第15話 暴走 -Berserk- (完結)

脳内妄想艦これSS 独自設定注意 詳細は此方 http://www65.atwiki.jp/team-sousaku/pages/18.html
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-1-21 硝煙の立ち昇る15.2cm連装砲。持ち主は…川内だ。 ほんの1~2秒の後、呆気に取られていた駆逐隊が我に返る。 「川内さん!?どういう事っすか!」 「深雪ッ!!」 川内に抗議する深雪を、叢雲が飛びつくようにして押し退ける。 直後、深雪の居た位置を砲弾が通過した。

2016-11-26 23:30:36
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-1-22「うぅう…」 仲間に向けて突然牙を向いた彼女の目を見て、その場の全員がゾッとした。 川内の瞳は…光の心許ないこの状態をしてハッキリと分かるほどに真紅に染まっていたのである。 「初雪!白雪を!」 叢雲が叫び、初雪に咄嗟の指示を飛ばす。 「逃げるわよ!!」

2016-11-26 23:34:54
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-1-23「うぅ…う…うぅうううウウゥウウウウうぅウううぅあああぁあああアアアアアアアアアアアアあァアアアアアぁああぁアアアアアアアアアアアアアああ!!!!!!!!!!!!!!!」

2016-11-26 23:36:16
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15-1-24 その身体の持ち主のものとは思えない、獣のような叫びとも、泣き声とも、咆哮ともつかない音のカタマリが、川内から発せられ夜の南西の海に響き渡るのだった…

2016-11-26 23:38:13
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__ 第15話 暴走 -Berserk- パート1 終わり パート2に続く __

2016-11-26 23:38:31
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15-2-1 駆逐隊が佐世保に連絡を行ってから監獄島への緊急入電まで30分少々。佐世保の提督から状況を聞いた上層部の決断は早かった。 「いつかは起こり得ると思っていた。そして、起きた時には俺達に任務として回ってくる事も分かっていた」 大淀から電報を受け取った風見が、苦い顔をする。

2016-11-30 22:41:52
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15-2-2「(だが、タイミングとしては最悪だ。前の一件から…まだ心の準備も整わない程度の日数しか経っていないというのに)」 風見は書面に素早く目を通す。 任務中に発生、南西と西方海域の境目付近、佐世保の水雷戦隊旗艦、随伴艦一人が大破…他の目につく場所で起こらなかったのは幸いか。

2016-11-30 22:42:26
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「大淀、『鳶』の緊急招集を頼む…『暴走』鎮圧の任だ」

2016-11-30 22:42:54
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__ 第15話 暴走 -Berserk- パート2 __

2016-11-30 22:43:38
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15-2-3 執務室に『鳶』が集結した頃には、午後9時を回っていた。 海図の前でブリーフィングを行う風見の口から、その単語が遂に口にされる。 「『暴走』…」 「そうだ」 その言葉には非常に聞き覚えがあった。最初にそれを聞いたのは、五十鈴がここに来て間もなくだ。

2016-11-30 22:45:20
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15-2-4 部屋の中で一人、その言葉を初めて聞く事となった雲龍だけは不思議そうな顔をしている。 「それは一体何?」 「平たく言えば、艦娘が自我を失って制御不能の状態に陥っているようなものだ。通常の方法で生み出された艦娘なら先ず発症し得ない。恐らく、件の水雷戦隊旗艦の艦娘は…」

2016-11-30 22:46:14
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15-2-5「艦娘化の成功例、ね?私と同じ第弐型かしらね…」 五十鈴…杏理も、風見に劣らずの苦い顔をする。 杏理自身は後から知った事だが、第弐型は艦娘化の際に拒絶反応を起こした場合、『暴走』に陥るケースが多い方式なのだ。 …ここに彼女が押し込められた理由も、彼女自身今なら分かる。

2016-11-30 22:47:22
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15-2-6「…あのっ、提督!」 綾波が半ば祈る様な気持ちで手を上げる。 「私達への任務…多分その艦娘さんの『処分』ですよね?」 「…そうだ」 続く言葉を述べようとする綾波を、先んじて風見が手ぶりで制する。 「言いたい事は分かっている。『助ける手段は無いのか』そうだな?」

