「日本の一般公衆の被曝限度の規制は、わが国では法令で年1mSvに規制されている」

京都産業大学法務研究科教授 高嶌英弘氏がおこなった一連のツイートに、関連するリンク文書を挿入しながらまとめました。
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TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

(1)について  まず、上記告示三条が、たんなる内部規則やガイドラインではなく、市民や国、地方自治体に対する法的拘束力を持つルールである(いわゆる「法令」の一部である)ことは明白です。

2017-01-15 19:05:09
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

「告示」にはいくつか性質の異なるものが混在しており、単なるお知らせである場合も存在します。ネット上には、このことを根拠として、上記告示も法令ではないとする見解があったように思いますが、これは明確な間違いです。

2017-01-15 19:05:55
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

というのは、法令が自ら定めるべき事項を規定せず告示にこれを委任している場合には、告示は、法令の援権によって具体的な事項を定めているわけですから、その援権の範囲内で、当然に行政や市民を拘束する効力を持つことになります。

2017-01-15 19:06:47
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

上記の政府答弁も、「法律…等において、内部被ばく及び外部被ばくを考慮して、原子炉施設の周辺監視区域外等における線量限度を年間一ミリシーベルトと規定している」と述べていますので、上記告示三条が法的効力を持つことを当然の前提としています。

2017-01-15 19:07:10
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

(2)について 次に、告示三条が法令だということを前提としたうえ、上記政府答弁が示す法解釈はどのような意味を持つかが問題となります。  ツイートの中には、政府がそのような規制は無いと答弁しているんだから無いんだ、と述べているものがありますが、これも法的には基本的な間違いです。

2017-01-15 19:08:54
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

というのは、法令の解釈が正当であるかどうかの最終的な判断権限は、最高裁判所だけが有しているからです。政府や個人が答弁でそのような規制はない、と の解釈を示すことは自由ですが、法的には政府答弁であっても主張の正当性はなんら担保されません。

2017-01-15 19:09:38
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

実際に、政府による法令の解釈が最高裁判所の判決で否定された事例は、少なからず存在しています。  従って、政府が無いと答弁しているというだけで規制がないとの結論を導くのは間違いであるということがおわかり頂けると思います(解釈のひとつとして提示するのはもちろん可能ですが)。

2017-01-15 19:10:27
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

私見では、上記告示三条は、当然に公衆の被曝限度を定めた規制であるとの解釈が正当であると考えます。その理由は次の通りです。

2017-01-15 19:11:28
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

確かに同告示の文言には公衆という言葉は出てきませんが、条文の解釈は、法の制定趣旨、目的に沿って行わなければなりません。

2017-01-15 19:11:55
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

先述のように、同告示は、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」及び「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」を補足する趣旨で制定されたルールですから、その内容は、これらの法令に従って解釈されなければならないことになります。

2017-01-15 19:12:34
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

そして先述のように「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の制定趣旨は「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全…に資することを目的とする」(1条)のですから、下位ルールである告示三条もまた、国民の生命、健康を保護するためのルールであると 解 釈するのが自然です。

2017-01-15 19:14:07
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

付言しますと、少なくとも平成23年時点では、国の行政機関(文科省)自身が、公衆被曝に対する線量限度は1年間で1ミリシーベルトであり、これを定める法令として上記告示三条があることを明記しています(この告示三条は改正前のものですが内容は同じ)。

2017-01-15 19:14:50
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

この文科省文書は重要なので、以下で少し内容をピックアップしてみましょう。 「現在の国内法令は、ICRP1990 年勧告(Pub.60)に基づいている。右勧告を国内法令に取り入れる際の放射線審議会の意見具申の概要と国内法令への取入れの例は次のとおり。」(1頁)

2017-01-15 19:16:20

※本資料は、平成 23 年 10 月 20 日開催の第 15 回原子力損害賠償紛争審査会における参考資料として、事務局が事実関係を整理したものです。

放射線に関する安全基準等について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/10/20/1312358_4_1.pdf
PI
2.ICRP1990 年勧告(Pub.60)の国内制度への取入れについて
現在の国内法令は、ICRP1990 年勧告(Pub.60)に基づいている。右勧告を国内法
令に取り入れる際の放射線審議会の意見具申の概要と国内法令への取入れの例は次のとおり。(「ICRP1990 年勧告(Pub.60)の国内制度等への取入れについて」(平成 10年 6 月 放射線審議会)から一部を抜粋したものに、国内法令の例等を追記した。)

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

「④公衆被ばくに対する線量限度 <1990年勧告の基本的考え方> 公衆の被ばくに関する実効線量限度は、1年について1mSvとする…。 」 (4頁)

2017-01-15 19:17:52

P4
④公衆被ばくに対する線量限度
<1990年勧告の基本的考え方>
公衆の被ばくに関する実効線量限度は、1年について1mSv とするが、特殊な状況においては、5年間にわたる平均が年当たり1mSv を超えなければ、単一年にこれよりも高い実効線量が許されることもあり得るとしている。

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

「<取入れにあたっての基本的考え方> 公衆の被ばくに関する限度は、実効線量については年1mSvとし、これを規制体系の中で担保することが適当である。…」(4頁)

2017-01-15 19:18:26

P4
<取入れにあたっての基本的考え方>
公衆の被ばくに関する限度は、実効線量については年1mSv とし、これを規制体系の中で担保することが適当である。

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

「 <国内法令の例> ●実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(抜粋) 第一条第二項第六号(注:現在の二条二項六号)… ●実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示(抜粋) 第三条(抜粋) (続)

2017-01-15 19:22:13
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

(承前) 実用炉規則第一条第二項第六号の経済産業大臣の定める線量限度は、次のとおりとする。 一 実効線量については、一年間(四月一日を始期とする一年間をいう。以下同じ。)につき一ミリシーベルト」 (4頁~5頁)

2017-01-15 19:23:01

P4~P5
<国内法令の例>
●実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(抜粋)
第一条第二項第六号 「周辺監視区域」とは、管理区域の周辺の区域であつて、当該区域の外側のい
かなる場所においてもその場所における線量が経済産業大臣の定める線量限度を超えるおそれのないものをいう。
●実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示(抜粋)
第三条(抜粋) 実用炉規則第一条第二項第六号の経済産業大臣の定める線量限度は、次のとおりとする。
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一 実効線量については、一年間(四月一日を始期とする一年間をいう。以下同じ。)につき一ミリシーベルト

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

このように、国の官庁ですら、同告示三条は公衆の被曝線量限度を定めた法令であると明言しているのです。

2017-01-15 19:24:02
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

この解釈が国会答弁で変更されたのならば、見解の変更に当たるわけですから、当然にその理由を明示する必要があるはずですが、国会答弁ではその理由が何ら示されていないことからすれば、当該解釈の信頼性は低いと評価できます。

2017-01-15 19:24:27
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

以上のことから、結論として、私見では「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示」三条は、一般公衆の被曝限度を定めた法令だと解釈すべきである、ということになります。

2017-01-15 19:25:05