Even a chance acquaintance is decreed by destiny

偶然の出会いは運命による。 後に英雄となるハンターと、獣であることを望む人間の出会いもまた、運命か否か。
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

今回のクエストはドンドルマから海を隔てて遠く離れたシキ国でのリオレイアの狩猟だった。 繁殖期を控えて気性の荒くなったリオレイアが人里に近い山岳中腹部に出現。可及的速やかにリオレイアの脅威を排除する為に上位ハンターのオレ達にお鉢が回ってきたって寸法だ。 23

2017-01-07 23:12:21
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

繁殖期が近いし、ギルドもオレ達も番を探しに現れるリオレウスを危険視してたかが、杞憂で済んだようで何よりだ。 ロビンは注意深く三度辺りを見渡して、オレ達に呼び掛けた。 「さぁて、そろそろ山降りますかい」 「ですな」 「だな。いつリオレウスがやって来るか分からないからな」24

2017-01-07 23:14:23
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

オレ達は下山の妨げにならない最低限の量の素材を剥ぎ取り、切り立った崖の岩肌を掴んで、来た時とは逆の要領で下って行った。 冷たい山風がオレ達に横殴りに吹き荒ぶ。 オレはまた懐かしい気分になっちまう。 25

2017-01-07 23:17:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

首を背後に向ければ雲が海を思わせるほどに無尽に広がり、太陽が雲の海に沈もうとする光景が目に入る。 …いいね。ハンターの特権って奴だ。 「ガリウス殿、如何したか?」 足元のカトーが動きの止まったオレに声を掛けてきた。俺は苦笑して夕焼け空を指差した。 26

2017-01-07 23:19:42
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

カトーはオレの指差す方へと視線を巡らせ、「おおっ」と感嘆の声を零した。 「いや、絶景かな!」 「だろ?」 「おーい。たしかにいい景色だけどさぁ」 オレ達の頭上で立ち往生しているロビンが、苦言を呈した。 27

2017-01-07 23:23:29
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「そろそろ日が沈むから早く」 帰ろう。そう言いかけたロビンの声を「AGRRRRR!」モンスターの咆哮が遮った。 しかも今の声って… 「リオレウスか…?」 「だろうねぇ…」 28

2017-01-07 23:26:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

オレ達はフルフルもかくや、とばかりの静かさで崖を急いで下り、山の中腹部まで降り立つ。 「GARRRRRR!」 「は!は!は!」 中腹部の盆地から聞こえるのは、リオレウスの怒り狂った咆哮と……人の声? 「誰だ…?」 「村人が迷い込んだか?」 「いや」29

2017-01-07 23:28:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ロビンはフルーミィシリンジを構え、備え付けのスコープを覗き込んでいた。 視線の先、なだらかな盆地でリオレウスと黒い何かが戦っていた。 黒い何かは、フルプレートの甲冑に碧のスラッシュアックスを振るうハンターだった。 見たことのない装備だ…何処のハンターだ? 30

2017-01-07 23:31:34
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「GRAAAA!」 「グワーッ!やるなぁ!」 リオレウスの噛み付きを…あろう事かソイツは篭手を噛ませて受け止めやがった!? ――――いや、痛くないのか!? ソイツは何も意に介さぬ様に、残った片腕で斧形態のスラッシュアックスを…首に叩き付けやがった! 「イヤーッ!」 31

2017-01-07 23:33:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「AGRRRRR!?」 遠くからでもメキメキと甲殻が砕けた音が轟いて来やがる! リオレウスは堪らずソイツの腕を吐き出した。 ソイツはスラッシュアックスを構え直し、体勢を立て直す暇を許さぬように斧を叩き付ける! 「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」 「AAAAAAAGH!」 32

2017-01-07 23:36:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「何だ…アイツは?」 「何たる野蛮さ…」 「滅茶苦茶じゃないの…?」 リオレウスの悲鳴を聞き、オレ達はこの光景をただ唖然と見守った。 何だあれは。見た事がねぇ。後先を考えてるようには到底見えねぇ。 ――――あまりにも、危険な戦い方じゃねぇか! 33

