【お玉さんの読書マラソン2017 II】名作家博覧会 芦辺拓 vs 二階堂黎人
一読目でも二読目でも喜びを乗数倍加させてくれた恐れ慄くトリックの質量と物量でありましたが、三読目(ウソ、実は直後にもう一度読み返したので四読目やったりする)の今回は、森江春策の口からは語られてない、作者からの読者に対しての仕掛けである幾つかの叙述、その妙にまたまた驚き慄いたよ、と
2017-05-17 02:22:02ここは【ネタバレ】 あのクッソ意地悪な五つのflash backの仕掛けに目がいきがちなんだけども、、、 (念願の登場人物表が付いた)創元推理文庫版の303ページからの記述がね、コレ、メッチャ最高なんですよぉ Σ(゚д゚lll)
2017-05-17 02:22:55と同時に、その後の芦辺作品を読み進めて感じたのだが、『殺人喜劇の13人』ってかなり「生々しい」お話なのね、ってところ。 僕たちミステリ好きな若僧としては、英都大学や匣の中の面々やみたいなコミュニティの形成を期待するわけなんだけど、現実の人間関係ってもっとドロドロしてるよね
2017-05-17 02:23:26『殺人喜劇の13人』には楽しく浮世離れした学生生活の側面が少なく、バイトだ、女だ、小さなコミュニティの中の更に小さな派閥や、騙しや、妬みや、嫉みといったものたちが満載で雰囲気はあまり良くないの。若僧からはるか遠い年頃になった現在振り返ると、思い当たるフシの多い生々しさがチラホラ
2017-05-17 02:24:22その生々しさが登場人物たちへの感情移入のハードルを高めているような気がしたのよね。途切れることのない博覧強記な知識のつるべ打ちもあいまって、泥濘荘(なんちゅう名称や……)で巻き起こる死の連続現象に対して、傍観者からの立場で眺めて、お話に参加出来きれていない自分を感じたのね。
2017-05-17 02:25:19怒涛のネタの物量を制御しきる本格ミステリとしての超絶技巧はとてもとても楽しいんだけど、個々の死のバックボーンにある動機の数々は、もちろん地に足のついていない虚構性の高いモノも紛れているが、なんか空々しい生々しいモノもチラホラある。喜劇にまで落ちきれてない現実味がところどころある
2017-05-17 02:25:36学生時代の人間関係に鬱屈さを覚えて苦しんだ自分にとって、大量のトリックと大量のトリビアで組み上げられた楽しい虚構性の合間から、ディープな生々しさが滲み出てくる仕様に戸惑った。(しかも不意に投入される現実味には、後の作品群で見られる社会派的な説教くささが無いのね……)
2017-05-17 02:25:50好きな作品のニガテな部分を呟いてみました。 千街さんの解説で語られている「その後の作品群では青春要素が消えていく」は、実は自分にとってウレシいことだ。芦辺さんの作品に対して『ちょっとだけ(?)現実的な毒を含んだ本格推理「物語」』という認識を持っててるし、そこに楽しみを感じてるんよ
2017-05-17 02:30:10そして、この企画の趣旨である年度毎の星取り対決に関しては、1990年の段階ではまだ二階堂さんがデビューされていないため芦辺さんの不戦勝となります。 現在の点数 【A 1 ー N 0】
2017-05-17 02:31:44というわけで、この対決企画の次回は1992年となります。 次のタイトルは『地獄の奇術師』 よくタイトルを間違えてしまうんよね。「悪魔の奇術師」「地獄の道化師」……。 それでは、ではでは〜 ( ´ ▽ ` )ノ
2017-05-17 02:33:02さて『名作家博覧会 芦辺拓 対 二階堂黎人』でございます。 本日からは1992年に移りますよ。92年からのエントリーは二作。二階堂さんの『地獄の奇術師』と『吸血の家』となります。 鮎川賞受賞で華々しくデビューした芦辺さんは、、、(´Д` ) ……ここからは二階堂さんのターン!
