第14話 エンドウ沖の残火 パート4

脳内妄想艦これSS 独自設定注意 #艦娘化
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-4-20 ギィンッ!! 綾波が着地した直後、破砕音と共に蜘蛛の左ブレードが関節付近で破壊され、派手な音を立てて格納庫の床に転がった。 …彼女の撃った砲撃が前脚を破砕した訳では無い。 蜘蛛は、綾波の巧みなコントロールによって、自身の手で片方の脚を切断させられていた。

2016-11-05 21:21:38
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14-4-21「見えた?今の」 五十鈴が唖然として浜風に問う。 「少しだけ…」 上下に並んだ2枚の刃は、初弾で上側が外にずらされ、次弾で刃の角度を強制的に変えられ、そして最後の斉射でもう片方の刃脚へと押し込まれていた。 この場で蜘蛛の装甲を貫ける物…それは蜘蛛自身の刃だったのだ。

2016-11-05 21:22:07
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14-4-22 蜘蛛は怒り狂ったように残ったもう片方の刃を綾波に向けて振り回し始めた。 「照海さん!」 綾波は息つく間もなく押し寄せる刃を躱しながら、叫ぶ。 「その刃を!!」 その一言で全て理解出来た。綾波の目論見はー

2016-11-05 21:24:23
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14-4-23 照海は走り出し、地面に転がった蜘蛛の左前脚に手を伸ばす。 ガトリング砲の着弾痕が後ろを追いかけるが、遅い! 拾い上げたブレードの残骸は、この場で唯一殺戮兵器を打ち倒す事の出来る武器― 「こいつはいいぜ!」 『大鎌』を手にした照海の目に戦意が満ち満ちる!!

2016-11-05 21:26:35
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14-4-24「綾波!頭下げてろッ!!」 手始めに…一閃!先程から執拗に綾波を狙い続けていた右刃を狙って、大鎌が強烈な切れ味の『線』を描く。 バキィッ!! 鈍い音を立てて右前脚も根元から破砕され、刃が地面に転がり落ちる。 照海はそのまま勢いを殺さず体を捻ってもう一閃…狙いは上部!

2016-11-05 21:29:21
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14-4-25 刃の進む先にはガトリング砲2門。 足掻きとばかりに砲身は照海に狙いを定めてくるが、斬撃から解放された綾波がそれを許さない。両手の連装砲で双方の脚を狙い、連射! 射線を逸らしている内に大鎌の2周目が到達し、蜘蛛の脚から2門まとめて散々此方を悩ませた武器を抉り取った!

2016-11-05 21:31:09
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14-4-26 前脚の武器全てを失い、火花を散らしてよろめく蜘蛛。 「これでも…」 照海は最後の一撃のために横回転のエネルギーを乗せて回転し… 「食らいやがれェ!!」 渾身の三閃目! 蜘蛛の向かって左側から触れた脚全てを刎ね飛ばし、裂刃が頭胸部と腹部の境目を捉える。

2016-11-05 21:32:20
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14-4-27 斬ッ!! 鉄の蜘蛛の体は真っ二つに切断。上半身は力無く床に崩れ落ち、切り離された腹部は切断面から火花を散らし、程なく弾薬への誘爆を起こして鉄屑となった。 爆風が過ぎ去り消え、薄暗い格納庫には静寂が訪れる。 耳を澄ましてみても、もう鉄の動く音は聞こえない。

2016-11-05 21:33:25
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14-4-28「…やったわね」 ヒュン、と大鎌を床に突き立て、雲龍が服の砂埃を払う。 ふと 綾波に目をやると、まだ実感が湧かないという様子でぼんやりと蜘蛛の死骸を見つめたまま座り込んでいた。 「勝ったん…ですよね?」 綾波が呟くように言う。 「そうよ、勝ったの。貴方のおかげで」

2016-11-05 21:34:59
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14-4-29 雲龍は屈みこんで綾波と目の高さを合わせると、彼女の頬に手をあてて顔の汚れを親指で拭ってやった。 「やるじゃない」 「え…?」 綾波に投げかけられたのは、戦闘中の人格を感じさせない優しい笑顔。 …この人のこんな顔を初めて見た。 「アンタ達、ホント滅茶苦茶過ぎよ」

2016-11-05 21:37:36
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14-4-30 五十鈴と浜風も気付けば綾波の直ぐ傍らにやって来ていた。 「呆れたわ。コイツだけならまだしも、貴方まで!でも、凄かったわ」 五十鈴は呆れを通り越して吹き出しており、 「綾香、怪我してないか?どこか切ったりしてないか?」 大智は綾香の身を案じてわたついていた。

