Even a chance acquaintance is decreed by destiny

偶然の出会いは運命による。 後に英雄となるハンターと、獣であることを望む人間の出会いもまた、運命か否か。
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

シキ国。シュレイド大陸テロス密林南方の港から東への数週間の船出で辿り着くフォンロン大陸南方の島国。竜人族発祥の地。山岳地帯の多いこのシキ国で二番目に高い山「天空山」、その麓に栄えるのがオレ達が今回拠点にしたシナツ村だ。 3

2017-03-11 22:30:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして、天空山やその周辺の山岳へと狩りに出るハンターにとっての拠点として栄え始めた村のひとつであった。オレ達は出張ギルドガールへの報告もそこそこに、町で一番大きい宿兼酒場「ヒコの順風酒場」へと重い足取りで帰っていった。 5

2017-03-11 22:35:32
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

この村はシキ国では比較的新しい村だ。と言っても、人族から見れば永い時が経過した村でもある。シキ国で一番高い位置に聳える村・シナト村で生きることが難しかった病弱な竜人族が山を下り、人族と交わったことが始まりとされる人族と竜人族が互いを尊重して暮らす村だ。 4

2017-03-11 22:34:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

荷物を降ろし、それぞれの自室へと帰って濡れタオルで身を清めるのもそこそこに、オレ達は一階のカウンター席に集まって思い思いに飯を注文した。 6

2017-03-11 22:39:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

天空トマトの酸味とユキマツタケの豊饒な香りがマッチした天空の雪山サラダ。食欲をそそる焼いた肉の上に猛牛バターが神々しく身を溶かすのは特上リュウノテールのステーキ。煮え立つオリーブオイルで上品に茹で上げられたモガモ貝とホロ肉のアヒージョ。 7

2017-03-11 22:41:31
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

鉄網の上で丁寧で焼き上げられたツチタケノコとナスのグリエは珍しい東洋の燻製カツオパウダーが身を躍らせる。炒めたロックナッツと五穀豊穣米が油と卵で丁寧に旨みを閉じ込められた五穀豊穣ロックライス。貴重な幻獣チーズを濃厚に、そして時間をかけて燻蒸した幻獣クリームチーズのスモーク。 8

2017-03-11 22:43:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして喉を潤すのは天空山から流れてきた新鮮な雪解け水。食欲をそそる飯を前にして、俺たちは容赦なくそれらを胃袋に収める作業を開始した。 9

2017-03-11 22:44:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

肉や穀物をほとんど食い尽くし、達人ビールやブレスワインで喉を潤しながらオレ達は自然と夕刻に出会った化け物の話題を語り合った。 「しかし…何だったんだアレ」 「人間なのは間違いないけどねぇ……」 10

2017-03-11 22:48:16
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ロビンはサラダボウルに残った天空トマトの切れ端をフォークで弄びながら興味なさげに呟く。 「まぁ、正直どうでもいいかな。誰がどんな狩りをしようが、僕達には関係ないしねぇ」 ――――相変わらず、興味の無いことにはとことんドライだなロビンは… それに引き換え…… 11

2017-03-11 22:50:33
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「いいや、ロビン殿!そこでどうでもいいというのは人道に反しておりますぞ!ヒック!」 ――――本当に酒に弱いなカトーは!数年経ってそれなりに飲み慣れてても改善する気配がねぇ! 12

2017-03-11 22:54:16
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「人道に反するってのは大きく出たねカトー」 「如何にも!某から見てもあの狩りは自殺行為以外には見えぬ!」 「アイテムも使えないカトー殿に言われたらお仕舞でござるなぁ」 「使えるでござるー!某もこの数年でアイテムの使い方は熟練の域でござるー!」 13

2017-03-11 22:57:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

カトーの奴はそんな周囲に気にする様子すらなく、ロビンに色々ぶちまけてるみたいだが。 「我らも嘗ては先達から教え導かれた身。なればこそ、あれほどの才を無謀な狩り方で使い潰すのは人道に反しているのではないかと思うのです!」 「いや、アレそんな生半可なモノじゃないと思うんだけど…」14

