「日本の一般公衆の被曝限度の規制は、わが国では法令で年1mSvに規制されている」
- karitoshi2011
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最近、一般公衆の被曝限度の規制はわが国では設けられていない、との言説がtwitter上で繰り返し主張されています。
2017-01-15 18:41:04この点は過去にもツイートした記憶があるのですが、原子力規制委員会の発足に伴い法令が一部改正されていますし、原発事故関連の集団訴訟とも関連しますので(とりわけ自主避難の客観的合理性を基礎づける事情として)、以下で改めて一般公衆の被曝限度を定める規制の有無につき確認しましょう。
2017-01-15 18:42:42なお、私は法律の専門家ですが、放射線管理に関連する法令については必ずしも詳しくありませんので、誤解に基づく叙述があるかもしれません。ご質問があれば、ご遠慮なくメンションして頂ければ幸いです。
2017-01-15 18:43:51最初に、関連する現行法令のしくみを確認しましょう。 法律(国会が制定する法)のレベルでは、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」があります。
2017-01-15 18:44:28同法の目的は、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られることを確保する…災害を防止…核燃料物質を防護、公共の安全を図るため…必要な規制を行う…もつて国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」にあります。
2017-01-15 18:47:05また、同法に基づき、詳細な定義や規制を定める政令として、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令」が制定されています。
2017-01-15 18:47:44「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令」の条文は次の通りです。 → law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S… → law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S…
2017-01-15 18:48:03核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
(昭和三十二年六月十日法律第百六十六号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32HO166.html
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令
(昭和三十二年十一月二十一日政令第三百二十四号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32SE324.html
次に、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき、政令たる「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」が制定されています。 → law.e-gov.go.jp/htmldata/S53/S…
2017-01-15 18:48:48実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則
(昭和五十三年十二月二十八日通商産業省令第七十七号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S53/S53F03801000077.html
この規則の第二条第二項第六号では、「周辺監視区域」という用語が定義されています。その文言は次の通りです。
2017-01-15 18:50:32「『周辺監視区域』とは、管理区域の周辺の区域であって、当該区域の外側のいかなる場所においてもその場所における線量が原子力規制委員会の定める線量限度を超えるおそれのないものをいう。」
2017-01-15 18:50:52この定義から分かるように、周辺監視区域とは、一般人の立ち入りが制限される管理区域の周辺に設定される区域であり、周辺監視区域の外側のすべての場所では、「原子力規制委員会の定める線量限度」を超えるおそれがないことが前提にされています。
2017-01-15 18:51:11では、「原子力規制委員会の定める線量限度」はどこに規定されているのでしょうか。「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」の中には見当たりません。
2017-01-15 18:52:04これについては、別途、「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示」が存在し、その三条において線量限度が定められています。その文言は次の通りです。
2017-01-15 18:52:33(実用炉規則第二条第二項第六号等の線量限度) 第三条 実用炉規則第二条第二項第六号…の原子力規制委員会の定める線量限度は、次のとおりとする。 一 実効線量については、一年間(四月一日を始期とする一年間をいう。以下同じ。)につき一ミリシーベルト
2017-01-15 18:54:27この告示については、法令データ提供システムでは現物が見られませんので、原子力規制委員会が平成28年に作成した資料へのリンクを張っておきます。以下の資料の2頁に上記告示の抜粋が掲載されています。 →nsr.go.jp/data/000144249…
2017-01-15 18:56:03一般公衆の線量限度に関連する法令はこのほかにも存在しますが、あまり複雑にならないように、とりあえずこれらにとどめておきましょう。
2017-01-15 18:57:07なお、第185回国会で、一般公衆の被曝線量限度の規制に関する質問がなされ、これに対して政府は次のように答弁しています。一般公衆の被曝線量限度の規制が存在しないとの言明はこの答弁を根拠にしているようですので、これも見ておきましょう。
2017-01-15 18:57:29「一般公衆の被ばく線量限度の規制は設けられていない…国際放射線防護委員会…の勧告等を参考に、核原料物質、核燃料物質 及び原子炉の規制に関する法律…等において、内部被ばく及び外部被ばくを考慮して、原子炉施設の周辺監視区域外等における線量限度を年間一ミリシーベルトと規定している」
2017-01-15 18:58:55質問主意書
第185回国会(臨時会)
答弁書
答弁書第二一号
内閣参質一八五第二一号
平成二十五年十月二十九日
内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 麻 生 太 郎
参議院議長 山 崎 正 昭 殿
参議院議員山本太郎君提出放射線被曝防護に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員山本太郎君提出放射線被曝防護に関する質問に対する答弁書
(一部引用)
さらに、お尋ねの「年間二十ミリシーベルト」については、ICRPの勧告等を参考にして定めており、政府としては、現在、福島県内の状況は、同勧告で定義される現存被ばく状況におおむね移行しているものと認識している。
(以上引用終了)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/185/touh/t185021.htm
(1)上記の告示三条は法令か(市民や国、地方自治体に対する法的拘束力を有するルールか)。 (2)告示三条が法令だとして、上記の政府答弁が示す法解釈はどのような意味を持つか。 (3)自主避難の客観的合理性を基礎づける上で上記告示三条はどのような意味を持つと考えられるか。
2017-01-15 19:04:31