アイヌの伝統文化を継承するためになにをすべきか? にかんする研究者の提言

アイヌ文化は観光地で見世物として細々と継承されてきたと思われているが、それは違う。過程や地域コミュニティ脈々と受け継がれてきたし、いまも受け継がれている。伝承の場がどこにあったのかを知ることで、よりよき支援の方法が見えてくる。というアイヌ文化研究者の提言。
3
丹菊逸治 @itangiku

「人種」なんてものは存在しない。DNAで「人種」を定義することもできない。それはフィクションなんである。 twitter.com/108benispring/…

2016-11-02 15:45:41
丹菊逸治 @itangiku

先住民族はずーっと長いこと世界のあちこちで「お前たちは民族ではない」「お前たちには自治の資格がない」と言われ続けてきた人々である。だからこそ現在のカナダでファースト・ネイションズ(民族)と呼ばれ、国連宣言でピープルズ(民族)と呼ばれることに意味があるのだ。

2016-11-02 16:31:15
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「お前たちは民族ではない」と言われ続けてきた世界の先住民族。現在のカナダでファースト・ネイションズ(民族)と呼ばれ、国連宣言でピープルズ(民族)と呼ばれる。アイヌ民族が「民族」としての地位を再確認するのはそういう世界的な動きの一環である。

2016-11-02 16:37:51
丹菊逸治 @itangiku

「人種」概念の擁護としてはこういうものがある。ujsnh.org/activity/essay… だが、これもよく読めば「生物学では他にもあいまいな概念があるじゃないか」と言っているだけで、やはり基本的に社会的な概念であることを認めている。

2016-11-02 17:00:17
丹菊逸治 @itangiku

アイヌ文化は観光地で継承されてきたのではありません。むしろ観光地では文化の継承はほとんど行われなかった。基本的に文化伝承の主役は家庭や地域コミュニティだったのです。

2016-11-02 19:21:20
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku それは博物館や大学でも同じです。アイヌ文化は観光地、博物館、大学などで継承されてきたのではありません。そういった場所で文化の継承はほとんど行われなかった。基本的に文化伝承の場は家庭や地域コミュニティだったのです。

2016-11-02 19:23:19
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku このことはちゃんと言っていかなければならない、と考えるようになりました。伝承の場はどこにあったのか。どこでどのように伝承が行われてきたのか。そういう基本的な情報を一般に向けてちゃんと伝える必要がある。

2016-11-02 19:27:46
丹菊逸治 @itangiku

保存会の在り方も多様ですが、多くの保存会では基本的に舞踊の伝承が主目的であり、伝統的な歌唱法の伝承はしていません。RT

2016-11-02 19:48:22
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 家庭や地域コミュニティの中で行われてきた伝承活動を、それ以外の仕組みで行うように移行するのはものすごく難しいことです。少なくともアイヌ伝統文化についていえば、ほとんどの文化的要素について失敗しています。

2016-11-02 19:51:42
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 世界を見渡せば、先住民族の伝統文化について「家庭内・コミュニティ内で継承されてきたものを、学校など別の仕組みで継承しようとして失敗する」というのは珍しいことではありません。

2016-11-02 19:54:15
丹菊逸治 @itangiku

「アイヌ文化伝承が観光地ではなく家庭やコミュニティで行われてきたこと」はしっかり言っておかなくては、書いておかなくては、と思うようになりました。ここが誤解されると「観光地や博物館を支援することで、伝承活動を支援すればいい」という誤った方針に結びつきかねないからです。

2016-11-02 21:14:23
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku アイヌ語だって生きています。でもそれは、博物館や大学、観光地においてではありません。アイヌ語弁論大会(「イタカンロー」)において、審査員の総評がアイヌ語で行われたこともありました。共同体で受け継がれてきたものが顔を出すのです。

2016-11-02 21:30:32
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「誤ったアイヌ事業」は問題です。国家予算に占めるアイヌ関連予算の割合は決まっており、基本的に増額はありません。何かにお金をかければ別の何かを削ることになります。博物館を作ることで、生活館の維持や経済格差・学歴格差是正のための予算を削ることになりかねない。