2017-03-11 23:04:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「何故そこで惑うか!大体ロビン殿はですなぁ…おっとぉ!?」 「ちょ、カトー!」 カトーが勢い余って足をもつらせやがった。チクショウ、だから飲みすぎなんだよあのバカ!俺とロビンは慌てて立ち上がってカトーの腕を掴もうとして… 「おい、危ねぇぞ兄ちゃん」 15

2017-03-11 23:06:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

赤ら顔で視線も定まらないカトーが立ち上がって叫びを上げる。酒場で酒宴に興じていた何人かの客がカトーを視線で追ったが、ほとんど全員が興味を無くしたかのようにすぐに視線を外す。酔っ払いががなり立てるなど、酒場ではよくあることだ。言ってしまえば日常の光景だ。 13

2017-03-11 23:01:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

カトーはブザマに倒れ、酒場の笑いものになることは無かった。その背を、逞しい褐色の腕が押し止めていた。俺達3人の中でも大きいカトーを超える大きさの偉丈夫。そいつは褐色の肌で、老人みたいな灰色の髪を後ろに撫で付け、目は黒いシャドウアイで覆われていた。 16

2017-03-11 23:10:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そいつはカトーを支えたまま言った。 「正体を無くすまで飲むんじゃねぇよ。明日に響いても知らねぇぞ」 「ヒック…何方かは知らないが……忠告、痛み入る…」 カトーは男の支えから離れて、自力で立とうとした…何か顔色が……ロビンも気付いたのか、カトーを正面から支えるように歩み寄る。 17

2017-03-11 23:12:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「すみません、コイツ悪酔いしたみたいで…カトー?なんか顔色悪くない?」 「大丈夫…問題ないですぞ……」 「えぇ~?ホントにござるか~?」 「ホントにござ……オゴーッ!」 「ギャーッ!!?」 うっそだろお前!?カトーの奴吐きやがった!しかもロビンの奴に頭からひっかけやがった!?18

2017-03-11 23:16:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ちょ、おま!?大丈夫かロビン!カトー!」 「アッツコラー!テメッコラー!ザッケンナコラーッ!」 ロビンの奴も普段の冷静さをかなぐり捨ててカトーに掴みかかって…オイ、揺するのは拙いって!?まさかお前も酔ってんのか! 19

2017-03-11 23:19:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ロビン殿!ロビン殿申し訳無い!だから揺するのだけは…オゴーッ!」 「ギャー!ヤメロテメー!」 「おい、落ち着けあんたら!」 仲間二人が狂乱を巻き起こす中、唯一の救いはカトーを支えてくれた名も知らぬ男だけ…男は自分の手がゲロに塗れぬのも厭わずに二人の肩を掴む。 20

2017-03-11 23:21:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「騒ぐな騒ぐな!そっちのデカい兄ちゃんは便所で吐け!ちっこいのはデカいのを揺するんじゃない!マスター!タオル持ってきて!床掃除はこっちでやっとくから!」 ウワ…何この人…厳つい見た目に反してめっちゃ親切… 21

2017-03-11 23:25:09
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

カトーから聞いた「ジゴクに仏」ってコトワザを思い出すぜ…けど、男の言葉を聞いてロビンが恐ろしい形相で男を睨み付けた 「ア?誰が豆粒ドチビだとテメッツコラー!」 「いやそこまで言ってねぇよ!?」 「聞いたぞコラー!スッゾオラー!」 ああもう滅茶苦茶だよ… 22

2017-03-11 23:27:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

つーかロビンお前…背のこと気にしてたのか…ロビンの奴が明らかに倍近い体格差のある男に飛び掛かろうとして… 「イヤーッ!」 「グワーッ!?」 23

2017-03-11 23:31:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

……何が起こった?瞬きしたらゲロ塗れの床でロビンの奴が伸びてやがる。男の方は…右手をチョップの形で構えて……まさか、今の一瞬で叩き落としたってのか? 「彼我の実力差ぐらい図れ兄ちゃん!暫く寝とけ!」 24

2017-03-11 23:33:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ちょっとー!ケンカは困るんですけどー!?」 店の奥からモップを持った小太りなマスターが走ってやって来る。男はゲロで汚れた手で後頭部を掻いて、情けなくこう言った。 「いや、正当防衛だから!」 25

2017-03-11 23:38:00
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