- Uroak_Miku
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1)日本語と英語では接続詞の機能が違うのはどうしてなのかをずっと考えていました。小学校の国語教科書にあたると、(日本語の)接続詞は論理の表現のためにあると一応書かれてはいるのですが[続く] pic.twitter.com/kDK6zuYWVx
2016-12-23 18:18:213)ところがページをめくると、感情表現のためにもあると書かれていてちょっと驚かされます。 pic.twitter.com/qoqHyIrvD4
2016-12-23 18:20:306)この不可思議さは、英訳するとよくわかります。 ・I did my best in the race, so I came in 2nd. ・I did my best in the race, but I came in 2nd. 二つとも英語としては不自然になる。
2016-12-23 18:27:447)こう工夫すれば原文のニュアンスが出せるのですが。 ・I did my best in the race, and I came in 2nd. ・I did my best in the race, but I failed to come in 1st.
2016-12-23 18:31:388)この英文を日本語に戻してみます。 ・競争で自分の全力を尽くして、二位になった。 ・競争で自分の全力を尽くしたが、一位にはなれなかった。
2016-12-23 18:33:249)「だから」をあえて and に置き換えて訳してあります。so ですと「それゆえ必然的に」のニュアンスなのでこの文では強すぎるからです。and なら「~ので」の感じに近いので使えます。
2016-12-23 18:35:4010)「。だから~」と「~たから…」の二つの違いを私たちはいちいち意識しないのですが、実はこのふたつ、違うことばです。前者は「。」で文が一度完結しているのに対し後者は「。」で区切られない。せいぜい「、」で区切られるぐらい。
2016-12-23 18:38:0412)似たようなものじゃないかと思われる方のほうが多いと想像します。現代においてはほぼ同じになったのですが、出自は違います。前者は漢語からの転用、後者は和語の出身です。
2016-12-23 18:40:1713)日本語学習者に「腹痛ですか」と医者が尋ねても通じないのに「お腹が痛いですか」と聞くと通じるそうです。なぜかというと前者は漢語で後者は和語だから。私たちは漢語と和語のバイリンガルだけど外国人は和語の学習でとりあえず手一杯だと思い知らされる逸話です。 pic.twitter.com/tIVwQGS00Y
2016-12-23 18:43:0114)「。だから~」と「~たから…」の違いに通じる話です。もともとは「~たから…」が先に生まれたといわれています。江戸時代の話しことばから。そこに漢文的センスが混じって江戸後期に「。だから~」というヴァリエーションが生まれた。
2016-12-23 18:45:3715)漢文だと「然」とか「並」とか、文の頭によく使われますよね。あれが英文法でいう接続詞です。ああいうのが和語化して「しかるに」「ならびに」が生まれた。つまり日本のことばにおける接続詞は中華文明から移植されたものなのです。
2016-12-23 18:48:1516)その後、漢文と和文の混交が起きて、さらには話しことばと書きことば(漢文、和文ともに書きことばに分類されます)のかい離が進むなか、話しことば⇔書きことば間で文法の緩みが生じ、まわりまわって「。だから~」が生まれ、定着していったようです。
2016-12-23 18:50:3717)日本の書きことばは、源氏物語を思い浮かべればわかるように、文が長くなる傾向がありました。何回も息継ぎしないと文の終わりまで読み切れない。
2016-12-23 18:52:3218)そこに漢文のセンスが改めて混じって、さらには話しことばの世界で文の区切りが工夫されて、「。だから~」などの近世生まれの接続詞が種類を増やしていきました。
2016-12-23 18:54:0419)「しかし」は江戸時代前期、関西で生まれたことばです。語源はおそらく漢文では頻出の「然」(しかるに)です。つまり漢語が和語化して、それが話しことばの世界でさらに変形して発生したものと考えられます。
2016-12-23 18:57:0920)英語の but に比べると「しかし」のほうが強い感じを受けます。事実「全力で走った。しかし二位だった」を but で直訳すると不自然になってしまう。
2016-12-23 18:58:5421) ・I did my best in the race, but I came in 2nd. どうしてこれが不自然かというと、ひとによっては「2nd(二位)ならすごいじゃない」とむしろ肯定的に受け止めかねられないからです。2nd place is really good!
2016-12-23 19:01:2122)それでこう訳しました。再出ですが。 ・I did my best in the race, but I failed to come in 1st. (全力で走ったが、一位にはなれなかった)
2016-12-23 19:02:1923)「しかし」はかなり自己主張が強いので「二位だった」につなげると「ああ、『しかし』といちいちことわりをいれるぐらいだから、二位では満足できないってことなのね」と相手には察してもらえるのですが、
2016-12-23 19:04:1524)but はそこまでアクが強くないので、「どうして二位ではだめなの?」とツッコミを招いてしまう。それで文を工夫して「一位にはなれなかった」とする。これなら「なるほど二位では不合格なんだねあなたにとっては」とわかってもらえる。
2016-12-23 19:06:4425)「しかし」のアクの強さは、おそらく漢語の血によるものです。和語より漢語のほうがもともと自己主張感が強いし、一度は和語化してさらに話しことば化したものが改めて書きことばの世界に移植されたとはいっても、やはり漢語ならではの強烈さのDNAが残っているのです。
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