- funkastic_8er
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26 彩香や裕くんに見つかったら すごく心配させてしまうから 見つからないように カバンに隠した (やだな・・・辛いな) だけど誰に言っていいかわからなくて (どうしよう・・・) 学校が どんどん嫌になっていった #僕らに愛を
2016-10-08 20:23:2927 そんなある日 席替えがあって 『吉川、よろしくな』 入学式以来2度目の 安田君の後ろの席になった 「うん・・・よろしく」 それだけで 少しワクワクが生まれた 『お前めっちゃ本読んでんのな?』 ひとりぼっちの休み時間は ひとりじゃなくなった #僕らに愛を
2016-10-08 20:24:1528 安田君も 休み時間はいつもひとりで ヘッドフォンで音楽を聞いたり 雑誌を読んだりしてた 「安田君は、いつも何聞いてるん?」 『ハイスタ。分かる?』 「・・・ごめん、わかんない」 『せやろなw聞いてみる?』 そう言うと 片方を私の耳に当ててくれた #僕らに愛を
2016-10-08 20:24:3229 「英語や・・・歌詞わからん」 『わからんでええんよ 音を楽しみなさいw』 「うん、確かに・・・音、かっこいい」 『せやろ?』 ・・・へぇ こんな風に笑うんだ 笑うとこちゃんと見たの 初めてかも 『・・・ん?』 (あ、思わず見入ってもーた) #僕らに愛を
2016-10-08 20:25:1430 「あ、あの、ごめん!」 慌てて離れると その様子を、ふーんって見つつ 『吉川ってさぁ・・・すぐ謝るのな』 って 「嘘?え、ごめ・・・」 『ほらw』 「あ///」 指摘されて恥ずかしくて 真っ赤になってると ひとしきり笑った安田君がこう言った #僕らに愛を
2016-10-08 20:25:3331 『吉川は、なんも悪い事してへんよ だから、そんな謝らんでええ。 そんな、ビクビクせんでええんよ?』 その声が ひどく優しくて ────キーンコーン・・・ 『げ、もう授業か』 前を向いて 私に背を向けた安田君に バレないように 声を殺して泣いた #僕らに愛を
2016-10-08 20:26:1232 何も言ってないのに 安田君は 私が辛い事を知っていて さりげなく それに合わせた言葉をくれている (そんなわけないのに) そんなわけないんだけど でもやっぱり嬉しくて もっと知って欲しい もっと私も知りたい そんな感情が強くなっていった #僕らに愛を
2016-10-08 20:26:4233 「そう言えば安田君って 何処で昼ご飯食べてるん?」 しだいに 私から 彼の事を聞くようになった 『晴れてる日は屋上。 誰もこーへん、いい場所見つけてん』 「へぇ・・・誰もおらんのや」 正直、いいな と思った #僕らに愛を
2016-10-08 20:27:0634 彩香も裕くんも好きだけど 校内で一緒に居るのは辛かった だから いいなって・・・ 『・・・吉川も、そこで食べる?』 「え」 『他の奴に言わへんなら 吉川には教えたってもええよ』 「い、言わない!!」 『おっけ、じゃあスマホ貸して』 #僕らに愛を
2016-10-08 20:27:2835 「え?スマホ?」 不思議に思いつつ差し出すと 慣れた手つきで操作する そして 『おっけ。あとでLINEする』 「へ?え!?」 『だって 誰かに聞かれたら嫌やからw』 ────そのまま、授業が始まって 油断してたら スマホが振動した #僕らに愛を
2016-10-08 20:27:5036 (え、あ!) キョロキョロと周りを確認して こっそりそれを見ると 【ここ】 って一言と 手書きの地図の画像が送られてて 【わかった!今日行ってもいい?】 そう送り返すと 目の前の安田君が 私に背を向けたまま こっそりOKサインをしてくれた #僕らに愛を
2016-10-08 20:28:0237 それを見届けてほぼ同時に 彩香にもLINEする 【今日、昼ご飯 別の子と食べてもいい?】 【え、いきなりどうしたん?】 【なんか、たまにはと思って】 【了解!こっちは気にしないでー】 (やった・・・) そこから先の授業は 頭に入ってこなかった #僕らに愛を
2016-10-08 20:28:1538 そして 待ちに待った昼休み 『先行っとく』 小声でそう言って 出ていく安田君の仕草に ドキドキしつつ (よし) 一呼吸おいて 私もその場所へ [生徒立入禁止] の札を軽々越えて先を行く彼に おどおどしながらついていくと ──────バン・・・ #僕らに愛を
