少女誘拐事件

0
前へ 1 ・・ 14 15 17 次へ
銃声 @hai_ena

@applex002 監視役は予想に反した少女の要望に目を丸くした。  己が補佐役を咎めずにいたところで、この少女に一体どういう利益があるのか監視役にとっては大きな謎だ。 けれど監視役はちらりと補佐役を見やっては、浅く溜息を吐いて承諾する。 「わかった。その通りにしよう」

2016-07-25 09:35:35
銃声 @hai_ena

@applex002 「何だったの?」 「機密事項だ」 興味ありげな青年を軽くあしらい、改めて少女らに向き直る。 「……で、その執事が迎えに来たというからには、もう帰るつもりなんだろう」 我ながら拉致した側の言うべきセリフではないような気がしたが、そこは敢えて黙っておいた。

2016-07-25 09:36:15
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena 「あら、わたしが帰ると思ったら寂しくなっちゃった?もう少し遊んであげても良いわよ」 『勘弁してください。ぼく帰ってから夕飯作らないといけないんですよ』 くすくすと悪戯っ子のように笑う少女に執事はげんなりした様子だ。

2016-07-25 21:29:27
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena そう、もう帰る時間だ。奇怪で長かった1日を終わらせようと日は西の空へと落ちつつある。少女は男の問いに頷いた。 「まぁ、今日はこれくらいにしといてあげる!……そうね、次は間違いじゃなく、シャオイー・マーティンを誘拐しに来るならまた遊んであげても良いわよ!」

2016-07-25 21:30:04
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena 腰に手を当ててスパンと言い放つ少女に執事は一人納得した。なるほど、こうして二度と同じ犯人から誘拐されなくなるのか、と。

2016-07-25 21:30:11
銃声 @hai_ena

@applex002 「勘弁してくれ」 監視役は素直にそう言ったが、彼等の中で疲れた顔をしているのは彼だけのような感じがする。  少女へのお持て成しで化粧を施された青年が不意に目を細めて笑った。 「もしまた会ったら、暇潰しくらいなら付き合ってあげる。 “お貴族さん”なんて──」

2016-07-26 11:37:53
銃声 @hai_ena

@applex002 「どうせ退屈してるんでしょう」 青年はあまり裕福層の人間を好まない。だからほんの少しばかりの偏見でものを言った訳だが、特別少女を責めている訳ではないし、その言葉自体にも嘘はなかった。

2016-07-26 11:40:16
銃声 @hai_ena

@applex002 監視役は穴の開いた天井を哀れんで、 「……まさか、また天井ブチ破って帰るつもりじゃないだろうな」 と、否と答えることを期待してひとり言のように問いかけた。無論彼としては、出口への案内くらいはするつもりである。

2016-07-26 11:41:09
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena 「あら、よくわかってるじゃない。その時は精々楽しませて頂戴ね」 青年の冗談混じりの皮肉に皮肉で返せば、少女は監視役ににやりと微笑んだ。 「その発想はなかったわ。あの辺りに新しい穴を開けたらバランスが良いんじゃないかし『もう、勘弁してください!』

2016-07-26 23:49:11
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena また何か言い出した少女の口を塞ぐと執事は少女共々頭を下げさせた。 「んー!!んんーーー!!!」 『ほんと、うちの主人がお世話になりました。あの……お出口までご案内をお願いしても良いでしょうか?』

2016-07-26 23:50:35
銃声 @hai_ena

@applex002 「ほらよ。白兎」 エリが少女に歩み寄り髪留めを外して手渡した。漸く頓珍漢な姿から解放された訳である。  そうして自らの上着を脱ぎ、何の予告もなしに少女の頭に被せるようにして上着をバサリと投げつけて言う。 「“プライバシーの保護”にご協力を願いたい」

2016-07-27 14:55:17
銃声 @hai_ena

@applex002 どうやら視界を阻んだ状態で出口までの案内をするつもりのようだった。 本来なら目隠しか何かをするのだろうが、生憎先に使っていたものは2人分まで用意していない。 空気を読んだ青年が同じように上着を脱いで、「君もどうぞ」と執事の少年に渡す。

