ハイターはどうして薄めてつかうのか。 ~ノロ対策~

なんでハイターってわざわざ薄めて使うのかなとおもっていたんです、というところから。
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Y Tambe @y_tambe

こうした、(1)菌やウイルスの「構造」を破壊するか、もっと単純に、(2)それを構成しているタンパク質や脂質などの分子自体を破壊するなり変性させるなりして、機能を失わせる ことができれば、菌やウイルスを殺せる。 一般に後者の方がより強力で、しかもその破壊/変性する効果が高いほど強力

2016-12-21 23:20:10
Y Tambe @y_tambe

ここで、これを踏まえて、医療の現場で使われる消毒薬の「効力による分類」を。 | Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 | 1)効力による分類 - yoshida-pharm.com/2012/text02_03/

2016-12-21 23:23:00
Y Tambe @y_tambe

(この、高水準/中水準/低水準という消毒薬の分類は古典的なものなので、実情に則してない点も多いのだけど、いまだによく使われるものであることは確か)

2016-12-21 23:25:35
Y Tambe @y_tambe

大雑把には、強い方から 高水準:グルタルアルデヒド(=グルタラール) 中水準:塩素系消毒薬、ヨウ素化合物、アルコール、クレゾール(フェノール) 低水準:逆性石けん(オスバンなど)

2016-12-21 23:27:42
Y Tambe @y_tambe

高水準のグルタルアルデヒドは「アルキル化剤」というタイプに分類される。これは生物を構成するタンパク質をはじめ、他の化合物と非常によく化学反応してアルキル化する……というと漠然としてるけど、これと同じ働きなのが「ホルムアルデヒド」…つまり菌やウイルスをホルマリン漬けするようなもの

2016-12-21 23:31:34
Y Tambe @y_tambe

ただまぁ、高水準消毒薬は毒性も高いし「ご家庭ではご使用になれません」ってことに。一般家庭で使えるのは「中水準」以下だけど、ここにくくられてるものには、いろんな作用のものがある。代表的なものが(強い方から)、塩素系消毒薬、ヨウ素化合物、消毒用アルコール、あたり。

2016-12-21 23:35:03
Y Tambe @y_tambe

ここで中水準消毒薬、強い順からの語呂合わせ: 「塩よそって酒くれ」 塩:塩素系 よそ(って):ヨウ素化合物、「手」:ここから手指に適用可 酒:消毒用アルコール クレ:クレゾール(フェノール)系

2016-12-21 23:38:43
Y Tambe @y_tambe

塩素系消毒薬は、次亜塩素酸イオン(ClO-)が持つ強い酸化力で、菌やウイルスなどを構成しているタンパク質や膜脂質などの「生体分子を酸化」する。構造ではなく、分子自体を標的とするので非常に強力。ただしヒトの皮膚などに対しても同じように働くため毒性が強く、手指消毒は不可。

2016-12-21 23:43:02
Y Tambe @y_tambe

ヨウ素化合物も塩素系と同様、「ハロゲン化合物」の一種でやはり強い酸化力を持つ。ただし、溶解性が低かったりする分なんかもあって、次亜塩素酸に比べるとちょっと効力は弱め。なので人体に適用することが可能になり、その代表がいわゆる「イソジン」ね。

2016-12-21 23:47:43
Y Tambe @y_tambe

で、ここまでがアルキル化とか、酸化とかの「生体分子を標的にした『化学反応』」だけど、塩素系やヨウ素と同じ「中水準」に分類されていながら、これ以下の消毒用アルコールの場合はそうではない。作用は大きく2つあり(続

2016-12-21 23:52:30
Y Tambe @y_tambe

承前)一つには「脱脂」……細菌の細胞膜やウイルスのエンベロープなどを構成している「脂質」を溶かしてしまう。これによって菌やウイルスの「構造が破壊」される。もう一つは「タンパク変性」……アルコールはタンパク質の立体構造を変化させる作用があり、それによってタンパク質機能が失われる。

2016-12-21 23:56:23
Y Tambe @y_tambe

ここで「消毒用アルコール」と呼んでるのは、通常、70-80%エタノール(=エタノールの水溶液)のこと。脱脂作用は純アルコール(>99.5%とか)の方が強いけど、タンパク変性作用がいまいちになるので、70-80%くらいが最も強い。この他にも30%イソプロパノールとかも消毒用に。

2016-12-22 00:01:34
Y Tambe @y_tambe

このほか中水準には、フェノール類(フェノール、クレゾール)なんかも該当するけど、これらは最近では毒性なんかの問題もあって、あんまり使われなくなってる。強いタンパク変性作用がメイン。

2016-12-22 00:10:33
Y Tambe @y_tambe

あとは低水準の逆性石けん……これも細胞膜やエンベロープを溶かしたり、タンパク変性作用なんかが中心。普通石けん(陰イオン型石けん分子)と違って、陽イオン型であることにより、元々、マイナス電荷を帯びている細菌やウイルスの表面に効率よく集まることで消毒力を発揮できる。

2016-12-22 00:14:32
Y Tambe @y_tambe

まぁこんなとこで。

2016-12-22 00:15:24