rsbs日誌#46

レズボス日誌。第四六巻 ツイ鎮SS
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﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 しかし嵐は、少女達の抵抗を無駄な足掻きだと言わんばかりに飲み込んでゆく。辺りはもう真っ暗になり、大粒の雨と激しい波風が視界を奪っていく。ボイラーは轟々と燃え盛り、ファンネルは海水を吸ってしまいそうになりながら咳き込み、煙突は濛々と煙を吐いていると言うのに。

2017-01-07 15:45:30
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#rsbs日誌 「うわぁっ!」「さっちゃん!?」姉妹艦にして友人の皐月が荒波に足元を掬われ、転覆してしまった。「ぐわぁっ!」「長月!?」菊月が彼女の戦友の名を叫ぶ。彼女も皐月と同じ様に、波に足元を掬われてしまった。如月は、助け出そうと振り向く。然し其処には…津波が待ち構えていた。

2017-01-07 15:46:01
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#rsbs日誌 全力で逃げていたと言うのに、何故自分の背後に津波が目前にまで迫っているのか。如月は状況が理解出来ずに気を取られ、他の少女達と同じ様に荒波に足を掬われると、そのまま津波の濁流に飲み込まれていった。機関、非常停止。通風孔、非常閉鎖。艤装妖精が必死になって喚いている。

2017-01-07 15:46:25
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#rsbs日誌 暗く濁った息苦しい世界の中で、如月は呆然とする。如何してこんな事になってしまったのか。何故自分達は嵐に気が付く事が出来なかったのか。この大津波は、一体何なのか。そして…海中の最中でゾッとする様なオーラを纏う、鈍い光を見てしまった如月は、意識を手放してしまった…。

2017-01-07 15:46:46

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#rsbs日誌 ……さて。何れ程の時間が経っただろう。如月は独り、無人島に漂着していた。艤装はガタガタ。武装は緊急パージにて紛失。体も筋肉や間接が悲鳴をあげていた。如月は覚束無い足で必死に椰子の木の木陰へと移動した。そして自己診断プログラムと応急修理プログラムを走らせる。

2017-01-07 15:48:32
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#rsbs日誌 体内のナノマシンが全力で体を癒していく。しかし所詮は応急修理。工廠の修繕ドックの其れとは比べ物になりやしない。クタクタの彼女が再び意識を手放し、目覚めたのは翌日の朝だった。体はどうにか問題無く動ける事だろう。だが他の問題が山積みであった。

2017-01-07 15:48:53
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#rsbs日誌 先ず艤装がボロボロであった。機関部は海水が流入して半死半生。何かにぶつけたのかブーツ型の推進器も片方が故障していた。電探はお陀仏となり、無線機は弱い電波を如何にか発する程度。武装は前述の通り緊急パージにて紛失。今や武器は護身用の拳銃とナイフだけとなってしまった。

2017-01-07 15:49:26
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#rsbs日誌 「無い物を強請っても仕方が無いわね…」溜息を零しながらも、如月は行動した。先ずは不快感が甚だしいべた付く衣類と体を真水で清めた。幸いな事に艤装の真水精製装置は壊れていなかった。これだけでも生存の可能性が高まったし、べた付く肌をサッパリ出来て気分が楽になった。

2017-01-07 15:50:28
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#rsbs日誌 次いで彼女は艤装の亜空間コンテナに収められたサバイバルキットを開いた。一週間分の食料が其処にはある。島の青いバナナや魚を獲れば、もう暫くは持つ事だろう。彼女は妖精さん達ととりあえずの食事を取る。何事もエネルギーの確保だ。火を起して彼女達は缶詰食料を暖めて食べた。

2017-01-07 15:50:52
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#rsbs日誌 それから如月は如何した物かと思案する。先ず自力の航行は困難である。機関と推進器は半分死んで居る。此れで深海棲艦に襲われたら堪った物ではない。応急修理で如何にか成る程の損害でも無い。羅針盤も壊れて使い物に為らず、無人島の外に出る事は自殺行為であると彼女は確信した。

2017-01-07 15:51:29
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#rsbs日誌 ならば、彼女に残された選択肢は自ずと絞られてくる。ガタガタになった無線機でSOSを飛ばし、生存し続けるのだ。艤装妖精さんに無線機の応急修理を頼み、彼女は当座の寝床を仕立てる事にする。満天の星空の下、椰子の木の下に敷いた葉っぱのベッドで、少女の心は不安に満ちていた。

2017-01-07 15:51:49
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#rsbs日誌 …果たして、隊長の長良と姉妹達は無事なのだろうか。どんな形であれ、助かって居て欲しいと少女は願う。知らず知らずの内に零れた涙と共に、如月は眠りへと落ちた。姉妹達と、頼もしい仲間達との忙しなくも幸せな鎮守府での日々を思い起こす夢を見ながら。南洋の星空に見守れて…

