逆理飛旋①(~5/1)

GC大戦有志異聞『絶望ノ極大混沌再来期』 ソロールなど。5/1ぶんまで(以降②に続く)
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万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 空中の水分を集め、寄せ、雲を作った。 ぽたり。 水滴が落ちる。 雨だ――そうレオンが認識する前に、それは――空より流れ落ちる滝が如くの激流となって二人を襲った。

2017-04-01 23:47:34
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 地面に接触する寸前、龍は僅か舞い上がって啼く――その声から程なく、太虚に湧いた黒雲が龍の直上に集まった。 るろろろ……るるるる、ろろろ。 飛瀑をいくつも束ねたような水の塊。竜の放つはずの炎や毒の息とは似ても似つかぬ激流。瞬きで見逃せるほどの、一瞬のことだった。 →

2017-04-02 00:07:02
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 激流は辛うじて宙に留まるだけの龍を避けることなく、厚く渦巻く混沌を押しのけ圧し掛かる。それは「英雄」の剣に貫かれることばかりを、激しく、強く、命を失うとしてもそれを拒み、憎むかのように。→

2017-04-02 00:07:41
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 水の落下音が消え去って辺りが静寂に包まれた直後、「ぱきん」と罅が走る音。龍を覆う無数の鱗が剥がれ――正確にはその龍自身が鱗を残し消え去って、雪のように、花弁のように、舞い落ちて地面を白く染めた。 どさり。 後には腕に傷を負い、ずぶ濡れになった男が一人、白鱗の絨毯に落下した。

2017-04-02 00:08:23
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 水の塊が落ちてくる。猛烈な勢いで。 激流は白龍と英雄を呑み込んだ。白龍は男の剣の届かない遥か下へと流されていく。 「チィッ!」 剣を掲げ、激流を斬る動きをした。 ばちん、と音がし、激流が弾かれ、男を避けるようにして流れ落ちていく。混沌による水の嵐は、彼を傷つけることはない。 →

2017-04-02 00:21:18
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 風雨に護られたルゥインと同じように。 瞬きの間に領地一帯を水浸しにするほどの水が天より降った。死体は流され、木々は地に還った。一瞬後には空は晴れ上がり、蒼穹に虹が掛かる。その場には二人のずぶ濡れの男だけが遺された。 「……ルゥイン」 レオンが身を起こす。 →

2017-04-02 00:25:00
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin その身は頭から水に濡れてはいたが、龍神の怒りに触れてなお傷一つ負っていなかった。 剣を持ち、男が倒れたままの青年へ歩み寄る。 「俺の勝ちだ」 足の下で鱗が踏み鳴る音がした。

2017-04-02 00:26:58
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 腕や手を覆っていた鱗も、翼も尾も消え失せた。立ち上がることすらままならず、視界に入るのはただ青空と、ぼんやりと漂う虹ばかり。邪紋も沈黙し、心臓の鼓動も感じることができない。二度目こそは胸を刺し貫いたはずの、レオンの最後の一撃は受けずに済んだらしい――何故だ? →

2017-04-02 00:37:55
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 戦っていた仇敵の声を耳にし、今出せる全ての力を振り絞って上半身を起こそうと肘をつく。 「レオン」 白銀の上に立つ姿は無疵、消耗の色のない英雄の声。どこにも、その宣言を否定できる要素など、ない。 「……そうだな。貴様の勝ちだ」 まだ己が生きているのもただ、延びたというだけのこと。→

2017-04-02 00:38:57
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin ルゥインは明らかに消耗していた。怪我もしている。おそらく、今なら楽に殺せるだろう。剣を軽く走らせるだけでいい。 「……そのつもりだったが、」 気が変わった。 そう、小さく囁いて。 男は、青年の胸元に剣を突き立てる。 →

2017-04-02 00:45:39
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 切っ先が沈む。血がたちまち溢れ出た。けれどその刃は心臓へは至らない。 カツリ。 何か硬いものに金属が当たる音。 「お前は生かす。その代わり」 レオンは、ルゥインの『そこ』を十字に裂いた。 紅と、薄紅に染まった鱗が飛び散る。ルゥインの裂かれた胸から金に輝く龍の彫物が転がり落ちた。→

2017-04-02 00:48:42
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 青年が慌ててそれを拾おうとするより先に、英雄の手が『それ』へ伸びた。 彫物をレオンが拾い上げる。 血に塗れた金色を獅子が撫でる。 「コイツを貰っていこうか、龍よ」

