逆理飛旋①(~5/1)

GC大戦有志異聞『絶望ノ極大混沌再来期』 ソロールなど。5/1ぶんまで(以降②に続く)
0
前へ 1 2 3 ・・ 9 次へ
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 折れた骨の代わりを一時的に構成する、体内の音が聞こえる。鱗が身体を覆うのと同じ、微かな金属音。向けられた切っ先が繰り出す次の攻撃に備えていると青年の続けた言葉が耳に入る。 「なに?」 今、心臓を狙うと言ったか。何故。いや正しく問うならば、どうして先に狙いを告げるような真似を? →

2017-04-01 19:11:07
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart しかし考える時間は与えられなかった。狙うと言われたその位置には、故郷の村の社で祀られていた玉彫りの竜が。 壊されるわけには、いかない。 「させんっ!」 心臓を狙うならば剣筋が限られる。その言葉が嘘であっても、一撃を躱す術は。 破れた布の下、露出している邪紋が燦然と輝いた―― →

2017-04-01 19:26:17
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 心臓を突かんとする強烈な一撃を、目視で捉えようとはせず。 全力で地面を蹴って、飛び上がる。 混沌の力で大きさを増した白妙の翼が身体を空高く導いた。レオンの動きを顧る余裕はない。風を読み旋回し、宣告された一撃を躱すことさえかなうならば――己の命より重い、この彫物を守れさえすれば!

2017-04-01 19:29:31
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin レオンの剣筋は嘘を吐かなかった。 彼の放った神速の突きは、寸分違わず一瞬前までルゥインの心臓――と、彫物――があった位置を穿っていた。 しかし、すんでのところで竜がそれを躱す。翼をもって飛翔する。本来人間には許されぬ、三次元的な動き。英雄の剣先は空を斬った。 「……」 →

2017-04-01 19:54:36
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 男が、下から天高く舞う白龍を見上げる。 「なるほど、美しい」 驚くほどに素直な賞賛だった。 太陽を背に受け、蒼穹に浮かぶ白亜の翼。点々と地に落ちる紅が鮮やかだった。 「だが――」 彼の者は英雄。始祖君主レオン。その偉業を模倣する者。 「竜とは退治されるもの。打倒されるものだ」 →

2017-04-01 19:58:30
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 「始祖君主の最初の偉業を知ってるか?」 ――彼の騎士、原初の獅子は、現在のエーラムにあった『竜の巣』なる魔境を祓い、人類の礎を築いたという。 ならば。 この身、この邪紋、この魂が。 それを模倣せずにはいられようか――。 「悪竜退治は英雄の嗜みだぜ。そんでもって、」 →

2017-04-01 20:01:49
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 風が渦巻き、逆巻き始める。レオンの周囲に風の流れが生まれる。青年の頬を彩る邪紋が金に輝いた。 「空を飛べるのがテメェの専売特許と思うなよ!」 強く踏み込み、一歩。大地に罅が入る。男の身体が跳ね上がり、脚力だけでルゥインの飛翔する高さに達した。 腕。脚。胴。剣。四肢に風を纏う。 →

2017-04-01 20:04:41
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 風エーテルの能力。 風の援護を受け、剣士は天高く飛ぶ。 足場の無い空中ですらバランスを一切崩すことなく、正確無比な斬撃がルゥインへと放たれた。

2017-04-01 20:06:48
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 己の身が攻撃を受けなかった。飛翔の邪魔もなかったということは、レオンは宣言通りに左胸を狙っていたのだ――辺りに残る混沌の余韻。あの突きが直撃していれば竜の彫物もろとも砕かれ、命もなかったに違いない。一瞬の安堵と小さな震え、収まらぬ熱が背中に流れた。→

2017-04-01 20:40:15
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 始祖君主の偉業、竜の巣の掃討。この身が悪竜と言われたときに何かがまた疼いた。 「知らないとは言えんな、学のない私でも――む、馬鹿な!」 言いかけたところで風の流れが妙になる。自分の周り以外はほぼ凪いでいたはずの空気が、不自然な方向に吸い込まれていく――”レオン"の元へ。 →

2017-04-01 20:41:03
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 飛び上がって宙に悠然と浮かぶレオンの姿から離れようと、咄嗟に羽ばたき風を立て、空に咆える。 「旋れ疾風、刺せ天水!我は此れ、山海の血を承けし者なり!」 体外の力がこれに応える。巻いた一陣の風は翼を持ち上げ、剣の勢いが鱗のないところに直撃するのだけは辛くも避け―― →

2017-04-01 20:41:42
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart しかし、足りない。剣を受け止めた腕の鱗が数枚、弾けるように砕け飛ぶ。鮮血が鱗を伝って地に落ちる。 防戦一方ではどうにもならない。死ぬにせよ、逃げるにせよだ。接近の度に一撃ずつでも加えなければ隙すら生まれない。自分からの接近は無謀であるとも言えたが、間合いを詰めねば当たるまい。 →