2016-11-30 22:48:28
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15-2-7 「…『鳶』の諸君らは知らなくて当然だろうが、過去この島でも送り込まれて来た被験者が『暴走』を起こした事例は存在する。それも少なくない」 一旦溜息を一つ挟むと、彼は重い口をどうにかこうにか動かす。 「その際…症状から回復し、正気を取り戻せた被験者は…ゼロ、だ」

2016-11-30 22:49:48
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15-2-8「そんな…」 目に見えてしょげる綾波の様子に、風見は大袈裟に咳払いをして見せる。 「その時も対策を講じなかった訳では無い。当時は実を結ばなかったがな」 風見がチラリと扶桑に視線を投げた。それに応じるように彼女は前へと進み出て、風見に代わって口を開く。

2016-11-30 22:52:11
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-2-9「発症した人間への投薬は殆ど意味を為さず、せいぜい落ち着かせるために眠らせる程度の事しか出来なかったの。でもね…」 握っていた手を開くと、彼女の掌で薬液の入った小さな瓶が転がった。 「最後の発症者が亡くなってからも、データを基に研究だけは続けてたの」

2016-11-30 22:54:07
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15-2-10「その薬を使えば、元に戻せると?」 浜風の問いかけに、扶桑は難色を示す。 「…分からないわ。試せた事が無いから。それに、可能性も凄く低いと思う」 「でも試さないよりはマシ。そうでしょう?」 重苦しい空気を断ち切ろうとするように、今度は杏理が進み出る。

2016-11-30 22:56:35
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-2-11「時間も無いはずよ、提督さん。私達もやれるだけの事はやってみるから、大丈夫。とにかく今は…指揮を」 彼女のよどみない言葉に、風見は呆気に取られて目を瞬かせた。 …彼にそう告げる杏理の目には、既に虚勢ではない『覚悟』が芽生えつつあったのである。

2016-11-30 22:58:58
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-2-12『良いか、暴走した艦娘は一言で言えば暴力の塊そのものだ』 夜も更けた月明りの海の上を、『鳶』は南西方面に向けて滑走していた。風見は目標が近くなるまで、通信越しで可能な限りの情報を彼女らに伝えている最中である。 「暴力の塊って…凄い表現の仕方ですね」

2016-11-30 23:02:06
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-2-13『艦娘の持つ力については、俺よりもお前達の方が詳しいだろう?それが一切の加減も理性も無く無差別に揮われているといると考えれば良い』 通信に耳を傾けるメンバーは、旗艦五十鈴ほか5名の6隻編成。綾波、浜風、雲龍、そして扶桑と大淀である。

2016-11-30 23:04:56
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-2-14『ヒドかったぜ、以前はよ』 通信機越しでも込められた苦々しさの伝わる声だった。 『人格と理性の消失…本格的な暴走の段階の話だが、タイミングを選んでくれないからな。油断すれば部屋が破壊されるわ、壁に大穴が空くわ、死人が出るわの大騒ぎだ。扶桑にも大淀にも迷惑を掛けたな』

2016-11-30 23:05:53
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-2-15「そんなに…」 『そうだ。そして今回は、そんな状態の艦娘がちゃんとした兵装を手にしている。助ける以前の問題として、手は一切抜けないものと考えておけ』 通信を聞きながら、綾波はポケットに入れた弾をぎゅっと握りしめる。 …出撃直前に扶桑が薬液を仕込んだ、特性の弾だ。

2016-11-30 23:10:37
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

15-2-16 弾は合計で3発用意され、綾波・浜風・五十鈴がそれぞれ1発ずつ所持している。もしかしたら未来を変えられるかもしれない、大切な弾丸だ。 「大丈夫よ」 並走する五十鈴が、固い顔をしている綾波に声を掛ける。 「私が貴方達と会って直ぐの事、覚えてるよね?」

2016-11-30 23:12:29
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