ドリーとセンディスの、大事なお話

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 「花壇になったら、センディスに手入れしてもらいながら生きていけるだろ」 ついでに根っこから人肉食ったりとかもできそうだし、と笑って付け加える。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD なってもいいという言葉に食いついてしまうのはもうしょうがない。そういう性だ。 「いいかもしれない」 「この空になった箱にもう一度君を敷き詰めて、花を植えるの」 「ちっちゃい鉢植えに君はなれるよ」 熱っぽく興奮したようにまくし立てる。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「ああ、いいなあ……」 ついつい熱っぽい息が漏れる。 「広いお外の花壇も好きだけど、部屋に飾れるような鉢植えも僕大好き」 「植えるなら金魚草」 「きちんと夏越しすれば一年中そばで咲いててくれる」 「同じような鉢を横に並べれば寂しくもないし」

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「君がほしがるならいくらでも養分になりそうな人間を放り込むし」 「ふふ」 「ああ……」 想像した。 僕の部屋で揺れる金魚草。 それが咲く小さな箱の形をした鉢植え。 敷き詰められた君。 君から咲いた花を眺めていられたらどんなに。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD そんな君と季節を越していくのはどんなに。 どんなに楽しくて、 どんなに悲しいだろう。 「なんでだろう……駄目かも」 急に寂しくなってきて、撫でていた手を下へやって、弱く抱きついた。

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 熱に浮かされたようなセンディスの言葉を、一つ一つ頷きながら聞く。 本当に、花を愛している。 きっと、花にも愛されている。 ……花を愛している。 手の届く場所に置いてくれて。 枯れないように世話を焼いてくれて。 水と栄養と、そして愛を注いでくれるだろう。

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 花を語るときの、熱を帯びた目線が好きだ。 花壇いじりに夢中になって、土まみれになった手が好きだ。 お仕着せの倫理じゃなく、自分の気持ちを頼りに進んでいく、その足取りが好きだ。 (パンケーキを頬張る、少年みたいな笑顔が好きだ。)

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 「……なんで、花壇じゃ駄目なんだ」 センディスが好きなモノ。 それになれたら、俺は嬉しい。 だから、 「俺は花壇になりたい」。 不安そうな面持ちのセンディスを、おずおずと抱き返す。 左の腕を背中に回し、さっきセンディスがしてくれたみたいに、右手で髪を撫でた。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 抱き返されて情けない気持ちになる。 何をしてるんだろう僕は。 ドリーは花壇になりたい。 僕は花壇になった彼を世話して花を咲かせて見つめ続ける。 どこがいけない？ 何が嫌なんだろう？ 「花壇じゃだめだよ」 何故かがわからない言葉だけが口から出る。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 戸惑い気味に撫でてくれる手が優しくて。 思い出した。 また会えると思ってた君が消えて、龍に成って、龍は人に成って。 君は箱の中に仕舞われてそばにいた。 僕は君のことを考えては箱を眺めた。 色んなことを考えて、思って、箱を抱きしめてた。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD ようやく今日、そうしてる僕のことを君が感じてくれていたことはわかった。 でも、やっぱり 「さびしいよ」 思い出した感情はそれだった。胸の疼痛。 「そばにいても話せない」 「君のことがわからない」 「こうやって触れることもできない」

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「僕は君の動いてる姿を追ってた」 「食べ物を探してる目も」 「困ったように歩いてるところも」 「話してる時に笑って豪快に開いた口も」 「血で真っ赤になったその口がもっと大きく開いて肉にかぶりついてるところも」

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD これ以上はダメだ。わがままだ。駄々に過ぎない。警告。 「僕を、見てくれた」 「僕と話してくれた」 「花壇になってもいいって」 「そんな君を好きにならないわけがないのに」

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「好きな子が花壇になって、花を咲かせてくれたら嬉しいのに」 「花壇にしたら好きな君はなくなっちゃうんだよ」

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 「俺？」 笑いながら言った声がみっともないくらい震える。 「俺は花じゃないって、見てればわかるだろ」 俺は選ばれない。 俺は何者かにはなれない。 俺はただ食い殺す。 そして誰もいなくなった。 俺は。俺だって。 さびしいよ。

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 「センディス、は、俺が、」 「好き、なのか？」 センディスが我慢しようとした言葉を拾い上げたくて。 言葉だけじゃ足りない。 髪を撫でる手を後ろに回して、頭ごと抱き寄せる。 少しだけ、言葉が伝わる距離が、近くなる。

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 「俺は」 「センディスが」 「好き」 やっと言えた。 怖くて言えなかった。 何も伝えず花壇になれたらそれでいいと思っていた。 だけど、さびしいなら。 言わなければ。伝えなければ。 ドリーは選択する。 「センディスが好きだ」と伝えることを、選択する。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 抱き寄せられて近くなった距離に安心と同時に胸がばくばくとうるさい。 苦しくて目をつむった。 声だけが耳の近くでする。息をする音も聞こえる。 迷うような、でも何かを選んだ呼吸がひとつあって、 『好き』 と、いやにはっきり耳に届いた。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 好き？ なにが？ きみがぼくを？ え？ 思わず目を見開いてまじまじと見つめてしまう。 それ以外の動作がまるでできない。 人に好きだと言われて、こんなに戸惑うなんて。 もっと普通にありがとう、とか、嬉しい、とか、言うべきだと思うし、言いたい。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 言いたいのに、言葉よりも先に涙が出た。 「…………っ」 何か言おうとして口を開けても、変な音しか喉から出てこない。 過呼吸みたいで滑稽。 落ち着きたくてドリーに強くしがみつく。 伝えてくれたことに、返したい。

センディス @sendis_19

@RavenWalker_POD 「はなじゃ、なくていい」 「ぼく」 「きみがすきだったんだ」 絶え絶えにそんな言葉が口から飛び出た。

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 置いてけぼりにされた子どものような、途方に暮れた瞳。 見る間に涙が、言葉にならなかった情報が、溢れて。 強い意志の光るその目が、なぜ戸惑いに濡れるのか。 風のように言葉を紡ぐ唇が、なぜ嗚咽を漏らすのか。 穏やかに俺を撫でていた手が、なぜ小刻みに震えるのか。

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 痛い。 自分の心が刻まれるような。 こんなに、痛い、なんて。 だけど、同期していたい。 少しでも近くにいたい。 センディスが落ち着くように、回した腕で強く引き寄せる。 早鐘のように鳴っている心臓。 俺の鼓動も、どくどく、共鳴して。 胸が、震えて。

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 告げられた言葉を。 ひとひら、ひとひら。 噛み締める。 夢、みたいだ。 「俺は"女(ブロンディス)"じゃない」 「俺は"花(ゴルディウス)"でもない」

ザダムドリータ・クロバキウス @TheDamnedRita

@sendis_19 「俺はドリー。それで、いいなら」 ドリーは人食いだから。 センディスの風を澱ませる人間は、生者も死者も食い殺す。 解体して、分解して、草花の糧に変えてやる。 あんたの中に深く食い込んで、 欠落した場所に居座ってやる。