悠久なる世界の欠片 第二部

エクスとメルフィアの物語。 不定期 & 虫食い 連載
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夢乃 @iamdreamers

二人は、先に店を出たガイナンとクラシスの後を追った。 「ねぇ、何で二人の対決を見たいの?」 歩きながら、メルフィアはエクスに聞いてみた。 「ん? あぁ、あのガイナンって奴、かなり強いだろ?」 「うーん、どうかな。見たことないけど。自分じゃ強いって言ってるよ」 #twnovels

2016-03-13 23:09:58
夢乃 @iamdreamers

「そっか。多分、その自信に見合うくらいの強さはあると思うな。少なくとも、俺よりかなり強い」 「へぇ、謙虚なのねぇ」 「馬鹿、自分の強さくらい判るよ。それで、あいつくらい強い奴相手なら、クラシスの本気を見られるかな、と思ってさ」 #twnovels

2016-03-13 23:10:13
夢乃 @iamdreamers

「え? クラシスってエクスと時々剣の立会いしているよね? あれって本気じゃないの?」 「俺は本気でやってるよ。でもクラシスは、実力の半分も出してないんじゃないかな」 「へぇ、エクスだってかなり強いと思うけどなぁ」 「俺なんてまだまだヒヨッコだよ」 #twnovels

2016-03-13 23:10:33
夢乃 @iamdreamers

「それで、そのヒヨッコのエクスとしては、クラシスの本気を一度でもいいから見てみたい、とそういうことかな?」 「そういうこと。それで得られるものもあるだろうし」 「ふぅん、ホント、剣が好きなのね」 「まあ、ね」 それから暫く、二人は無言で前の二人の後を追った。 #twnovels

2016-03-13 23:11:02
夢乃 @iamdreamers

クラシスとガイナンはそのまま街を出ると更に街道を外れ、大小の石があるだけの荒野で相対した。後についてきたエクスは周りを見回し、大き目の岩を見つけるとその上に登って腰掛け、対峙する二人に目を向けた。メルフィアもエクスを追うように岩によじ登ってくる。 #twnovels

2015-11-23 13:59:39
夢乃 @iamdreamers

二人の観客の前で、クラシスは腰の鞘から剣を抜いた。ガイナンも背中の鞘から幅広の剣を引き抜く。けれど、白布に包んだ大きな荷物は背負ったままだ。 「その大荷物はそのままでいいのか?」 クラシスが聞いた。 「は。貴様なんぞ、このままで充分さ」 #twnovels

2015-11-23 14:00:04
夢乃 @iamdreamers

ガイナンが挑発するように答える。クラシスは気分を害した風もなく顔をエクスに向けた。 「エクス!合図を頼む」 「俺かよ」 エクスは憤慨したようにぼやきながらも左右を見回し、岩の上にある拳大の意思を手に取った。 「いくぞ!」 そして石を空高く放る。 #twnovels

2015-11-23 14:00:42
夢乃 @iamdreamers

クラシスは既にガイナンに視線を戻していた。ガイナンはクラシスを睨みつけたままだ。エクスの投げ上げた石がその頂点に達し、そして落ちてくる。エクスの隣でメルフィアが唾を飲み込むのがわかった。わずか数ミテンの時間が永劫にも感じられた。 #twnovels

2015-11-23 14:01:20
夢乃 @iamdreamers

石はクラシスとガイナンのほぼ中央に落ちた。すかさず、クラシスが一気に距離を詰め、ガイナンに斬りかかる。剣先が太い腕を切り裂く・・・と見えた瞬間、ガイナンはその巨体に似合わない素早さで襲い来る剣をかわし、クラシスの背後に回った。 #twnovels

2015-11-23 14:01:58
夢乃 @iamdreamers

そのまま頭上に掲げた剣を振り下ろす。クラシスは振り向きもせずに斬りつけた勢いのまま前方に逃げ、ガイナンの斬撃をかわしたところで振り向いて再び斬りつける。今度はガイナンは自分の剣でクラシスの剣を受けた。 キンッ! 飛び散った火花がエクスとメルフィアにも見えた。 #twnovels

2015-11-23 14:02:40
夢乃 @iamdreamers

クラシスは後ろに跳び退るとガイナンはそれを追って再び斬りかかる。クラシスはガイナンの剣を受けずに右へ左へと飛び退いて避けた。暫くその攻防が続くかと思われたとき、クラシスはそれまで以上の速度でガイナンの剣を避けると相手の後ろに回り込んだ。 #twnovels

2015-11-23 14:03:22
夢乃 @iamdreamers

ガイナンは振り返りざまに襲ってきた剣先を自分の剣で受けた。すぐさま、二人は互いに後ろへ跳び退る。間が空いた。それまで息を詰めて二人の闘いを見つめていたメルフィアは息を吐くと、隣にいるエクスに聞いた。 「剣士の目から見て、どう?どっちが有利?」 #twnovels