2017-04-02 00:51:00
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 剣を突き立てられて為す術なく鱗の海に沈む。ここが墓となるならそれも悪くない――待て、今、「そのつもりだった」と、彼は言ったか。身体に剣の当たる衝撃が響く。カツリ。その音が鳴るとすれば、彫物を肌身離さず持ち続けるために、自己改造を固定した、常に鱗の残る胸元。→

2017-04-02 01:09:02
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart それを砕かれ剥がされる激痛。レオンの刃を妨げる力はない、痛みに耐えかねて宙を掻くように伸びた手も遠くレオンに届かない。 「待て、それは」 これだけ完膚なきまでに叩きのめされてなお、憤りという感情がまだ己に残っていたようだ。その熱が身体を動かすことは、なかったが。→

2017-04-02 01:09:54
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 痛みと憤りと――これまで覚えたことのない行き場のない激情。それは屈辱――レオンが手にしているのは、故郷で大切にされ社に奉じられていた、守り神の彫物。 「……返せ」 その呻きが聞き入れられるはずもなかった。 「持って行くなら」 私を殺せ。そう続けようとして言葉を飲み込む。→

2017-04-02 01:12:20
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart もう戦う力など残っていない己を殺した後にそれを持っていくことだって彼には容易であるのに、レオンは敢えてそうしないというのだ。ならば、ならばここで、私は何を言うべきだろうか――濁った意識と裂かれた痛みが、収まるはずもない激情が、言葉を継ぐことを妨げている。 →

2017-04-02 01:16:33
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 邪紋が疼いた。これまで一度も吐いたことのない呪詛を紡ぐために、燃料の切れた機関が命を削って最後の動力を生み出していた。 その力に従い、全身に巡らせて立ち上がる。 「ここで私を殺さなかったこと、後悔させてやろう……!」

2017-04-02 01:20:01
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 低く唸るように、翼を折られた龍が吼える。彼にしては珍しくその穏和な顔を歪め、呪詛の言葉を吐いた。 レオンはそれらを、鼻で笑う。 「後悔、できるといいなァ?」 知っている。この彫物が彼にとってどんな意味を持つのか。 分かっている。これを奪われることが何を意味するのか。 →

2017-04-02 01:45:37
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin その物自体の価値や意味を知らずとも、心臓の位置にわざわざ埋め込むほどの代物だ。命以上の価値を持つ。 だから奪った。 命の代わりに。 激情を滾らせ、辛うじて意志の力だけで立っている。そんな青年へ、レオンは一歩近づく。 脚を掛けた。 容易く相手は転ぶだろう。 →

2017-04-02 01:48:59
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 再び地面に転がされたルゥインの首の真横に剣を突き立てる。地面に切っ先が刺さり、刃が龍の首の薄皮を切った。 息を呑む青年の隣へしゃがみ。 酷薄な視線で刺し貫き。 耳元へ唇を寄せる。 そして、囁く。甘く。優しく。 冷たく。 残酷に。 →

2017-04-02 01:51:41
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin . 「テメェなんざ殺す価値もねぇんだよ」 「自分の力で羽ばたけもしねぇ、借り物の龍モドキが」 →

2017-04-02 01:53:03
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin それだけを言って、男は顔を離した。 剣を地面から抜き、鞘に収める。 踵を返して、ぬかるんだ地面を歩いて去ろうとする。 二度と、白龍の方を振り返りもせずに。

2017-04-02 01:54:26
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 「……っ」 立ち上がれない。転ばされたからではない。邪紋が再び沈黙したからでも、大切なものを奪われたからでも、ない。 首を滴り落ちる液体は既に冷たく、折られた骨の痛みが今更のように刺し始める。 どくん。 恐怖でも激情でもない、底知れぬ衝撃が全身を貫いたからだ。→

2017-04-02 02:05:12
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 確かに命は失わなかったかもしれない。だが。 借り物、か。 その言葉にはすっと腑に落ちる何かがあった。歩き去る後ろ姿を霞む目で追い、遠ざかる足音を音が混ざる耳で聴く――濁る。思考が濁る。 「……ふん、上等、だ」 全てを使い果たした身体はそれ以上意識を保つことを放棄した。→

2017-04-02 02:14:01
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