大東亜戦争末期の食糧事情と継戦能力

虎落録 @Fuyo1945

四、輸送力及び通信 （イ）　汽船輸送力については使用船腹量急激に減少して現在約百万総トンなるも、而も燃料の不足、敵の妨害激化及び荷役力の低下等の為、著しく運航を阻害されあり。　#芙蓉録

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もし、最近に於ける損耗の実績を以て推移すれば、本年末に於いては、使用船腹量は殆ど皆無に近き状態に立ち至るべし。且つ大陸との交通を確保し得るや否やは、沖縄作戦の如何に係る所大にして、最悪の場合に於いては六月以降殆ど其の計画的交通を期待し得ざるに至るべし。　#芙蓉録

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機帆船輸送力もまた燃料不足及び妨害に因り急激に減少する所大なり。　#芙蓉録

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（ロ）　鉄道輸送力は最近に於ける車両は施設等の疲弊に加え、空襲被害に因り逐次低下しつつあり。今後、敵は交通破壊空襲を激化すべく、為に鉄道輸送力は各般の努力を尽くしつつあるも、前年度に比し二分の一程度に減退すべく特に中期以降、一貫性を喪失し局地輸送力となる所大なり。　#芙蓉録

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（ハ）　陸上小運送力並びに港湾荷役力は、資材燃料及び労務事情並びに運営体制の不備等に伴い、末端輸送及び海陸輸送の接続のみならず、鉄道及び海上輸送自体に対しても重大なる隘路を形成しつつあり。なお、港湾については今後敵襲に寄り、その機能を停止せらるる所大なり。　#芙蓉録

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（ニ）　通信は資材要員等の事情並びに空襲被害に因り、その機能を阻害せられつつあり。今後、空襲激化等に伴い、本年中期以降に於いては、各種通信連絡は著しく困難となるべし。　#芙蓉録

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五、物的国力 （イ）　鉄鋼生産は主として原料炭及び鉱石の輸送入手難に因り、現在概ね前年同期に比し四分の一程度に陥り、鋼船の新造補給は、本年中期以降は全然期待し得ざる状況なり。なお、所在資材の活用戦力化についても実行上、多大の困難を克服するの要あり。　#芙蓉録

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（ロ）　東部及び西部地域に対する石炭の供給は、生産及び輸送の減少に伴い著しく低下し、空襲被害の増大と相まって中枢地帯の工業生産は全面的に下向しつつあり。中期以降の輸送の状況に依りては、中枢地帯の工業は石炭供給の途絶に依り相当部分、運転休止となる所大なり。　#芙蓉録

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（ハ）　大陸工業塩の還送減少に因り、曹達を基盤とする化学工業生産は加速的に低下しつつあり、特に中期以降原料塩の取得は危機に直面すべく、之が為に軽金属及び人造石油の生産はもとより、火薬、爆薬などの確保にも困難を生ずるの結果となるべし。　#芙蓉録

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（ニ）　液体燃料の供給は、今後日満支の自給に待つの外なく、貯油の払底と増産計画の進行遅延に伴い、航空燃料等の逼迫は中期以降戦争遂行に重大なる影響を及ぼす情勢なり。　#芙蓉録

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（ホ）　航空機を中心とする近代兵器の生産は、空襲の激化による交通及び生産の破壊並びに前記原材料、燃料などの逼迫のため、在来方式に依る量産遂行は至難となるべし。　#芙蓉録

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六、国民生活 （イ）　食料の逼迫は漸次深刻を加え、本端境期は開戦以来最大の危機にして、大陸糧穀及び食糧塩の計画輸入を確保し得るとも、今後国民の食生活は強度に規制せられたる基準の糧穀と生理的必要最小限度の塩分を、漸く摂取し得る程度のなるを覚悟せざるべからず。　#芙蓉録

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更に海外輸移入の妨害、国内輸送の分断、天候及び敵襲などに伴う生産減少などの条件を考慮に入るるときは、局地的に飢餓状態を現出するの所あり、治安上も楽観を許さず。なお、来年度の食糧事情が本年度に比し、更に深刻化すべきは想察に難からず。　#芙蓉録

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（ロ）　物価騰貴の趨勢著しく、闇の横行、経済道義の退廃等に依る経済秩序紊乱の傾向が漸く顕著となり、今後の推移に依りてはインフレーション昂進を極め、遂には戦時経済の組織的運営を不能ならしむるの所なしとせず。　#芙蓉録

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判決 国力の現状以上の如く。加えて敵の空襲激化に伴い、物的国力の充実極めて困難なる状況にありといえども、これ最大の隘路は生産意欲並びに敢闘精神不足と、国力の戦力化に関する具体的施策の不徹底なるとに存す。　#芙蓉録

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之が為、国民の戦意特に皇国伝統の忠誠心を遺憾なく発揮せしむると共に、戦争遂行に必要なる最小限の戦力維持を可能ならしむる如く、八、九月頃までに完了せしむることを目途とし、協力なる各種具体的施策を講ずるの要あり。（了）　#芙蓉録

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1945年8月9日14:30 第一回臨時閣議開催。長崎への原爆投下が報告される。東郷外相及び米内海相が、ポツダム宣言受諾は一条件（国体護持）のみとすることを提案するも、阿南陸相は四条件案を譲らず 　#8月9日　#芙蓉録

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阿南陸相「会戦では負けているが戦争では負けていない、陸海軍間の感覚が違う」 米内海相「敗北とはいはぬが、日本は負けている」 阿南陸相「負けているとは思わぬ」 米内海相「勝つ見込みあれば問題ない」 #芙蓉録

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阿南陸相「ソロバンでは判断出来ぬ。とにかく国体の護持が危険である。条件付きにて国体が護持出来るのである。手足をもがれてどうして護持出来るか」 #芙蓉録

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東郷外相「四条件では相手は談判に入らざるべし。持込みにても相手は黙殺すべし」 米内海相「物心両面に於て戦争遂行能力ありや？」 　#8月9日　#芙蓉録

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豊田貞次郎軍需大臣「八月、輸送面より見て輸送に確信ありや？然らざれば駄目なり。六月中旬より空襲激化し、七月青函船撃沈され、爾来汽車も裏日本も瀬戸内海も輸送力低下し、青函一カ月十六万トンの石炭は十万トンを缺き、青森の貯炭十万トンを以て一時凌ぎをしている」 #芙蓉録

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豊田軍需相「軍需工場では安全感を失ひ、政府にも軍にも信を置かず。飛行機は七月最も悪く、二月より下回っている。原因は中小都市の工場爆破のためである。運輸省の盡力により疎開の為の十万両中八万両余は疎開済みとなった。併し駅よりの小運送に停頓している」 #芙蓉録