2017-01-07 15:52:15
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#rsbs日誌 魚と青いバナナと保存食を食べる生活が数日過ぎた、ある日の事だった。水平線の向こうに黒点が見えたのだ。それは紛れも無く軍艦…如月は必死になって、発光信号を送った。そして暫くしてから、明確な返事が返ってきた。自分達はSOS信号を受け取った艦隊である、と言う旨を。

2017-01-07 15:52:51
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#rsbs日誌 やがて、何処の国の物とも知れぬ、古風だが妙に武装ばかりモダンな巡洋艦が無人島に近付いてきた。ボートよりも早く艦娘が海へと下ろされ、如月を保護した。「助けて頂き、有り難う御座います。その…責任者の方にお会いしたいのですが…」おずおずとばかりに如月が言葉を発した。

2017-01-07 15:53:35
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#rsbs日誌 「お呼びかな? お嬢さん」途端、老獪で胡散臭い、だけども優しげな声が如月の耳を擽った。振り返れば其処には烏の濡れ羽色の様な、艶ややかな長い黒髪に、炎よりも尚暗く血の様に赤い赤い瞳を持った、胡乱な少女が軍服を着て立っていた。「お初にお目にかかる。比良坂提督と申すよ」

2017-01-07 15:54:10
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#rsbs日誌 提督、と言う言葉を聞いた途端、如月は立ち上がり敬礼した「あのっ! この度は遭難していた所を助けて頂き真に有り難う御座います」「よいよい。そんなに畏まらんでも。お前さんの艤装の壊れっぷりを見るに、普通の状況では無いと直ぐに理解出来たのだから」提督はやんわりと笑った。

2017-01-07 15:54:30
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#rsbs日誌 「何はともあれ、先ずは修理ドックにお入りなさい。この艦の修理ドックは聊か手狭だが…居心地は悪くない筈じゃよ。お前さんの体を確りと癒してからお話を伺おう」「…色々と、お世話になります」如月は深々と頭を下げた。自分は駆逐艦だが、それでも修理となれば金が掛かる。然し…

2017-01-07 15:54:55
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#rsbs日誌 「なぁに。他愛もない事よ。お前さんが気にする程では無い。提督と言う物は艦娘の面倒を見るのが仕事なのだから、のう…? ほれ…ゆっくりと風呂に入っておいで。別段取って食おうだなんて思っておらんから」コロコロと笑いながら、提督は如月を艦内の修繕ドックへと送り出した。

2017-01-07 15:55:17
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#rsbs日誌 元艦娘であるらしいクルーに案内され、如月は艦内の修繕ドックへと連れられていった。其処は確かに手狭に感じられたが、艦娘の体を癒すのに必要な機材は確りと一式が揃っており、確かな手入れがされていた。この部署の者であろうクルーに促されるまま、如月はドックに身を委ねた。

2017-01-07 15:55:46
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 …修繕ドックは確かに中々如何して、心地良い寝床であった。体の隅々の疲れがまるで剥がれ落ち、溶け落ちていくかの様な感覚であった。数年間の艦隊勤務の中で、滅多に見られない程の快眠。そして心地の良い目覚めと共に如月は起動する。まるで生まれ変わったかの様に思いながら…

2017-01-07 15:56:33
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#rsbs日誌 「…凄いわ。とっても体が軽い」「お早う御座います、如月さん。体の具合はどうですか?」「まるで鳥の羽の様に体が軽いわ。自分の体じゃ…無いみたい」「診断の結果ですが、どうやら間接や筋肉に色々とガタが出ていたみたいなので重整備をしておきました」その言葉に如月は驚いた。

2017-01-07 15:56:48
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#rsbs日誌 重整備と言えば、通常の修理修繕とは話が違う。高価な薬品やナノマシンを用いる事になる。そのコストや駆逐艦と言えど軽く青ざめる程に…「あ…あの! 私そんな、お金は持っていなくて…!」「別に金をせびろうだなんて、詰らん事はせんよわしは」胡乱な声が少女の後ろから響いた。

2017-01-07 15:57:07
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「提督さん…」「お客人に不具合が出たら、助けた側も気分が悪かろう? 服も新しく用意させておいたでな。ともあれ…一息付いたら聞かせて貰おうか。何があって、無人島に漂流する破目に遭ったのか…」とっぷりと深い色をした、紅い瞳に見つめられ、如月は小さく息を飲んだ。

2017-01-07 15:57:33
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#rsbs日誌 服を着替え、軽い食事を食べた如月は士官室に招き通された。其処には提督と、重巡洋艦の羽黒が待っていた。勧められるが侭に椅子に腰掛けると、羽黒が優しく問い掛ける。「珈琲でも如何ですか?」「あ…はい。頂きます」静かに微笑みを返すと、彼女は珈琲の準備に取り掛かった。

2017-01-07 15:58:01
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