「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #16「救出撃②」

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フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

魔力と水分で構成されたこの怪物は帰還の道中でもガイアの上でその性能を発揮し、超高速自動反撃で障害物を排除してきたところだ。有効射程は約10m。本体は反射速度はあっても移動能力は鈍重な為、クッションの中央に立つと端辺りがカバーできない。今の配置はその為だ。 17

2017-02-19 23:52:55
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そして3人目は柳原。想良を挟んで祥汰の反対側に立ち、Dデザイアのカバー範囲をフォローする要員だ。子供達を受け止める手段は風属性の盾などでも良いが、彼の鞭はもっと適している。彼が選ばれたのは、それが理由には違いないが、弟が空中にいるのを誰かが慮ったというのもあろう。 18

2017-02-20 00:01:41
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クッションは秒速3メートルで上がり始め、徐々に減速する。急ぎたいが、加減を間違うとクッションが引力球に引き裂かれてしまう。想良1人なら素早く蝶の元へ辿り着くのも不可能ではないが、まさか制御が難しい球で子供たちを引き寄せる訳にもいかない。速度よりも確実性を取った形だ。 19

2017-02-20 00:11:27
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祥汰と柳原は焦燥した表情で焦れながら上昇を待つ。想良は一見ぼんやりしているようにしか見えないが、少なくとも正体には真剣な時の表情であるのは分かっていた。月明かりの元、3人は上空の片桐と蝶、そして子供達の様子を注視する。 20

2017-02-20 00:20:47
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『よし、カウント3で行くぞ』 「…はい…!」 回転がどんどん増していく。空に浮かぶ月はもう太線にしか見えねぇし、蝶はその白い太線を2つに分ける細い黒線だ。先輩のコントロールを疑う気はねぇが、俺の三半規管と目が無事に機能するかは怪しいところだ。つぅかしくじると俺が死ぬ。 21

2017-02-20 00:26:41
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『3』 体を投槍の上に動かす。 『2』 何時でも跳び立てるように体制を整える。 『1』 歯を食いしばる。 『0!』 先輩が鎖を開放し、槍は右側上空へ横薙ぎにすっ飛んでいく。俺はその上で風圧とGに耐えながら、進行方向を向く、気合を入れて目を見開く。目指す敵の姿がそこにあった。 22

2017-02-20 00:38:53
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「うぉわああああ!!」 槍は蝶の横を掠める軌道だ。直接ぶち当てる訳じゃねぇ。すれ違う直前、槍を真下へ蹴飛ばしながらワイヤーガンを撃った。…ダメだ!外した!…先端のフックは奴の脇腹から背を掠めて後ろへ吹っ飛んだ。 「まだだ!」 俺は両膝を胸の高さへ曲げると足の下へ刃を動かす。 23

2017-02-20 00:43:08
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「オラァッ!」 足に最速で引きつけた足場を全力で蹴り飛ばすと同時に、展開済みのワイヤーを鞭の要領で奴の背後から打ち付ける。動きの鈍い左羽の上から根本側へと一回転して絡みつく。 「っし!」 ワイヤーを引き戻して羽を締め上げながら、奴の背に飛び乗る! 24

2017-02-20 00:45:09
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ワイヤーガンを両手で引き戻しつつ蝶の背を登る。蝶は粘着剤と鋼糸で60度左に傾きながら飛んでいる。右足を蝶の肩辺りに掛けるとガンを無理やり口に咥えて両手を空け剣を取る。分離出来る刃は左に一枚、右には折れた一枚だけ、後は切り離し不可の剣本体だけだ。粘着弾も後一発、戦力は少ねぇ。 25

2017-02-20 00:50:32
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奴の肩を剣の柄で殴りながらその上に登ると、口吻がこっちを向いた。口を開いて麻酔液を吐こうとしただろうそれを、ライトが鉄パイプをも切断する鋏で押さえ込む。タカシは奴の目の前を飛び回って気を逸し、ノゾムはある場所で待機する。さっき蝶に引っ付いた時にコイツらを残しておいたんだ。 26

2017-02-20 00:56:57
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俺を振り落とそうとする蝶にしがみ付きながらワイヤーを引き戻してワイヤーガンをホルスターに仕舞う。代わりに抜いた粘着銃で左羽に最後の弾を当てる。蝶が常人の可聴域ギリギリのカン高い声で咆哮し、更に大きく左に傾く。もう地面と垂直に近い。蝶が足掻いて起こす風も弱くなってきた。 27

2017-02-20 01:01:37
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俺は用の済んだ銃を遠慮なく下に放り捨てると、剣に持ち替え、先端の折れた刃をを蝶に浅く突き立てしがみつく。 「片桐!」 久浦の声が届く…近い。まだ鱗粉が邪魔で麻衣さんとは通信出来ねぇが、お陰で頃合いだと分かった。 28

