「200年ぶりの新しい青」への疑問とエジプシャンブルーについて。

『デイリー・テレグラフ』紙が報じた「『新しい青』200年ぶりに発見」という記事について、化学が専門の山猫だぶさんによる検証と、古代エジプトで用いられていた青色について、エジプト考古学者・河江肖剰さんも交えた考察。だぶさんは『月刊化学』で顔料染料から生まれる「色」をテーマにした連載を執筆されています。なので、「青」も何度かツイッターで論じています。
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山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

月刊化学の雑誌連載で取り上げた青は、ラピスラズリ(ウルトラマリン)、インジゴ、藍銅鉱、プルシアンブルー、エジプトブルー、ハンブルー、ベルディグリ、になるのかな。今後はスマルトとコバルトブルー、セルリアンブルー、ターコイズ、この辺りを。

2017-05-21 21:54:23
Yukinori Kawae/河江肖剰 @yukinegy

文献は、先に紹介したAncient Egyptian Materials and Technologyの中のPaiting Materialsの章に「エジプシャンブルー」の項目があり、そこに参考文献が出ていますのでお薦めです。 twitter.com/fluor_doublet/…

2017-05-22 17:40:32
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

正確に言うと、エジプシャンブルーの「物質科学」の文献はかなり読んでるんですが、歴史や考古学の文献を読んでなくて。。。というかどうやって文献検索したらいいか、門外漢なので全くわからない。。

2017-05-21 21:32:28
Yukinori Kawae/河江肖剰 @yukinegy

あと主にファイアンスについてになりますが、古代エジプトのファイアンスについての展示会があり、その図録もお薦めです。なにより写真が美しい。"Gift of The Nile: Ancient Egyptian Faience". twitter.com/yukinegy/statu…

2017-05-22 17:40:46
Yukinori Kawae/河江肖剰 @yukinegy

これまではギザの大ピラミッドが作られた第4王朝に遡ると考えられていましたが、昨年メンフィス大学のコーコラン教授によって、紀元前3250年頃の先王朝時代まで遡ることが分かりました。このあたりは先月のナショジオでも取り上げられました。memphis.edu/mediaroom/rele… twitter.com/fluor_doublet/…

2017-05-22 17:44:10
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

すごいですね、エジプトではエジプシャンブルーの使用は、第一王朝カア王 (紀元前2700年頃) の時代かららしいんですが、この時代にすでに石英砂をゆるく焼結させ、その上にガラス質の釉薬を乗せ、きっちり温度管理して焼けたんですよね。

2017-05-21 17:05:51
Yukinori Kawae/河江肖剰 @yukinegy

個人的に好きなファイアンス製の遺物はMet所蔵のホルスの象眼細工。metmuseum.org/art/collection… pic.twitter.com/t1xjj8sPH6

2017-05-22 18:00:06
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山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@yukinegy ありがとうございます。その本は早速注文して、到着待ちです。届いたらチェックしてみようと思います。

2017-05-22 18:22:11
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@yukinegy 大変有用な情報、誠にありがとうございます。王朝以前の発明品だったのですね!いろいろ読んでみても、エジプシャンブルーの真の発明場所がどうもはっきりしないのですが、これはやはり最古の例が見出されたということで、エジプトがその発明場所であったと現時点では考えてよろしいのでしょうか。

2017-05-22 18:27:06
Yukinori Kawae/河江肖剰 @yukinegy

「現時点では」そのように考えてよいと思います。先王朝時代から、アフガニスタンから輸入されていたラピス・ラズリは、ファイアンスやガラスと区別してエジプト語でケスベド〈真の〉と呼ばれていました。そのようなことから考えると、もとは人工的にラピスの青を作ろうとしたのかもしれません。 twitter.com/fluor_doublet/…

2017-05-22 18:54:48
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@yukinegy ありがとうございます!発明場所の情報、誠にありがたいです。やはりラピスラズリは真の青色顔料の王様で、エジプシャンブルーはその青を模倣しようとして作られたのかもしれない、というエジプトのひとの気持ちは、わかるような気もします。