2017-04-01 20:43:39
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart この身に流れる竜の血は、一度滾れば激昂と狂熱を霧散させることを許さない。 「我が身は、竜なり!」 竜の爪、それも剣を受け止めた腕の肘の外側に伸びている鋭利な爪で斬りかかる。レオンの重撃を受け止めた腕を避けるのと同時の、流れるような動きで。

2017-04-01 20:51:33
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin ルゥインが避けようと風を操る。 「ハッ!」 青年が嗤う。風が、途中からルゥインの手を離れ、レオンに従った。 「混沌の制御で俺に勝てると思ってんのか。百年早ぇよ」 それは有り得ぬ話だった。 雨水と風を司る龍神なる血を継いだはずの龍の青年の手を、その配下が離れるなど。 →

2017-04-01 21:28:20
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin けれど――風は、混沌は、白龍の手をすり抜け、英雄たる男に寄り添った。 まるで己の主を定めるように。 「我が身は混沌の申し子。我が身は邪なる紋の現身!――風よ、」 俺に従え! その一言で。 周囲の混沌の風の支配権が、レオンに奪われる。 加速し、一撃。鱗が飛ぶ。 →

2017-04-01 21:31:42
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin けれど龍は不屈。反撃の一矢報いようと、互いの力を利用して牙を剥く。 実に完璧な一撃だった。並の英傑なら屠れた一撃だった。 相手が――この化物でさえなければ。 「甘いっての」 剣を持たぬ左手が動いた。爪を素手で掴む。ざり、と皮膚が斬れる感触がすると同時に、溢れた血が瞬時に固まる。→

2017-04-01 21:37:54
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin そして。 強風が吹きつける。爪の突き刺さった左手を軸に――風に煽られたレオンの身体が振り子の如く回転する。 勢いをつけ、ぐん、と逆上がりの要領で。 ルゥインの腕に触れたままだった刃は更に鱗を削り皮下の筋肉を裂き。 上下翻った男のブーツの踵が、激しく竜の顔面を蹴った。

2017-04-01 21:42:26
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart これまで味方になることはあれ、敵になることなどなかった風が己を離れた。羽ばたけども重く、そればかりか地面に押し付けられるように、重く、重く、重く、身体に圧し掛かる。焦燥が判断力を鈍らせる。 捕まれた爪を勢いのままにその手から逃そうとするが。 →

2017-04-01 22:25:51
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 「っぐ、あああ!」 ……無意味なのだ、この「英雄」の力の前では。鱗の下にまで届いた刃はその痛みを直接神経に走らせる。戦闘のために五感を研ぎ澄ませた身体では、痛みから意識を逸らしてレオンの動きに注意を払うことなど、不可能であった。  叩きつけられる。 →

2017-04-01 22:26:26
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 叩きつけられる。 踵の一撃を受け、脳を直接揺さぶるが如き衝撃で視界は赤と白に染まった。 落ちる。 風の援護を失い宙に留まるだけで精一杯だった、大きな白い翼の羽搏きは止む。 落ちる。 遥か遠くの地面に叩きつけられる。 叩き落とされる。 →

2017-04-01 22:27:11
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 「……私は」 死ぬのか。二度目に「故郷」を失った私の行く先が一つに絞られた。成程、道理よな。二度も守ることができずに、力を奪われ足掻いただけの私には相応しかろう――意識を手放そうとした瞬間に、身体の中を混沌の力が駆け巡る――私の制御を離れて。 →

2017-04-01 22:28:37
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 身体が作り替えられていく。最早人の原型を一切留めることなく、長い首と、長い尾、蛇のようにうねる身体、白の鱗が再構成されていく。まさにそれは龍、そのものの姿に作り替わってゆく。ばさりと一つ羽を動かして、落下の勢いを抑え――響き渡る艶やかな声で龍は咆哮した。

2017-04-01 22:31:44
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 痛みにルゥインが呻き声を上げる。 白龍は風の加護を失い、力を喪い、重力に引きずり降ろされるように墜落を始めた。 もはや勝負は決したに近かった。 男の左手から爪が抜ける。傷口はすぐに体内の混沌によって修復される。 「……終わりだ」 風はレオンの味方についている。 →

2017-04-01 23:39:05
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin ふわりと浮かせた身体を、重力に任せ――その心の臓へ、トドメの一刺しを食らわせようとする。 が。 英雄の剣先が触れるより先に、ルゥインの危機に瀕して、『龍神』が吼えた。 それはルゥインを護ったのか。 あるいはルゥインが喚んだのか。 胸元より発された光が混沌の色を映し、青年を包む。→

2017-04-01 23:42:15
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin それは――見た事の無いドラゴンであった。 レオンの知るドラゴンとは違う、遠き星、異界の地にて伝わる蛇に似た龍。ルゥインの肉体がその魔性そのものに変生し、輪転し、そうして、艶やかなる叫び声で――雨雲を、呼んだ。 一瞬。 ほんの一瞬だ。 レオンの支配すら振り切る超級の混沌が。 →

2017-04-01 23:45:43
前へ 1 2 3 ・・ 9 次へ