2015-11-23 14:04:05
夢乃 @iamdreamers

「これまでのところ、互角かな。クラシスの奴、俺の相手をするときよりは力を出しているけど、まだ余力を残しているし、あっちのおっさん、ガイナンだっけ、あっちは全力を出してるようだけど背中に大荷物を背負ったままだからな」 #twnovels

2015-11-23 14:04:47
夢乃 @iamdreamers

「ふぅん。お互いに様子見ってこと?」 「そういうこと」 「クラシスって避けてばかりでガイナンの剣を受けないね」 「そりゃそうだよ。クラシスの剣に較べてガイナンの剣はかなり大きいからな。重量もかなりのもんだろ。それをまともに受けたら、へし折られるから」 #twnovels

2015-11-23 14:05:44
夢乃 @iamdreamers

「なるほどね。剣士も、いろいろ考えてるんだ」 「当たり前だよ」 そのとき、ガイナンに動きがあった。けれど、クラシスへの攻撃ではない。いきなり剣を逆手に持ち変えると地面に突き刺す。 「貴様、かなりやるな。俺がこいつを下ろすはめになるとはな」 #twnovels

2015-11-23 14:06:47
夢乃 @iamdreamers

ガイナンは胸で交差しているベルトの片方を外した。ズシン、と地を揺るがす音と共に、その背に背負っていた大きな荷物が落ちた。続けて、もう一つのベルトも外す。今度は大剣の鞘が落ちる。先の荷物ほどではないものの、これもかなりの重量を感じさせた。 #twnovels

2016-07-17 15:38:53
夢乃 @iamdreamers

「改めて、行くぞ」 ガイナンはそう言うと、一気にクラシスとの距離を詰めた。 「速い!」 エクスの口から声が漏れた。重荷を下ろした彼の動きはさっきまでとは別人のようだった。クラシスの目の前に迫ると剣を素早く横に薙いだ。対するクラシスの反応も素早かった。 #twnovels

2016-07-17 15:24:54
夢乃 @iamdreamers

ガイナンの大剣を自らの細剣で受けると同時に後ろに跳んで剣圧を最小限に抑える。着地するとすぐに前へと跳び、攻撃に転じる。しかしガイナンは既にそこにはいなかった。クラシスの後ろに素早く回りこんでいたガイナンは剣を突き出す。 #twnovels

2016-07-17 15:25:50
夢乃 @iamdreamers

後ろを振り返ると同時にガイナンの突きを剣の腹で受け止め、また後ろに跳ぶクラシス。ガイナンは追いすがると同時に振りかぶった剣を振り下ろす。クラシスは横に構えた剣で初めてガイナンの剣をまともに受け止めた。大きな火花が散る。 #twnovels

2016-07-17 15:26:07
夢乃 @iamdreamers

「あ、クラシスさんの剣、折れないね。ガイナンの剣に勢いがなかったのかな?」 メルフィアが隣のエクスに聞いた。 「いや、今ガイナンの剣を受け止めるところに、目一杯魔力を集中させてる。そうじゃなかったら確実に折られていただろうな」 #twnovels

2016-07-17 15:26:25
夢乃 @iamdreamers

「へぇ。それだけ魔力を使えるなら魔術師としてもやってけそう」 「そうもいかないよ。クラシスの魔力の使い方は、多分、剣術で使うのに特化してると思うな。魔力を飛ばして暫く操るとか、無理じゃないかな」 「そうなの?」 二人の会話の間も、闘いは続いた。 #twnovels

2016-07-17 15:26:46
夢乃 @iamdreamers

受けた剣を力を込めて押し戻したクラシスは、そのまま横薙ぎに剣を振るう。体勢を崩したガイナンだが即座に反応し、剣を戻してクラシスの斬撃を受け止める。クラシスは攻撃の手を休めず、連続して剣を繰り出す。ガイナンもその連撃をすべて受け止め、かわした。 #twnovels

2016-07-17 15:27:05
夢乃 @iamdreamers

激しい連続攻撃の隙をついてガイナンは素早く身を捻ると、クラシスの右側から攻撃を仕掛ける。クラシスは再び剣を受け取めると同時に横に跳び、ガイナンと距離を取った。 「やるな」ガイナンが言った。 「そっちこそ」クラシスが答える。 #twnovels

2016-07-17 15:27:22
夢乃 @iamdreamers

二人の顔不敵な笑みが浮かぶ。 「そっちが本気を出してくれたのなら、こっちも少しは本気を出さないと失礼かな」 「なんだ、負け惜しみか?」 「言ってろ。そう言っていられるのも今のうちだけだからな」 クラシスは身を屈めると、ズボンの裾を上げた。 #twnovels

2016-07-17 15:41:13
夢乃 @iamdreamers

「ねぇ、どっちが有利かな?」 メルフィアが詰めていた息を吐いて、エクスにまた聞いた。 「背中の荷物と鞘を落としたあとは、ガイナンが圧しているように見えるけど。ただ、クラシスもまだ全力を出しているようには見えないんだよな。圧されてる割に落ち着いたもんだし」 #twnovels

2016-07-17 15:27:55
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