2016-11-02 21:55:01
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku でも、こういうことはアイヌ自身は言いません。アイヌ文化活動をしているアイヌは特に言わない。だって、文化助成政策に文句をいえば、助成対象から外されるからです。

2016-11-02 21:59:46
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 研究者だって私のようにツイッターでこんなことを書いていれば、アイヌ文化関連事業からは外されます。私に限らず、アイヌ語研究をしている人間は中心メンバーにはなれない。文句ばっかり言うからです。博物館てのは「文句を言ってはいけない職場」です。役所ですから。

2016-11-02 22:03:31
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「博物館、大学、観光地を支援しても実際には文化伝承の支援にはならない」とすると、では何をどう支援すればいいのか。総論としてはアイヌ民族が自分自身で行っている文化復興運動を「邪魔しないように支援する」ということになりますが、これはケースバイケースです。

2016-11-02 22:21:38
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「アイヌ伝統文化の支援」といっても、何を支援するかによってやり方は異なるでしょう。例えば芸能であれば、何らかの形で現在の数少ない(本当に少ない)文化伝承者を支援して「秘儀を教えてもらう仕組み」を作らなくてはなりません。現行の枠組みではありません。

2016-11-02 22:26:45
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku アイヌ語については、アイヌ語を支えている諸々の動きを支えることです。言語復興自体は「言語のゆりかご」とイマージョン学校で可能ですが、その前に「アイヌ語と結びついた歴史文化学習運動」を支援しておかなくてはならない。言語は良くも悪くも単独の事象ではないからです。

2016-11-02 22:35:06
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku アイヌ刺繍についていえば、別なプログラムが必要でしょう。当面の問題は刺繍作品市場の消滅、刺繍教室運営の失敗ですが、それを解決するとおそらく「アイヌ模様は誰のものか」という問題を招きます。

2016-11-02 22:44:34
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku ただ、アイヌ模様は本来は個人のものであり、適切なデザイン教育で残せるものです。これこそアマチュア向けの指導とプロ向けのデザイン教育で対処すべき事案でしょう。後者はアイヌ全体の教育問題というより、美術教育奨学金の充実が重要です。あとは知財管理の問題です。

2016-11-02 22:51:59
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku アイヌ模様を「支援」するというのは難しいのです。これは本来は売り物ではないからです。今では市場があると振興されるというものでもありません。ただ、アイヌ刺繍を購入することは、アイヌ刺繍の振興には役立たなくとも、売っている人を経済的に支援することにはなります。

2016-11-02 22:55:21
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku アイヌ模様を支援したい、というならば、一人でも多くの有望なアイヌ子弟のプロフェッショナルな美術教育をおこなうことです。100人のうち1人くらいはプロになり、活動の一環としてアイヌ模様を維持・前進させてくれるかもしれません。

2016-11-02 22:58:30
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku これは木彫でも同じです。刺繍や木彫などのアイヌ工芸は、日常のものとしても個人が作っていけばいいものです。ただ、昔のような創造性を維持していくにはプロ化も必要でしょう。一人でも多くの有望なアイヌ子弟がプロになるための美術教育を受けなくては間に合いません。

2016-11-02 23:03:07
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 「アイヌ子弟を対象とした、美大・芸大進学奨学金基金」を創設してもいいし、「基金への寄付つき」のアイヌ刺繍・アイヌ木彫に商品を設定する、などいくつかの方法があるでしょう。

2016-11-02 23:06:16
丹菊逸治 @itangiku

.@itangiku 物事には必ず道があります。問題には必ず解決策があります。ただし、誤ったやり方をしたり、事情がよく分からないのに闇雲に突っ込んで行ったりしても、効果はないし、むしろ問題を引き起こしかねません。アイヌ文化事業については、まず広い視野で現状を把握することが必要です

2016-11-02 23:15:34