2017-05-20 02:08:04というわけで、本日取り上げるのは二階堂さんのデビュー作『地獄の奇術師』であります。 1992年8月講談社刊行。 ……コレ、……島田荘司の推薦文がついてたんだよナァ (´Д` ) pic.twitter.com/LrDnZ0lxAx
2017-05-20 02:08:25ワイ個人の思い出としては、これの二カ月後に発売された『吸血の家』の方を先に読んだんだよね。第一回鮎川賞の佳作作品なのにナンデ創元じゃなく立風からの刊行なんやろネ? と思いつつも、とても楽しく読めたわけなんよ。「吸血」がとても雰囲気ヨカッタので「地獄」も購入してみたんよね
2017-05-20 02:10:42『地獄の奇術師』を読んだ25年前のお玉さん。今よりも辛辣で尖っていたお玉さん。キれたナイフなお玉さん。 深夜の告白なんだけど、「地獄」の単行本にね、あまりよろしくないことをしちゃったんだよね。壁ドンしちゃったんだよ、壁ドン。壁にドーン! 「あ゛あ゛あ゛〜〜Σ(゚д゚lll)」
2017-05-20 02:11:25若い時分の私はより複雑な本格を、より強度と純度の高い本格を渇望してたわけなのよね。本ミスLOVE♡ 抱きしめたい♡ そんな自分にとって『地獄の奇術師』はかなりかなり物足りない作品だったのね。ネタバレなのかもだけど「すぐ犯人が分かるのよ」「使用されたトリックも予想つくのよ」
2017-05-20 02:12:02「名探偵 vs 怪人」というコンセプト上、真犯人を容易に見破ることが出来るという仕様は百歩譲るとして、作中の二階堂黎人(作中人物のほう)がガンガン煽ってくる不可能犯罪トリック、そちらがかなりしょっぱい内容だったこと、そのことに若僧時分のお玉さんは酷く反発を感じたんだよね
2017-05-20 02:12:30『地獄の奇術師』の本来評価すべき点って犯罪の進行過程中に散りばめられた「とある」意匠なのかもだけど、コレに挑む数ヶ月前、麻耶雄嵩さんという新人作家さんの超絶傑作『翼ある闇』で、僕らにとって身近すぎるモノを利用した事件構図を見せつけられ、ド肝抜かれまくっていたわけだったりするんよね
2017-05-20 02:12:49『地獄の奇術師』にガッカリしたものを覚えそれから25年。その年月の間に嗜好も変化しちゃって、複雑な事件構図やトリックに対し「まぁ、あればウレシいよね」くらいのスタンス、本格に対してそれらの欲求を絶対視しなくなった落ち着きぶり。きっと印象も変わるだろうて、と今再びの挑戦してみたんよ
2017-05-20 02:13:47まず思ったのは、第一回鮎川賞の芦辺拓『殺人喜劇の13人』が鮎川哲也の『リラ荘殺人事件』から物凄く影響を受けているのと同様に、『地獄の奇術師』にも「りら荘」からのアイディアのインスパイアが有り〼ネ、と初読時には強く感じたはずなんだけど、案外そうではないゾ、と。
2017-05-20 02:15:48確かに「りら荘」っぽい箇所もあるんだけども、先行作品に対しての熱情を可能な限り抑え込み二階堂黎人個人の武器にまで還元が行われているように思えたのよ。 同様に『地獄の奇術師』を評するときによく引き合いに出る江戸川乱歩への興味やカーの風味もそれほど強く感じられなかったんよね。
2017-05-20 02:17:47また、脚注芸というお遊びはあるわけだが、作品を彩る様々な衒学に関してもかなり抑制を効かせされているのを感じた。対象に対しての知識を100パーセントFULLで展開しきるのではなく、「小説の流れを殺さない」よう適度なセーブと制御が施されているの。あっ、ここをサラリと流すの、カッコいい
2017-05-20 02:18:21