2016-11-05 21:39:16
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14-4-31「…兄さんはちょっと過保護過ぎ!」 実際、大智の方があちこち傷を負っていて、若干痛みに耐える素振りも見受けられた。鏡でも見せてやりたいものだ。 「本当、シスコンねぇ」 「うっさい!」 ーガコンッ …ほどけた緊張の中で笑っていると、不意にリフトの稼働音が聞こえた。

2016-11-05 21:40:05
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14-4-32 反射的に4人は武器に手を掛け、身構える。 しかし、リフトで地上から降りて来たのは蜘蛛でも深海棲艦でもなく… 「ありゃ、お邪魔しちゃったかしら」 明石だ。タイミングがあまり宜しくなかった事を察して、少々ばつの悪そうな顔をしている。 「明石さん!どうしてここに…」

2016-11-05 21:40:30
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14-4-33「皆の出た後で蜘蛛みたいなドローンに襲われてねー…って」 リフトから降りた明石が目を丸くする。格納庫は今や多数の機械蜘蛛の死骸と粘液、銃弾痕で酷い有り様なのだ。 「この様子を見る限りだと相当派手にやったみたいね…」 「明石さん、ドローンというのは?」 浜風が問うた。

2016-11-05 21:41:42
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14-4-34「ここに転がってる奴ら全部そうよ…この大蜘蛛が司令塔で、コイツらを全部制御してたって訳」 「これ全部ですか!?」 綾波が周りの鉄屑を見回して驚きの声を上げる。 これまでに倒した数を総計すると100は居そうなものなのだが。 「私も俄には信じ難いのだけどね…」

2016-11-05 21:43:38
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14-4-35「その情報はどこから?」 「提督よ。ここに向かってる間に聞いたんだけど、昔居たらしいわ…深海棲艦が現れる前、そういう兵器を人同士の戦争で使おうと設計した人間が」 喋りながらも明石は、何やら荷物からボンベやら奇妙な機械やらを取り出し、作業の準備を進めていく。

2016-11-05 21:44:09
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14-4-36「明石さん?」 「まだね…終わってないの」 皆の見ている前で、明石は打ち倒された大蜘蛛の残骸の頭部を注意深く触って調べ、軽く頷く。 …そして次に先程の機器を稼働させると、彼女は徐に頭部の『溶断』に取り掛かった。 「結構かかりそうだし、作業しながら話すから聞いて頂戴」

2016-11-05 21:45:31
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14-4-37「深海棲艦との戦いを進める上での新たな技術の獲得、そのための研究…そんな中でも禁止、或いは制限されている項目がある事について、皆は知ってる?」 明石の質問に、雲龍が首を縦に動かす。 「一応ね。人だった時に風見の下についてた事もあって、研究部には近い位置にいたし」

2016-11-05 21:47:04
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14-4-38「代表的な物だと、人体実験の禁止かしら?」 五十鈴も過去の記憶を手繰りながら答える。 「私も…気になって聞いた事あるし」 明石は作業の手は止めずに話を続ける。 「そうね。正確には人体を『材料』にした実験、研究、技術開発の禁止と言った方が正しい。だけどもね…」

2016-11-05 21:49:29
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14-4-39「そんなものは端から守られていない。そうよね?」 明石の答えを待たず雲龍が口を挟む。 「ご名答…それは『公表』のための建前だって事くらい、今の貴方達なら分かるわよね?とりわけ貴方達の場合、自分の身体を見ればね…」 艦娘化。 自分達が身をもって経験している現実。

2016-11-05 21:50:08
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14-4-40「…私は、艦娘ってヒーローみたいな存在で、軍属した人達の中で限られた人達がなっているものだって思ってました」 自分が『綾波』となる前、海の向こうで起こっている戦いはどこか遠い国の話を聞いているようで、艦娘という存在についても有名人の話を聞いているような感覚だった。

2016-11-05 21:51:14
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14-4-41「艤装型艦娘(イレギュラー)…一般向けにはこれが『艦娘』の定義として出回ってるから、そう思ってても無理はないのよね…」 ガコン、と重い音を立てて、接合部分の一ヵ所が切断されて床に落ちる。 「認められて艦娘となって世界を救う一員に…なんて、字面は綺麗なものよね」

2016-11-05 21:52:43
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14-4-42「話を少し元に戻すわね。要するに、雲龍さんの言った通り『人体』を基にした研究は実際には割と横行してる。勝利のため、お金のため、権威のためにね。でも全部が全部上手く行く訳が無いし、何をやっても見逃されるという訳でも無い」 「では、この場所は」 浜風が何かに気付く。

2016-11-05 21:54:12
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14-4-43「そ。公的に認められない研究をしてたヤツが、コソコソ隠れてここで何かを作っていたって事。つまり、この兵器にも十中八九『禁止項目』が関わっているわ」 明石が頭部の反対側の接合部分を切り落とす。 「…そして提督から聞いた話よ。例の研究者が一昔前に設計した兵器」

2016-11-05 21:55:17