日本における「歴史修正主義」という用語 ~導入編~

歴史認識問題における「歴史修正主義」「歴史修正主義者」とは何か、どのようにしてこの用語は日本で使われるようになったのか。 という事を考えるセルフまとめです。 著作権法上、問題となる記述があれば削除します。
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上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

原著は42の論文を収録していますが、「日本の出版事情の下では」全訳はとても不可能だったと述べています。そのため邦訳されたのは16本、ただ比較的長文なので分量としては半分程度。

2017-03-03 00:03:08
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

三島氏は、ハーバーマス氏の側に、すなわち反歴史修正主義(少なくともそう自認する)側に与する姿勢を強調しています。「ノルテやシュテュルマー」の論文という「自分になじまない物を訳すという、あまり楽しくない仕事を訳者の方々にお願いすることになってしまった」とあからさまに書くほどに。

2017-03-03 00:06:45
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

これはつまり、三島氏の周囲では、ノルテ氏やシュテュルマー氏に賛同する事はもちろん、その文章を読んで翻訳する事でさえ、後ろ指を指されかねない行為と認識されていたのでしょう。または、読者の苦情が来る事を予想したのでしょう。 #三島憲一 #過ぎ去ろうとしない過去 #歴史修正主義

2017-03-03 00:10:54
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

翻訳の話があったのは1993年春。日本の歴史認識問題は小休止の時期で、政権交代直前の8月4日の宮澤内閣・河野談話、そして政権交代直後、8月10日の細川首相発言で、一気に各方面の言説が活発になる時期でした。 序は1995年5月8日、初版は6月20日付なので、上梓まで2年少々。

2017-03-03 00:21:47
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

「本書が、ドイツの過去処理を崇拝し、日本のそれをなじる対象化的な議論を脱して、ドイツの問題点をよく承知することに、そしてそれによって日本の過去に関する一層敏感で、批判的かつ反省的な議論をすることに少しでも役立つならば、訳者一同、これにまさる喜びはない」(2頁)。

2017-03-03 00:24:37
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

解説では、まずユダヤ人虐殺の概要に触れます。その上で、戦後のドイツでは「知らなかった」「いつまでも過去に関わるよりは、未来の建設が重要である」「ヒトラーの責任だ」「共産主義の東側はもっと酷い」「アウトバーンなどいいところはあった」などと責任逃れの主張が相次いだという。

2017-03-03 00:30:42
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

なお、三島氏も指摘していますが、「アウトバーン」(自動車道)の原型は第二帝政期にすでに存在しましたし、アウトバーンがアウトバーンと名付けられたのは1929年のヴァイマール共和制期(より正確には、大統領は保守系無所属のヒンデンブルク、首相は社民党のミュラー)でした。

2017-03-03 00:38:37
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

ともあれ、主に反共を原動力にしたナチス擁護論、あるいは一般人無罪論は根強く存在し、1967-68年の学生運動で糾弾の対象になった事、それでいて東側とは距離を取りつつリベラル左派が主流となった事。しかし保守反動の表れとして、近年ノルテらが幅を利かせるようになった…という認識です。

2017-03-03 00:44:08
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

さらに言えば、三島氏らはノルテ氏らを完全に馬鹿にしています。 そして、議論ではハーバーマス氏の側が優勢であるのに、「技術的にはるかに落ちる」ノルテ氏らは、学問である事を放棄して、日常的にわかりやすいレトリックで保守連中の支持を得やがった。という嘆きが見えます。

2017-03-03 01:10:22
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

三島氏は、ノルテ氏らを「ナチスの犯罪を多少とも相対化し、ドイツ国民の誇りを維持することをもくろむ人々」(247頁)と定義しています。その「物語的」な「装飾音」の典型として、たとえばノルテ氏のこの文を挙げています。 twitter.com/letssaga3/stat…

2017-03-03 01:13:30
上野 良樹@新型コロナワクチン×4 @letssaga3

「暗闇に対する光の勝利について語られる場合、それは素朴なオプティミズムな仕方で理解されてはならない。光の中で、はじめて光の部分は明るく、影の部分は暗くなるのであり、光のなかでのみ戦いが戦われ、光のなかでのみ傷口はあるがままにさらけ出されるのである」(28頁)

2017-02-21 00:22:02
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

ともあれ、三島氏が見ているのは、馬鹿にしていたはずの修正主義者、そして保守派の「勝利」でした。 原著が上梓された1987年から、ベルリンの壁崩壊までたった2年。その翌年にはドイツは再統一されました。そしてドイツ再統一は、キリスト教民主同盟のコール政権によって果たされたのでした。

2017-03-03 01:16:16
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

本編でも、保守政党のキリスト教民主同盟(CDU)・社会同盟(CSU)支持者と革新政党の社民党(SPD)支持者の喧嘩の要素がありました。この間、1987年、ドイツ再統一直後の1990年、そして94年と保守の連勝でまさに絶頂期でした。ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89…

2017-03-03 01:23:24
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

本編では、東ドイツの変化は、ヒルグルーバー氏が指摘していますし、またドイツ再統一を見据えた歴史認識問題という認識もあったようです(192頁)。しかし、西側支持という点では全員が一致していたとは言え、これほど早く東独が消滅するとは、たぶん誰も予想出来なかった。

2017-03-03 01:28:48
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

再び三島氏から。ドイツ再統一で、これまで行き来が難しかった地方、たとえば旧東独や、かつてのドイツ領で現在はポーランドやロシア領になっている地域への感傷旅行が流行した。そして、「普通の国家」「自覚せる国民」になろうという声、それどころかガス室否定論者までが性懲りもなく蔓延っている。

2017-03-03 01:33:58
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

犠牲者の代弁は難しい。まして、戦争を知らず、戦後の豊かさを享受しながら代弁者気取りをされると生理的反発が働く。そういうリベラル・コンセンサスへの反発は理由のある事だが、犠牲者が忘れ去られ、追悼か拒否されたなら最低限の連帯も不可能になる。だから千回ともう一回でも反論しなければ。

2017-03-03 01:40:38
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

ドイツの謝罪について。ドイツに比べて日本は酷い論、三島氏はそう単純では無い事を指摘しています。ドイツは金額的には膨大だが、「国家賠償はきわめて少ない」し、共産圏の被害者への補償は手薄。朝日選書『戦争責任・戦後責任。日本とドイツはどう違うか』所収の広瀬清吾氏の記事を参照との事。

2017-03-03 01:45:23
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

といって、西尾幹二氏のように「民族の維持を狙って頭を低くするドイツ人のしたたかな計算を云々」しても、日本の犯罪を軽減する作用は免れない。 ドイツだって国家として冷たいから、日本もそうしろというのでは無く、ドイツの問題とともに日本の問題も、もっとはっきり浮かび上がらせる事が必要。

2017-03-03 01:47:58
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

日本の帝国陸軍は、中国大陸で蛮行を働いたが「ジェノサイドを計画し、実行したことはおそらくない。」といって、蛮行や植民地支配の負債は減らない。そして日本の戦争とその責任を、依然として引きずっている。いずれにしても、日本の自己弁護や赦免に向かわない議論を主張しています。

2017-03-03 01:51:05
上野 良樹@コロナワクチン接種完了 @letssaga3

三島氏の解説終わり。 ちなみに、英語版後書きのピーパー氏の文章と並べますと、双方に気を遣っているピーパー氏と、反歴史修正主義・ハーバーマス氏支持で旗幟鮮明にしている三島氏との違いが、より一層楽しめます。

2017-03-03 02:00:46
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