2016-10-08 20:28:2739 扉を開けたその向こうには 「うわぁ・・・」 自分の住んでる街が 何にも邪魔されず広がっていて 『いらっしゃいませ 特等席へようこそw』 安田君が言う通りそこは まさに特等席だった 「すごい・・・一望できる」 『せや。だから好きやねん』 #僕らに愛を
2016-10-08 20:28:3940 ポンポンと促された場所に座って 『いただきまーす』 「・・・いただきます」 お弁当を食べ始める (うわ・・・なんだろこの感じ) 何も 誰の人の目も気にせず過ごせる (それだけでこんなに楽なんだ) 『吉川の弁当旨そうやなぁ』 「ん?え!?」 #僕らに愛を
2016-10-08 20:31:1741 『俺、パンだけやねんな? だから・・・唐揚げちょーだい♡』 「え!え!?」 許す間もなく あっという間に一つつまんで 『んぉ、んまー!』 喜ぶもんだから 「もぉ・・・」 許すしかないじゃない ────と、安田君越しに 「あ!小学校や!」 #僕らに愛を
2016-10-08 20:31:5142 あまりに夢中で その時の安田君の表情を見逃していた 「あれね?私の小学校なん! そっか・・・ここから見えるんやね!」 『そう・・・みたいやな』 安田君は返事をするだけで そちらを見てくれず 黙々とパンを食べ始める 「・・・安田君?」 『ん?』 #僕らに愛を
2016-10-08 20:32:0943 「なんか・・・嫌なこと言った?」 『んにゃ。ちょっと俺の ヤンチャな小学校時代を思い出して がっかりしてもーてんw 吉川が気にすることちゃうよ』 その表情は いつも通り優しくて ほっと胸をなでおろした 「でもあれやね 安田君、昔からヤンチャそうw」 #僕らに愛を
2016-10-08 20:32:3744 『どーゆう意味やねんw』 「なんとなく?」 『しばくで?』 「こわーいw」 そんな風に 喋りながら過ごしていると 時間はあっという間で・・・ 『吉川、お前先戻り? 一緒に出てったら 何かとめんどいやろw』 「あ・・・確かに・・・」 #僕らに愛を
2016-10-08 20:33:2345 そそくさと片付けつつ 「あ・・・またさ しんどくなったらここに来ていい?」 何気ないふうに聞いてみる 内心は 断られたらどうしようって 心臓バクバクなのに そしたら・・・ 『ええよ。吉川なら』 って 「やったぁ、ありがとう!」 #僕らに愛を
2016-10-08 20:33:3346 機嫌よく その場を離れようとした瞬間 『せやけど・・・』 グイッと肩を掴まれて一言 『他の奴らには マジで内緒な? 俺らだけの・・・秘密やで?』 その瞬間 心臓が ドクンと大きな音をたてて 「わ、わかった」 私はその場から飛び出した #僕らに愛を pic.twitter.com/WZZFrfeZYR
2016-10-08 20:33:5547 早足で教室に向かう間 心臓は鳴り止まなかった それが 自分が安らげる場所を 見つけた事への高揚感からなのか それとも 安田君の あの目が あの声が 私の全てに焼き付いて 離れないからなのか ────1つだけ確かなのは 私 安田君が 好きだ #僕らに愛を
2016-10-08 20:34:4348 その日を境に 私は 毎日じゃないけど そこに行くことが増えた 初めの頃は月2.3回 それが週1回 3日に1回 間隔が狭まるうちに 確実に・・・歯車が狂い始めていた 《今日も栞乃おらんの?》 ひとり学食で ご飯を食べる彩香のもとへ #僕らに愛を
2016-10-08 20:34:5749 〈そ。今日も別〉 現れたのは裕くんだった 《寂しないんか?》 〈んー、そりゃまぁ 寂しくもあるけど・・・ でも栞乃の世界が広がってるなら 邪魔したくないやん?〉 そのフレーズに 裕くんはピクリと眉間にシワを寄せる 《栞乃は・・・誰とおんねん》 #僕らに愛を
2016-10-08 20:35:0650 〈んー? はっきりとは詮索してないけど〉 《心当たり・・・あんねやろ?》 〈あるっちゃ、ある〉 《もったいぶらんと言えや》 すると彩香は ふうと一息ついて 〈たぶんやよ?〉 そう前置いてから その名前を口にした 〈同じクラスの、安田章大くん〉 #僕らに愛を
2016-10-08 20:35:13