2016-07-27 14:55:26
銃声 @hai_ena

@applex002 理由は当然、出口までの道のりを覚えられてはあまり都合がよく無いからだ。  青年の上着からは、仄かに香水の香りがした。

2016-07-27 14:55:47
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena 「あら、すっかり忘れてたわ。ありが……だぶぁっ!?ちょっと!!だからあんたはいきなり過ぎるのよっ!」 すっぽりと視界を覆う上着に取り乱す主人を宥めながらも執事も差し出された上着を受け取った。 『……!!』 なにこれ。 めっちゃ良いにおいがする。

2016-07-28 12:33:27
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena 主張し過ぎなず、品があって優しく、しかしエキセントリックな香りは今まで素朴な少年などが嗅いだことのない良い香りだった。……なるほど。これが良い男の香りか。 『あ、ありがとうございます!』 表現し難い興奮にほのかに上気する頰を隠すように

2016-07-28 12:34:34
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena 執事も上着を被ってしっかりと視界を閉ざした。 「ここまでするんだから、ちゃんと案内しなさいよねっ!」 渋々ながら現状を受け入れた少女は恐々と側にいた誰かの腕を掴んだ。

2016-07-28 12:34:45
銃声 @hai_ena

@applex002 エリはすぐに側を離れてしまったのか、手を伸ばした少女が掴んだのは誘導に手を貸そうとした補佐役の腕だった。 補佐役は特に慌てる様子もなく、 「……こっち。足元、気を付けてね」 と、至って落ち着いた様子で少女の手を取り、ゆっくりと部屋の出口へ案内をする。

2016-07-28 22:05:28
銃声 @hai_ena

@applex002 執事の少年の方は上着を渡した青年がそのまま手を引いた。 部屋を出たところで、不意にその様子を見ていた監視役が眉間に皺を寄せてぽつりと呟く。 「……妙に馴染みのある光景だな」 監視役の脳裏を掠めたのは、何らかの事件を起こした犯人が警察に連行される姿である。

2016-07-28 22:06:16
銃声 @hai_ena

@applex002 監視役と同じことを思っていたのか 「てよ。現場はどう? イズミキャスター」 「はい! 今、犯人が出てきました! 顔を上着でしっかりと覆い項垂れています!」 悪ノリした青年がイズミに話を振り、更に悪ノリしたイズミがいかにもキャスターらしい口調で実況を始める

2016-07-28 22:07:14
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena 「エリ!!イズミ!!見えなくても聞こえてるわよ!!誰が犯人よ!!どっちかっていうとそっちが犯人でしょ!!外に出たら覚えてなさい!」 好き勝手にこの状況を楽しむ男たちについ力が籠もれば、握っていた補佐役の手がメキッと音を立てた。

2016-07-31 23:06:41
シャオイー(小伊) @applex002

@hai_ena 一方、執事はというと一連の声の位置関係から自分を導いているのが先ほどのお兄さんだとわかると緊張と静かな興奮からか引かれた手が震えるのを抑えられずにいた。

2016-07-31 23:06:49
銃声 @hai_ena

@applex002 「いッ……!?」 少女の華奢な体のどこに、そんな力があるのか。何故か悉く理不尽に犠牲を被る補佐役は、そろそろ先輩らもいい加減にしろと思わざるを得なかった バシャバシャバシャ! と写真を撮ったのは勿論イズミである。また滅多にない貴重な写真がフィルムに収まった

2016-08-02 00:52:46
銃声 @hai_ena

@applex002 少し廊下を歩いた後慎重に階段を上り、街のどこにあるかも分からない鉄扉を開いて彼等は外へ出た。 けれどすぐには少女らを解放せず、まだもう暫く先を歩いて行く。 辺りはシンとしていて、ザリザリと地面を踏む彼等の足音以外に風の音しか聞こえない静まり返った道だった。

2016-08-02 00:53:40
銃声 @hai_ena

@applex002 4、5分程度の道のりを歩いた頃、繁華街の賑やかな──けれど昼間に比べるとやや大人しい人々の声が、僅かながらに聞こえてくる。  すると、 「──お疲れ。もういいよ」 青年がぴた、と足を止めた。 同時に執事の少年から手を放す。 補佐役もそれに倣った。

2016-08-02 00:54:03
銃声 @hai_ena

@applex002 最後まで少女らの見送りに付き添ったのは、青年と補佐役、そして監視役の男のみのようだった。イズミは連れて来ると何かと喧しいし、エリはそもそも見送りなんでするような男じゃない。 少女たちの今いる場所は、繁華街に通じるごく一般的な狭い路地である。

2016-08-02 00:54:44
前へ 1 ・・ 14 15 17 次へ