5/7～　反英雄討伐イベント特殊リアクション

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin ルゥインの肉体から流れ出す血が、真紅から黒へと変じる。 それはレオンハルトが流す血の色と同じだった。 その意味するところはただ一つ。 限界に達しつつある肉体の混沌濃度。体液一滴すらも染め上げる混沌の渦。なお死ねぬ身体。削られ、消耗していく身体。 →

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin ――つまり、もうこれ以上の、混沌の侵食には耐えきれない。 男が、逆さに磔にした竜の首元を掴んで持ち上げる。首を貫く杭が更に筋肉を裂き、赤黒い血を流した。 竜の首元に逆さに生えると言われる鱗優しく指先でなぞりながら、獅子が囁く。 「言ってやるよ。お前の自我の余命はもう長くない」 →

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin それは、死より恐ろしい死刑宣告。 「もって半年。お前が足掻かなきゃ三ヶ月と保つまい」 人の居なくなった丘の上で輝く黒き光が少しずつその色を失っていく。『聖印』がその光を失って消え去っていく。 希望の光がふっつりと消えていくように。 →

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 「自我が消えたお前はどうなるんだろうな。死ぬことも赦されず、生きたまま身の内から魔境化する……自我が崩壊する終わりまで、あと少しだ」 此処は、絶望の丘だ。 ただ人の形をした絶望が、絶望に魅入られし者へと囁きを落としていく。 →

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 「どうする？そのままこれ以上の無様を晒すのか？それとも……？」 言葉はそこで切られた。 視線を合わせた。 二対の双金が互いに鏡合わせに映り、その奥を見据えた。 その先は、あえて言わずとも伝わったろう。 →

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin . 「お前は『死ねない』。俺が言うんだから、そうだ。『お前は死ねない』。『俺の前以外では、死ぬことは赦さない』」 . →

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin それは、呪詛。 英雄の言葉。あるいは魅了。言葉の形を借りた絶望の枷を一つ、増やしてやる。 混沌を纏った言葉が渦巻き、耳から鼓膜を叩き、脳を揺らして混沌核へと打ち込まれた。 →

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin するりと手を離した。 止まった時計は動き続けている。これまでの止まっていた分を取り戻すように。それ以上の速度で、針は渦を描いて巻き続ける。 終われぬ終わりへ向かって。 絶望の未来へ。 竜を、無慈悲に導くのだ。

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 自我を殆ど失って――黒の奥底に沈められて、ただ最後の意識を、己を、繋ぎ止めるだけで精一杯の身体は動かない。槍に貫かれたままでは死ぬこともできない。傷を塞ぐこともできない。 弄ばれるように持ち上げられた竜の頭は黒く生暖かい血液を滴らせ、金の眼には衝突する二つの力が滲んでいる。　→

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 黒の獅子の姿しか見えない丘の上で、黒の獅子の言葉だけが柔らかく耳を擽る。 視界に、目の前に。 息の触れるような距離に。 狂気に染まった金の眼が己の姿を映し出している。　→

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart もって半年。諦めるならば三か月。 このような無様な姿を晒し続けることを選んでも。 私は『死ねない』。 『彼の前以外では、死ぬことは赦されない』。 →

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 言葉に潜む力が心の総てを鎖のように縛っていく――痺れるような、甘い、甘い感覚が全身に走って。何かが溶け落ちるように崩れて。 →

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart しかし。 鱗を滑る彼の指は、触れられてはならぬところに触れてしまった。己の意思でも正気を苛む混沌でもないものが暴れはじめる。 「……レオ、ンハルト！！」 魔境全体に、遠くまで轟き渡るような、ただ怒りにのみ塗られた黒い声が。しかし間違いなく龍の声が。咆えた。

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 「おお、怖い怖い」 遊ぶような声が跳ね、吼える龍から素早く離れた。撒き散らされた怨嗟の焔を弾き、男が嘲笑う。 「他の餌共も居なくなっちまったしなァ。俺はそろそろ帰るとするわ」 少しばかり疲れたしな。 そう言う男の首には、淡く燐光を放つ薔薇の刻印が一つ。 →

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 長時間『聖印』を現出し続けた男へ、女王の否定が襲い掛かっていた。立っているのがやっとの激痛が肉体を蝕んでいる。 レオンハルトが地を蹴る。ふわりと宙に浮いた身体は、移動した蜥蜴に置いていかれて遠く下の地面へ落ちていく。 →

万象の虹/レオンハルト＠異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 「――もう駄目だと思ったら俺のところに来いよ。殺してやっから」 そう、甘い誘惑を遺して。

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 黒の青年の様子には違和感があった。だが逆鱗に触れられ己自身とも闘っていた龍がその違和感に気付けるわけもなく、ただ己を大地に磔にする槍から逃れようと、そして彼を追わんと身体を無理に動かす。当然傷口は開き、骨や神経に直接に槍が触れる激痛は理性をさらに追い詰めるが。　→

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 「殺してやる」 その一言が、何よりの救いにも聞こえるが。 →

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart ぎりぎりぎり、と、黒く濁った血液にべったりと汚れた槍が啼く。 木でできた柔らかい槍ではない。 混沌を練り、圧縮し、龍の身体を貫くためだけに拵えられたその太い槍に、無理な力を与え続けて――ばきん、ばきん、ばきん。鈍い音と共に、龍は身体の自由を取り戻す。 →

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart その間にも黒獅子の気配は遠く遠くへ消え去って、もうどこへ行ったか分からなくなってしまった。追うことはもうかなわない。 力を使い果たし、己の混沌を使い果たした半魔境の龍は、魔境の蜥蜴の上にただ蹲る。 己のものばかりでない、血の匂い漂う黒の大地に。