりだ!』 密閉された部屋に怒声が響き渡った。 「どうもこうもない。アンタに伝えなくてはいけない事が出来ただけだ、飯塚大佐」 続けて、鼻で笑う音が聞こえる。

2016-10-11 20:11:48
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13-E-19『お前の時間はそこで止まっているという訳か。私の階級は今は准将だ。口を慎め、風見ー』 「御託はどうでもいい。飯塚准将…『穀潰し』の情報が深海棲艦に漏れたようだ」 … 飯塚准将の高慢な声が途切れ、部屋に静寂が戻る。 言葉を失っているのが通信機越しにもはっきりと分かる。

2016-10-11 20:13:42
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13-E-20『何をバカな、アレは既に抹消された存在だ…戯言なら許さんぞ、風見玲二ー』 「オリョール海で輸送艦隊が2艦隊消失した怪事は当然耳に入っているな?…ウチの艦隊が囮になって敵を炙り出した。特徴からして『穀潰し』で間違い無い』 准将の言葉には耳も貸さず、風見はまくし立てる。

2016-10-11 20:16:40