2017-01-07 23:39:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「AGRRR……」 だが、されるがままの空の王者じゃない。 リオレウスの口元に熱を感じる橙色の光が溢れる。 「危ない!」 オレは思わず叫んだ。ソイツは一瞬動きを止めた。間に合わねぇ! 「GAAAAA!」 34

2017-01-07 23:42:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リオレウスは千載一遇のチャンスを見逃さず、飛び下がりながらソイツに火球を吐き付けた! ソイツは炎に飲まれちまった! 「おいおいおい!」 「アレは…拙いのでは!?」 「ちょっと助けに行こうか!」 オレ達は確実に致命傷を負ったであろうソイツを助ける為に立ち上がろうとした。 35

2017-01-07 23:44:31
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リオレウスは自分が生み出した黒煙の向こうを睨んでいる。 ――――不意に、黒煙から小さな玉が飛び出し…閃光と共に爆ぜた。 オレ達は咄嗟に目を腕で覆った。 「あれは」 「閃光玉…かね?」 「AGRRRRR!?」 閃光を直視して目を焼かれたリオレウスは無様に地へと落ちた。 36

2017-01-07 23:47:20
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」 黒煙を切り裂き、碧の刃がリオレウスのアギトに襲い掛かった。 「AGRRRR!?」 「イヤーッ!」 更に一撃! 「AGRRRR!?」 滑らかに剣形態にスラッシュアックスが変形。二連斬りがリオレウスの目を狙う! 「イヤーッ!」 「AGRRRRR!?」 37

2017-01-07 23:50:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「まだまだ行くぞぉ!イヤーッ!」 そしてソイツは苦悶の叫びで開かれたリオレウスの口に…赤黒いエネルギーが迸る切っ先を突き立てた! 「AGRRGH!?」 リオレウスは口の中で己を苛む赤黒いエネルギーを吐き出そうと藻掻くが、ソイツは更に深くスラッシュアックスを突き立てる! 38

2017-01-07 23:52:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イィイイイヤァアアアアアーーッ!!」 ――――そして数秒の拮抗の末、エネルギーは決壊して大タル爆弾みたいな爆発音を響かせた。 「ARRRRRRRR!?」 血煙が吹き上がり、リオレウスの下顎が千切れ飛んだ。右目は飛び出し、内側から砕けた頭蓋からは脳漿が溢れる。 39

2017-01-07 23:56:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

――――リオレウスは力無く倒れ伏した。あまりにも無残に、凄惨に。 オレ達は、傷一つもなくそれを成し遂げた化物を見た。ソイツの体から微かに立ち上る黄色いオーラが虚空に消えた。 「どうした?」 化物は問うた。 「RRR…」 リオレウスは断末魔の悲鳴を上げて絶命した。 40

2017-01-07 23:59:42
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「もう終わりか…こんなもんか、上位は」 そしてソイツは、片腕でスラッシュアックスを掲げ、天に向かって吠えた。 「エントリイィィィィィィ!!!!」 それは、獲物を仕留めて勝ち誇る獣のようだった。 オレ達は、何も言えずにその光景を見守るしかなかった。 40

2017-01-08 00:01:23
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

――――あれはいつの話か。 何年経ったのだろうか。 オレ達が天廻龍シャガルマガラを討伐してG級ハンターに昇格する直前の事。 オレ達は、化物に出会った……ただの狩人を自称する、人間めいた化物に。

2017-01-08 00:02:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「Even a chance acquaintance is decreed by destiny」#1 おわり #2 へ続く

2017-01-08 00:02:55

#2

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「Even a chance acquaintance is decreed by destiny」#2

2017-03-11 22:24:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

――あの後、俺達はあの鎧の化物を見送るしかなかった。 化け物は俺達に気付く素振りもなく――今思えば、大して興味もなかったのだろう――山を下りて行った。 1

2017-03-11 22:25:33
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

呆けたオレ達が下山を始めたのは、すっかり陽も沈み、夜の帳が下りてきた。オレ達は狩りですら感じなかった疲労感を引きずって、宿へと帰っていった。シナツ村に。 2

2017-03-11 22:28:00
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