ストレイトロード：ルート140（25周目）
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Rista_Bakeya
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Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
持ち場にいない研究員を探していた藍が中庭で彼を見つけた。「こんなところで昼寝？」「外で過ごすのも大事だ。橋の上で新しい考え方を思いついた数学者もいるからね」挙がった先人の名を藍は知らなかった。全く信じていない顔で逸話を聞いた後、登場した難解な概念の説明を求め、相手を困らせていた。
2017-01-15 19:37:21
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1213。数学者。 橋の逸話については「四元数」で検索。 ただし昼寝の言い訳になるような話ではない。
2017-01-15 19:37:33
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
復興計画の発表会に怒りの嵐が吹き荒れた。藍に不正を暴露された役人や議員が逃げるように退場し、列席した記者達も出て行った後、乱闘で散らかった壇上に清掃員が現れた。「ああ、こんなに仕事が増えた」余計な手間が恨めしいのかと思いきや、独り言はこう続いた。「これで女房にプレゼントを買える」
2017-01-16 19:00:36
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「これ読める？」藍が暗号文を書き写した紙を押しつけてきた。風を使ってどこかの物置から情報を持ち出したらしい。携帯端末を駆使して調べ、昔の速記者が残したメモだと判明するまでに時間を要した。内容の解読には更なる時間が必要だろう。「挑戦しますか？」「知りたい内容なさそうだからやめとく」
2017-01-17 20:04:59
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1215。速記者。 技術に取って変わられる技能の一つ。 彼らの世界が壊れる前に姿を消したかもしれない。
2017-01-17 20:05:05
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
ある大学を紹介する古い記事を藍は飽きずに読み返している。ざっと見た限り、私だと判る写真はなさそうだった。「大統領の訪問だって。会った？」「遠巻きに見た程度です」空が遠くなるなど想像もしない時代、写真の中の人々は上を向いていた。その中央に立つ元大統領は今もこの空の下にいるだろうか。
2017-01-18 19:43:55
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
夜通し車を走らせ、ようやく荒野の端に行き着いたらしい。藍が助手席の窓を開け、平地のごく一部を切り取った柵の中を指差した。馬が軽快に走っている。「あの馬、人が乗っていたけど、飼い主かな」「調教師かもしれません」地上の動物の恐らく大部分は以前とさほど変わりなく、人間の隣で生きている。
2017-01-19 19:37:16
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1217。調教師。 人の傍でしか生きられない命に、そうさせた人を代表して寄り添う誰かがいる。
2017-01-19 19:37:22
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
新しい居住区の完成式典は順調に進み、来賓の挨拶が始まった。だが短い祝辞は瞬く間に脱線して長話に変わった。会場がざわめく中、藍が私の上着の袖を引いた。「何があったの？」彼女は来賓の言葉を聞き取れず、通訳者の沈黙で問題発生を察したらしい。彼は想定外のアドリブに誰より困っているだろう。
2017-01-20 19:29:24
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1218。通訳者。 何を言い出すか分からない人の話を聞きながらその場で訳して話す。 それはとても困難な作業だ。
2017-01-20 19:29:30
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
私達が訪れた場所は建築資材の工場と聞いていたが、出迎えたのは場違いな悪臭だった。中をよく見ると鉄工達がゴミの山を運んでいた。「この辺じゃどこもこうやってる」鉄工の一人が言う。今は鉄鉱石を買うより古い世代の廃棄物から金属を取り出す方が安いらしい。「俺だって本当は造る方をやりたいよ」
2017-01-21 19:10:23
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
危険を顧みず山奥に住み続ける陶芸家は、怪物の営巣を報せても動じなかった。「今度見に行くよ」「これのために？」藍が彼の作品を勝手に棚から取り出した。奇怪な形には意味があるらしい。「そう。みんなの怒りの受け皿だからね」作品は全て麓の村の祭りに運ばれ、人々の投げる石で破壊されるという。
2017-01-22 19:18:26
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
市場をくまなく探しても目当ての魚は見つからなかった。聞けば一人の仲買人が全て買い占めたという。「つまり、その人を見つけたら手に入る、と」藍は前向きな発言を残して録音機能を止めた。既に料理対決の相手の差し金と察していたらしい。「あっちがお金で動かしたなら、わたしもやっていいよね？」
2017-01-23 21:14:33
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
暇潰しのつもりで、藍が書架から集めた本の一冊を手に取った。ある尼僧の手記と判ったのは中を見てから。気づけば半分まで読み進めていた。「その本」顔を上げると藍が怖い顔を全力で作っていた。「手がかりはある？」祈りと修行の日々に怪物の目撃談も登場したが、幻覚の疑いがある。素直に頷けない。
2017-01-24 19:55:45
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
端が見えない程長いテーブルに無数の縫い子が並び、黙々と何かを作っている。人数分以上のミシンの振動が騒がしい。「何を作らせているか分かる？」藍の出題を聞いて一応真剣に考えた。切り取られた布が彼らの手元でせわしなく回る。何の部品か。誰も手を止めないこともあり、私には判断出来なかった。
2017-01-25 18:43:28
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
店の前で車を降りる時、藍は用件だけ済ませてすぐ戻ると言った。だが一時間が過ぎても連絡さえ来ない。不審に思い店を覗くと、見習いネイリストに爪を任せながら談笑する藍を発見した。「話を聞くのに必要だったの、決まってるじゃない」藍は磨かれた爪をかざした。言い分は判るが、弾む声と合わない。
2017-01-26 18:54:24