こじらせていたリーマン不定期更新2
- tsutsujishika
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しばらく見て回るうちに、おそ松は買うものを決めたらしい。本当なら赤が欲しかったんだろうけど、仕事用であることを考慮して、シンプルな黒のスーツケース。4泊分もちそうな大きさだ。店員さんを伴ってレジへ向かう彼にことわりを入れて、僕は別のフロアに移動する。
2017-02-11 11:22:02すると、真っ先に目に入ったのは、バレンタイン特集コーナーだった。 ……ああ。うん。そうだよね。今の時期、コンビニもお菓子屋も、テレビも雑誌も全部バレンタインという文字を掲げている。
2017-02-11 11:24:03手作りキットに包装紙。ピンクに赤に白に色々。近寄ろうとしたけれど、高校生らしい女の子たちがきゃっきゃしてたからやめた。
2017-02-11 11:25:03するするとお弁当用品のコーナーに移動しながら、どうしようかと考える。一応、おそ松にチョコでも渡そうかな、とは、思っていた。でも来週いっぱい彼はいない。会えるのは早くて17日。もしくは18日か。
2017-02-11 11:26:06カエルのキャラクターが描かれた弁当箱を持って悶々としていると、 「ちょろまつ?」 「ひぇっ」 「そんな驚く?何?考え事?」 いつのまにかおそ松が後ろに立っていた。もう会計をすませたらしい。傍らにケースを転がしている。
2017-02-11 11:31:10「その弁当箱買うんだ?」 「か、買わない」 「えーなんで?これ。チョロ松に似てて可愛いと思うけど」 おそ松は弁当箱の蓋に描かれたキャラクターの頬をちょいちょいと撫でた。いや。成人男性が子供向けのお弁当箱は色々厳しい。
2017-02-11 11:32:15「他に買うもんないなら、どっかで飯食って帰ろうか」 「そうだね。あー…ケース買う前に食べた方がよかったかな」 「このくらい邪魔にならないっしょ。中身入ってないし。行こうぜ」
2017-02-11 11:33:08そう言っておそ松は歩き出す。 ……おそ松も僕と同じでエスカレーターを上ってきたはずだ。ということは、当然バレンタインコーナーも目に入っただろう。……おそ松は、どう思っているのかな。
2017-02-11 11:34:04「……おそ松さん」 「はい」 「今なんと仰いましたか」 「……ハメ撮りを」 「はい」 「させてください!」 「ばっっっかじゃねえのお前!?」
2017-02-11 22:57:05ここはおそ松の部屋。ベッドの上。成人男性二人が、全裸。片方は土下座、片方は正座。傍から見ればなんとも珍妙な格好だと思う。ちなみに土下座がおそ松で、正座は僕だ。
2017-02-11 22:58:10「だって5日も会えないんだよ?5日もチョロ松に触れないんだよ?俺欲求不満で爆発しちゃうよ?」 「だ、だからって、~~め撮りは無い。絶対ない。」 「そんなあチョロ松さまあ」 「甘えてもダメ!これ以上言うんだったらもうヤらないからな」
2017-02-11 22:59:07正座を崩してベッドを降りようとすると、おそ松は慌てて僕を引き留める。 「待って!ここで出来ないとそれこそ俺死んじゃうって!」 「なんで死ぬんだよ」 「チョロ松不足で!」 「あほか」 腰にすがりつく頭をぽこんと殴る。
2017-02-11 23:00:14「ほんとにダメ?」 「ダメなもんはダメ!」 「俺が5日間頑張るためと思ってさあ」 こんなもんのために頑張らないでほしい。 「大体撮ってどうすんだよ」 「そりゃあ、見るに決まってるじゃん。そしてオナネタにする」 出張の間そんなことする余裕があるんだろうか。
2017-02-11 23:01:15おそ松は僕の腰にぐりぐり頭を擦り付ける。くすぐったいからやめて。 「おそ松」 「んんー」 「ハメ撮りは絶っ対しない」 「けち」 「うるせえ当たり前だ」
2017-02-11 23:03:04おそ松をべりっと剥がして、毛布にくるまる。 「あってめーチョロ松」 「ヤらないつったらぜったいヤらない」 こうなったら強硬手段だ。徹底抗議だ。ハメ撮りなんて絶対しない。そんな、最中を、撮るなんて、恥ずかしすぎて無理。
2017-02-11 23:03:12「ちょろまつ~」 おそ松が僕の背なかに抱きついてくる。毛布越しでも、その、若干硬くなったものが。当たる。 「……元気だね、おそ松の」 「そりゃあヤる気満々だもん」 僕だってシたくないわけじゃない。ただ、撮るのが嫌ってだけ。
2017-02-11 23:04:16「な~。チョロ松ぅ。もうハメ撮りしようなんて言わないからさあ。……セックスしよ?」 よしよしと頭を撫でられる。くそ、むちゃくちゃなこと言ってるのはこいつのほうなのに、なんで僕が宥められる側なんだ。
2017-02-11 23:05:02「……わかった。ちょっとでもスマホ触ったら殺すからな」 「わーおっかない」 笑いながら、おそ松は僕の毛布をめくっていった。
2017-02-11 23:06:05「んお」 おお。おっさんみたいな声が出た。自分でびっくりする。んーっと伸びをして隣を見ると、未だすやすや眠る恋人の姿が。こいつは基本的に俺より早起きだが、張り切った翌日はよく眠る。
2017-02-12 10:24:02チョロ松を起こさないようにベッドから這い出て、床に落ちていたスマホを拾い上げる。パシャ。寝顔を一枚。音で起きないので、遠慮なくもう一枚。
2017-02-12 10:25:02