2017-05-22 19:06:03
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@yukinegy すみません。便乗してもう一つご教授ください。本来なら「エジプシャンブルー」という名の顔料は、CaCuSi4O10の組成の結晶性の物質で、これはファイアンスの着色に釉薬で用いる場合、ソーダやカルシウム分が多いと混和分解して青いガラスになり、本来のその名の顔料で無くなるはずです。

2017-05-22 19:20:59
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@yukinegy しかし、釉薬のガラスマトリックスに分散して入ったエジプシャンブルーの結晶を同定するのは、破壊検査で偏光顕微鏡でみるか、X線回折計(XRD)でサンプル中の結晶の回折パターンを測定し同定するしかないと思うのです。それはものすごく手間がかかるはずです。

2017-05-22 19:22:02
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@yukinegy 早稲田の宇田先生の報告ではXRDを取られてましたが、世のエジプシャンブルーのファイアンスすべてがそのような分析をされているとも思えません。つまりそれは、エジプシャンブルーという慣用名を持つ色であり、真の「エジプシャンブルー」かどうかはわからない、と考えてよろしいのでしょうか。

2017-05-22 19:23:27
Yukinori Kawae/河江肖剰 @yukinegy

この辺りは専門でないため断定できませんが、印象としてはそのように思っています。エジプト学において、分析ではなく、その「見た目」から習慣的に用いられている用語が多いです。特に岩石では、正しく特定しなかった結果、現在の名称と過去の報告書の名称が違い、混乱の原因になっています。 twitter.com/fluor_doublet/…

2017-05-22 20:18:54
Yukinori Kawae/河江肖剰 @yukinegy

現在のエジプト学の問題点を含めた傾向を紹介しているのは、イアン・ショーの『古代エジプト』(岩波書店)です。タイトルは古代エジプトですが、実際には「エジプト学」についての概説です。通常の歴史の本ではありませんが、個人的には、非常にお薦めの1冊です。

2017-05-22 20:26:20
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@yukinegy なるほど。大変参考になり、感謝の言葉もありません!ありがとうございました!

2017-05-22 20:30:36
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

エジプト、楽しいなー。行ってみたいなー。

2017-05-22 20:33:14
Joy @Joylita

Following up on my prev tweet: A Brief History of Blue bit.ly/2pUsAqS Ancient Egyptian Blue to modern Indigo, the deets. pic.twitter.com/DA1YrhBPbI

2017-05-09 13:30:01
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山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

なかなか読みごたえあり。楽しい本。 pic.twitter.com/I6qJ9R1hiy

2017-05-24 09:47:26
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山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

エジプシャン・ブルーの話で、「人類が初めて作りだした顔料」とするのにはすごく抵抗がある。というのは、木質を蒸し焼きにして得た炭や、酸化水酸化鉄を焼いて作った、酸化鉄のレッドオーカーの類がもっと前からあるわけで。

2017-05-23 13:03:20
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

炭は黒色だが、オーカーは有色顔料なので、「人類が初めて作りだした有色顔料」もおかしい。「化学反応を伴う」もおかしい。それを考えると「エジプシャンブルーは初めて人類が作りだした顔料」の表現は、偽、ということになる。

2017-05-23 13:05:38
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

従来から紋切りに使われているこの表現、よく考えると間違いなので使わないようにしようか。「人類が初めて手工業的に作りだした青の顔料」ならあってる。

2017-05-23 13:07:33
Yukinori Kawae/河江肖剰 @yukinegy

@fluor_doublet 「最初の合成顔料」という表現も見かけますが、これはどうなのでしょうか?

2017-05-24 06:14:21
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@yukinegy 言葉の問題ですごく悩ましいところなんですが、例えば炭(カーボンブラック)がありますね。これは、セルロースなどの有機物質を不完全燃焼させて(化学反応させて)合成する、不純な炭素です。同様に、赤土(レッドオーカー)も焼くと色味が変化します。これは、ゲータイトFeO(OH)の熱分解で

2017-05-24 10:26:41
山猫だぶ㌠ @fluor_doublet

@yukinegy ヘマタイトFe2O3 に化学変化させたものです。これらの顔料利用はものすごく古く、おそらく人間が火を使い始めたころからでしょう。もちろん天然にも炭やヘマタイトは存在するのですが、火を使った素朴な合成プロセスで作ったものを利用した可能性は多大にあります。これを無視したくないのです。

2017-05-24 10:29:02