ドリーとセンディスの、大事なお話

時系列:POD。かつてセンディスが持っていた《希望の箱》から復元されたドリー(ザダムドリータの一部)が、センディスと大事なお話をする。
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ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 もう一度。何度でも。 「俺は好きだ」 「センディスが、好き」 安心して、呼吸できるようになるまで。 叫び続けた声が嗄れたあとだって。 伝える。 「好き」 「好き」 「好き」

2015-06-22 22:12:00
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD どちらのものかもわからない早い鼓動と、注がれていく「好き」という響きにおろおろと緑が揺れる。 「すき」 「すき」 「すき」 反復するように、頷きながら呟く。

2015-06-22 22:24:28
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD ひとつ、ひとつ、呼吸を落ち着けるように言葉を吐き出してみる。 「女の子じゃなくてもいい」 「花じゃなくていい」 「花壇にしたいわけじゃなかった」 ずっと果たせなかった約束の事ばかり考えていたせいか、一番最初の思いを忘れていた。

2015-06-22 22:28:54
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「僕は君ともっと話していたかった」 「生きてる君と」 「なんならちょっとくらい僕のこと食べてみてほしかった」 ここまできてしまえばもうこんなの「興味」なんかじゃなく「好意」だ。 「それくらいに、好きだよ、ドリー」

2015-06-22 22:30:39
ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 食べてみてほしかった、だなんて。 わいた生唾を飲み込む。 食べたい。 しなやかな脚をもぎ取って、筋繊維を犬歯で食いちぎって。 臓腑の襞から骨髄の汁まで、舐めて、啜って、飲み込んで。 全ての味を堪能したい、けど、そしたら、センディスはいなくなっちゃう。

2015-06-22 22:44:56
ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 だから、 「話したいな。俺も」 センディスの耳たぶを甘噛みして、耳元で囁く。 言葉を交わすこと。 言葉を理解すること。 感情を交換し、互いに互いの一部を担うこと。 それは、獲物を捕食し、血肉にすることに似ている。 もっと、声を聞かせて。

2015-06-22 22:53:25
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「……ひゃ、ぅあっ」 まったく慣れない耳への甘い刺激と囁きに情けない悲鳴。 噛まれたのだと気づいて余計にその耳が真っ赤に染まる。 仕返すように真似して耳元に唇を寄せ、こそりと囁く。 「あ、えと、改めて、よろしく……ね」 「ドリー」

2015-06-22 23:26:40
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「聞いて、僕のはなし」 ぽろりと止まっていた涙の栓がまた緩んだようで、困る。 まだ頬が乾いていなかったのにまた濡れる。 「いっぱい」 「話して、君のはなし」 そういうことがしたかった。 そうやって君と笑ってみたくて そうやって始めてみたかった。

2015-06-22 23:44:29
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「初めて、かも、しれないんだ……こんな風に、誰かに好いてもらって、言ってもらえるの」 嬉しいような困ったような消え入りそうな声で呟く。 「でも、だからこそ、僕は君に謝らなくちゃいけない」

2015-06-22 23:53:26
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「ごめんね」 「もし、もしも、君が僕を、僕がゴルディウスを見るような気持ちで、焦がれるように見てるなら、僕が君の方を同じように本当に向けるのは、ずっと時間が経ってからになるよ」 「ひどいこと言ってるのはわかる。だって僕もそっち側なんだから」

2015-06-22 23:59:49
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 本当に惨い。 どうしてこんなことしかできないのか どうして僕がこんなにももがき苦しんでいることを大好きな君にも押し付けなければいけないのか。 いや、これで諦めてくれるなら、それでいい。それがいい。 でも僕と同じならできないはずだ。 惨い。

2015-06-23 00:07:22
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 違う。もしも希望があるとするならば 「僕と話して。そこから始めて、待っててほしい。ゆっくりだけど、君の方を向くよ」 「いつか、ゴルディウスに、ゴルディウスがくれるだけの愛を、正しく渡せるようになったら」

2015-06-23 00:13:59
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 返ることのない過剰な愛情ではなく、彼がくれる相棒への信頼と慈愛と同じものだけをきちんと渡せるようになったら。 そんな日は来やしないと思っていたけど。 たった一人ではできるわけもないと思ったけど。

2015-06-23 00:19:18
センディス @sendis_19

@sendis_19 @RavenWalker_POD どこへ向くかの方向を 君の声が、 君の手が、 君の何かが、 君の存在が、 教えてくれるなら。 「その時は君を愛してる」 .

2015-06-23 00:23:43
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「だから、まずはこうやって、話してほしい、な」 僕の酷い願いを、あげる。

2015-06-23 00:25:14
ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 センディスの言葉に、黙って耳を傾ける。 それらは真実。 同じものを、俺だって胸に持っている。きっと。 だから、何も言うことができなかった。 渦巻く感情はそのすべてが本物で、どうにもならない強い力で精神をかき回し、分裂させる。

2015-06-23 00:54:49
ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 強い気持ちはそれだけで力だ。 だからこそ止めることができない。どんなに自分や他人が傷ついたとしても。 ……だけど、俺は。 俺はセンディスに、傷ついていてほしくない。

2015-06-23 00:55:22
ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 「話そう」 「俺がセンディスの、気持ちの受け皿になるよ」 「感情の天秤が、ちゃんと釣り合うように」 「センディスの感情が、センディス自身を傷つけないように」

2015-06-23 00:55:41
ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 既に一度死んだような身だ。 どんなに長い時間でも、どんなに残酷な言葉でも、死よりは些細なこと。 まして、痛みを受けとる度に、センディスの心に近づいていけるなら。

2015-06-23 01:06:27
ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 「いっぱいいっぱい、俺を傷つけてほしい」 首筋に噛みつき、軽く歯を立てる。こんなふうに、痕が残るくらい。 「わがままになって」 「無茶苦茶言って」 「駄目になっちゃっても、いいよ」 センディスから、離れられないから。

2015-06-23 01:13:56
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD ずっとこんな言葉や痛みを欲しがっていたのかもしれないと、首筋に立てられた歯が食い込む痛さに体をびくんと震わせながら思う。 噛みつかれた首と、それから胸が熱くて痛くてたまらなくて涙が止まらなかった。

2015-06-23 02:42:44
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 呼応するように右の胸のずっと奥の核まで、ずくりずくりと爛れていくように熱い。 「ぅ゛……う゛う゛ぅああああ゛あ゛あ゛あ゛っ」 声をあげてしまう。 「こわれ、ちゃう……っ」 「ぼく」 「そんな、だめになったら」 「うそ」 「もう、だめ、だ」 呻く。

2015-06-23 02:44:00
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「きみのせいだよ……」 恨むように、 「きみの、おかげだ……」 感謝するように、 「よくも、こんな僕を好きになってくれたね」 こんな風にひねくれたことも言ってしまう僕なのに。 正直、まだうまく受け止め切れてはいない、けど、決めた。

2015-06-23 02:45:48
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「これから何度も何度も君と話して」 「何度も何度も君をゆっくり傷つけて」 「僕はわがままで駄目になってくよ」 「見ていて、ね……」

2015-06-23 02:47:59
センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 始まりの傷を。君につけてやろう。これからもっと深く傷つけるだろうけど、まずはこれだけ、君の中に僕を触れさせよう。 僕は手を伸ばしていいんだ。 首元の布をそっとよけて、口づけてから、拙く噛み付いた。

2015-06-23 02:49:30