「ムダの容認」がムダを省く

生産性の向上ということが求められているが、生産性を求めすぎるあまり、生産性が悪化するということが起きがちだ。それは「余裕」の有用性を見失っているからにほかならない。
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shinshinohara @ShinShinohara

「「指示待ち人間」はなぜ生まれるのか?」を書いたときも、当然ながら「指示待ち人間のどこが悪い?」という疑問が呈された。その通りだと思う。部下が指示待ち人間でもいっこうに構わない職場なら、別に指示待ち人間を悪く考える必要はない。 togetter.com/li/895830

2017-03-01 06:50:50
shinshinohara @ShinShinohara

ただ、昨今はどこの職場も忙しい。上司も自分の仕事を一杯抱えていて、部下に指示を出す時間も惜しかったりする。部下が指示を仰ぎに来ると「そのくらいのこと、自分で考えて処理してよ」とイライラしてしまうかもしれない。そんなとき、「うちは指示待ち人間ばかり」と嘆いてしまうのだろう。

2017-03-01 06:53:59
shinshinohara @ShinShinohara

最近は日本の企業でも即戦力としてヘッドハンティングしたりする。優秀でどこの企業にも引っ張りだこの人材なら、指示待ち人間の心配はない。しかし別の問題が出る。いきなりうまく調和できるか、という「不和合性」の問題だ。どれだけ素晴らしい肝臓でも移植してうまく機能するとは限らないのと同じ。

2017-03-01 06:57:27
shinshinohara @ShinShinohara

わざわざ高い給料を払って来てもらったのにうまくいかないと「あいつ使えない」と、責任転嫁しやすい。しかしそれは無茶というものだ。内蔵移植でも不和合性を克服し生着するまで慎重に養生する。その時間的猶予も与えないでいきなり機能しろというのは無茶なのだ。

2017-03-01 07:00:23
shinshinohara @ShinShinohara

外部から即戦力を雇ってもなかなかうまくいかない。内部の人間も育てる手間を惜しんでいたら指示待ち人間になっても仕方ない。およそ手っ取り早く自分の頭で考えて動く人間ばかりの職場にする、お手軽な方法はないと考えなければいけない。

2017-03-01 07:02:35
shinshinohara @ShinShinohara

最近は「生産性」を重視するあまり、職場に「余裕」がない。余裕があったらそのときも働いて生産性を上げろ、というわけだ。いわば弓の糸をいつまでも張り続けているようなものだ。しかしそうすると矢は飛ばなくなる。弓が弾性を失うからだ。弓を長持ちさせたければ弦を外さなければならない。

2017-03-01 07:05:34
shinshinohara @ShinShinohara

「いつも「時間がない」あなたに」では、興味深い事例が紹介されている。いつも手術室が一杯で、夜中の2時まで手術することもザラ。毎日そんな状態なので医者も看護師も事務スタッフも疲れきっていた。スタッフはみんな、手術室の増設とスタッフの増員を願っていた。

2017-03-01 07:07:54
shinshinohara @ShinShinohara

経営コンサルが分析した結果、意外な解決策を提示した。手術室を必ず一つ空けておくように、というものだ。医者もスタッフもみんな反対した。「入院患者と救急の患者でいつも手術室が一杯になっているのに、手術室を一つ空けておけなんて無茶だ」と。

2017-03-01 07:09:54
shinshinohara @ShinShinohara

ところが手術室を一つ空けておくことで、手術を予定通り行うことができるようになり、深更に至るまで手術するというような無理をしなくてもよくなった。救急の患者を引き受けても混乱がなくなり、結果的に月にこなせる手術数は大幅にアップした。なぜか?

2017-03-01 07:11:49
shinshinohara @ShinShinohara

空けておいた手術室は、救急用に限定したのだ。それまでは入院患者も救急患者も区別せずに手術していた。そのため、入院患者の手術のために準備万端整えても、救急患者の方が緊急性が高ければそれを片付けて新たに準備し直した。入院患者の手術はその後に準備し直し。そのロスが大きかった。

2017-03-01 07:14:35
shinshinohara @ShinShinohara

1つあけた手術室を救急専用にすることで、入院患者の手術を中断する必要はなくなり、予定通り進めることができるようになった。救急患者も空いている手術室に直行すればよくなり、ムダがむしろなくなった。手術室を一つ空けておくというムダを容認することでムダを省いたのだ。

2017-03-01 07:16:57
shinshinohara @ShinShinohara

アリもムダを容認することでムダをなくしている。アリはエサまでの道のりを道しるべフェロモンで印をつけている。あとから来るアリは道しるべに従ってエサまでたどり着く。しかしもともとエサを探して遠回りした道のりだから、ジグザグで遠回り。

2017-03-01 07:19:35
shinshinohara @ShinShinohara

そこにはぐれアリというムダな存在が役に立つ。この不真面目なアリは道しるべが分からなくなったり、わざと無視したりする。そんなものだからジグザグの道しるべをマジメにたどらずにエイッと近道したりする。それにより、エサまでの道がほぼ直線になっていく。ムダの容認がムダを省くのだ。

2017-03-01 07:21:58
shinshinohara @ShinShinohara

部下を育成する時間は、その間仕事が進まなくなるからムダに思える人もいるかもしれない。しかしそのムダをもったいながって仕事してしまうと、部下が育たず、いつまでも指示待ちになってしまい、自分の頭で考えて動いてくれない。指示を出し続けるというムダをいっこうに減らすことができない。

2017-03-01 07:24:03
shinshinohara @ShinShinohara

「余裕」という名のムダを惜しむと、結局何かのムダが発生する。そちらの方が巨大だったりする。組織は余裕を常に確保しておきたいものだ。

2017-03-01 07:25:56