#ダークエルフ王国見聞録　その４ ～ゴブリン退治～

へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「あれは、蝙蝠を使って、決まった歩数ごとに洞窟内の枝分かれや戦闘の有無を連絡してるんですよ。私は蝙蝠をうまく操れないんですけどね～」 同里の獣使いが解説してくれる。 捜索が終わるのを待つ間、私は小鬼達の装備を検分することとした #ダークエルフ王国見聞録

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女戦士の打ち取った大将首の戦士が着用していた鎧兜はその作りの立派さから騎士階級のものであろうが、その他の者たちの身に着ける装備はせいぜい召集兵に貸し与えられる類の武具である。彼らの戦力の高さとエルフの土笛の存在と合わせ、私はある可能性を思い付く #ダークエルフ王国見聞録

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「学士殿、捜索が終わった。存分に中を検分されるとよい。誰か護衛と案内を頼めるか」 将が告げると、半月刀と褐色の肌を小鬼達の血で濡らす東の里の女剣士が挙手する 「ふふ、学士殿、私が案内して差し上げますわ」 近習から経路の描かれた紙を受け取りつつ、手招きする #ダークエルフ王国見聞録

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「ちっ、私の長刀は狭い所では振るえぬ。あの女狐の余計な言には耳を貸すなよ」 大将首を討ち取った満足から一転、不機嫌そうな表情で同里の女戦士が私に告げる。 「まぁ！これだから、軍人上がりは怖いですわぁ」 挑発的な瞳で女剣士が彼女を睨み返す #ダークエルフ王国見聞録

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私が持つ松明と女剣士が浮かべる霊光とを頼りに洞窟の中を進んでいく。所々に捜索隊によってトドメをさされたと思しき小鬼達の亡骸が放置されている。 「ふふ、わたくし、血を浴びてなんだか興奮しておりますわぁ」 舌舐めずりしながら体を密着させてくる女剣士 #ダークエルフ王国見聞録

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私の方は小鬼達の窟の中にいる緊張と恐怖でそれどころではない。 「ところで、中に人間の女が囚われていたら学士様はどうされるんですか？ふふふ」 妖しい台詞を耳元で囁く彼女に、中に居るのはおそらくエルフの女性であろうと答える。 「あら、それはまた何故・・・？」 #ダークエルフ王国見聞録

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しばらくすると進行方向にダークエルフの霊光が複数浮かんでいるのが見え始める。そこに近づくと、洞窟の中に広い空間が形成されていた。おそらくは元々この窟の持ち主であった土流の寝床であったのであろう。その空間で先行した捜索隊が我々を待っていた。 #ダークエルフ王国見聞録

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彼らの足元では、略奪品であろう様々な装身具を身に着けたゴブリンの長が手ひどく痛めつけられた上、縄で縛られて転がされ、苦悶の声を漏らしている。そしてその奥には5名ほどの女性が拘束されたままになっており、私の予想通りに彼女たちはエルフの女性であった。 #ダークエルフ王国見聞録

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「下劣な人間どもめ、お前たちのせいで私たちは・・・！野蛮な黒エルフどもめ、人間などと組んで、恥を知れ！」 埃に汚れた顔を憎悪と怒りの表情で染め上げ、首枷をはめられた女エルフが私を睨みつける。無言を通す他の女エルフ達も同様の表情を示している #ダークエルフ王国見聞録

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「助けてもらった分際で、なんだその雑言は、白エルフめ！」 激高した女剣士が女エルフの胴を足蹴にし、倒れた彼女の顔を踏みつける。 「・・・普段たいそうなご説法を垂れているわりには無力だな、白いの」 魔道兵の長も冷ややかにその光景を見守っている。 #ダークエルフ王国見聞録

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私は広間に残された物品の検分を一通り終え、捕縛された小鬼の酋長と慰み者となっていた女エルフ達と共に、我々は地上へと戻る。 「むっ、白エルフどもが捕えられていただと？如何なる事情があるのだ？」 私を一番に出迎えた女戦士が彼女らを見て尋ねる。 #ダークエルフ王国見聞録

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おそらく、事の顛末はこうであろう。諸侯連合に連なる伯爵家のある騎士が、金に目がくらんだか、自らの性欲を満たすためか、エルフ狩りの奴隷商人と結託した。奴隷狩りの傭兵に伯爵家の兵装を貸し与え、正規の軍事行動として国境線を合法的に超えてエルフの領国に侵入する #ダークエルフ王国見聞録

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むろん、まともな戦闘などせず、奴隷商人の持つ禁制の土笛“エルフの術封じ”を活用してエルフの村を焼き討ちし、捕えた女エルフを「捕虜」として連行する。自らの領国に戻って、その女エルフを売りさばくなり、性奴隷にするなりの算段であったのだろう。 #ダークエルフ王国見聞録

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襲撃を成功させ、帰路に就く彼らを襲ったのが、今は骸の山となったゴブリン達である。首枷をはめられた女エルフ達と傭兵崩れと田舎騎士の装備、そして件の土笛を奪い、正規軍の来る前に伯爵家の領土からさっさと逃げ出した。彼らは敗残兵にしては戦力が充実しすぎている #ダークエルフ王国見聞録

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伯爵家ではこの件のもみ消しで必死であろう。彼らの紋章の不正使用に、協定で禁止された奴隷狩りへの所属騎士の加担、休戦中のダークエルフ王国への装備の流出、いずれも取り潰しを免れえない行為である。奴隷狩り一行の敗残兵はいたとしても、間違いなく生かされまい。 #ダークエルフ王国見聞録

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このことを告げると、族長に言い含められていた外交上の懸念が消え、将は安堵したようであった。 「よし、小鬼どもの資材と奴婢は接収。小鬼の生き残りは首を刎ねて野に晒せ」 酋長以下数名の小鬼達が哀れな悲鳴を上げる中、撤収作業が開始される。 #ダークエルフ王国見聞録

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東の里に戻ると既に夜の帳が下りていたが、風呂が焚かれ、宴席の用意がされていた。軍勢に出た重軽傷者達も命に別状はなく、そこかしこで祝いの酒が注がれた。族長から下賜されたという上等の葡萄酒が、里の者が用意した山羊の羹が惜しみなく兵達に振る舞われる。 #ダークエルフ王国見聞録

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晴れやかな表情で酒を酌み交わすダークエルフの兵達に先程の機転を同里の獣使いと合わせて褒め称えられ、また大将首を屠った女戦士の身振り手振りを交えた功名話にほろ酔い気分の皆が賑やかに拍手喝采を加える。戦の興奮冷めやらぬ中安堵と歓喜が皆の表情にあふれている。 #ダークエルフ王国見聞録

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厠に行くため宴の輪を離れた私は、広間の隅で繋がれ、粗末な木皿に盛られた雑穀の粥と塩菜をあてがわれた女エルフ達を目にする。篝火にうっすらと照らされ、何も語らず何も示さない表情となった彼女たちがこれからどう処遇されるのか、それだけがこの討伐の心残りであった #ダークエルフ王国見聞録

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ゴブリン討伐編、おしまい～

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この後、ほろ酔い女ダークエルフの将が 「さ、さっきの機転は、か、感謝しているぞっ」ともじもじ＆紅潮しながらデレる展開とかは別にないです （たぶん、「此度も大勝、大勝！」って言いながら晴れやかフェイスで酒飲んでる