2017-02-20 01:06:11
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「行くぞ!!」 俺は右手の剣を深く突き刺しながら、一瞬左手を離し剣を取る。目の前の子供に話しかける 「下で受け止めてくれるからな!辛抱しろよ!」 風に消されねぇように大声で言う。言葉とは呼べねぇほどの微かな声が返事をした気がした。それを確認すると剣の一閃で脚を斬り落とした。 29

2017-02-20 01:06:46
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「っあっ!?…うわあああ!」 一人目の子供が落ちていく。クッションは地上と俺達、どちらからも20メートルの辺りまで浮いてきている。久浦の蛸モンスターの射程にはギリ届かねぇが問題はねぇ。蛸に投げられた久浦が空中で子供を受け止めて、蛸の上に着地する。 30

2017-02-20 01:10:29
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蝶が浮き上がる。 「っべぇ!」 重さが減ったせいだ。俺は左の剣で子供がいた辺りの腹をぶっ刺し、右の折れた刃を切り離し、本体で胸の横を突き刺す。蝶は藻掻きまくるが、脚の締付けは強くなった。2人を落としそうにはねぇが、早く助けねぇと重傷になるかも知れねぇ。下の様子をまた窺う。 31

2017-02-20 01:14:58
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向こうは登り続けてる筈だが、下との距離は変わってねぇ。落とした子供は、多分違う気はしてたが、やっぱ兄ちゃんの弟じゃなかったようだ。それでもホッとした様子でこっちに目配せしている。 「次!急げ!」 「分ぁってるよ!」 32

2017-02-20 01:18:27
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2人目を助ける前にコイツを弱らせて落とすか動きを止めねぇといけねぇ。上昇速度を加速させんのは期待できねぇ。重量が増えた分、コントロールが面倒になってる筈だ。羽を切り落とすのも博打の要素がデカい上に時間が掛かるからダメだ。なら、どうする?…俺は並列思考で次の手を考える。 33

2017-02-20 01:20:43
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待機させてたノゾムを使う →まだリスクが高い 剣を更にぶっ刺す →余計暴れる。重量が減った今は揺れがデカいから危険 →確実に一瞬でも動きを止める手段→

2017-02-20 01:21:33
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「2人共!ちょっと我慢しろよ! 「…えっ?」 掠れた声が聴こえた。 「久浦!兄ちゃん!俺の合図で蛸から2人で跳べ!」 「分かった!」 「何時でも良いぞ!」 返事を聞くと俺はノゾム達に目配せをして身構える。3匹が飛んだ瞬間、俺は次の行動に出た。 34

2017-02-20 01:25:02
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「スタニング…スパーク!」 俺は最小の出力で電撃を放つ。人体に後遺症が残らず姑獲蝶に通じるギリギリのラインを攻めた。麻痺させるためじゃねぇ、ビリッとさせて怯ませられりゃあ充分だ。狙い通り、蝶はピクリと止まる。その瞬間に俺は左の剣で左側に残る足を全部斬り落とす。 35

2017-02-20 01:31:44
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「今だ!」 叫ぶ同時に振り抜いた剣先から最後の刃を分離する。双剣を腹にぶっ刺し、落ちてくる兄ちゃんの弟を抱き抱えて放り投げる。下の2人は蛸の上から同時に跳び、空中で久浦が武器で足場を作ると、兄ちゃんはそこから跳び、一瞬だけ俺の横へ並び弟をしっかりと受け留める。 36

2017-02-20 01:38:38
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「ありがとう!…油断するなよ!」 兄ちゃんは落下しながら弟を肩の上に持ち替え、空いた手で鞭を振るう。それを足場に久浦は跳び、ワイヤーガンで蝶の尾を捕らえた。久浦はそのまま下へは降りずに長さを調整して空中にぶら下がる。減った分以上の重しになる気か。 37

2017-02-20 01:42:38
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その間に俺は最後の分離刃を踏み台に蝶の体へ飛び付いた。空いた面積が広くなった分掴まりやすい。片剣に乗り、もう片方を左手に持ち、乃愛に覆いかぶさるようにして右側の脚を狙う。 「大丈夫か!?」 「う…ん…」 「さっきは悪かったな!」 「へ…い…き…」 38

2017-02-20 01:50:04
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脚でがっちり捕まえられた乃愛の体は蝶の透明化に巻き込まれた上に塗料も被ってよく見えねぇ。デカい傷はねぇ様だが、服の下は分からねぇ。唇は多分比喩でなく青くなってんだろう。畜生が…っ!俺はなおも暴れる蝶の顔を横目で睨む。 「やれっ!!」 ノゾムが左の触覚を切り落とした。 39

2017-02-20 01:56:29