日向倶楽部世界旅行編第1話「豪華客船ヒューガリアン」

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三隈グループ @Mikuma_company

【ここまでの日向倶楽部】 ボクは航空巡洋艦娘最上、トラック泊地に日向さんや初霜などの仲間達と一緒に住んでいる、大会で優勝したりもした結構強い艦娘だ。 ある日横須賀の偉い人に呼び出されたボク達は、色々あって船旅に出る事となった、ボクらを待ち受ける運命は…!?

2017-06-13 21:30:05
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【前回までの日向倶楽部】 扶桑の依頼により、彼女と共に旅に出る事が決まった日向達。 しかし思い立ったが吉日と言わんばかりに、扶桑は彼等を自らの操る船に乗せ、翌朝早々に横須賀を出発した。 最初の目的地は日向達の住むトラック泊地、ここに波乱の船旅が始まった…

2017-06-13 21:31:03
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第1話 「豪華客船ヒューガリアン」

2017-06-13 21:31:27
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〜〜 横須賀を出港した船は、南のトラック島へ向けて航海を始めていた。 「ふ、扶桑様…色々と言いたい事はあるんですが、その、本当に我々だけでトラック島へ行くんですか?」 出港から10分、上機嫌で船を動かしている扶桑に日向が尋ねる。

2017-06-13 21:34:02
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「この広い船を我々だけで管理というのは…」 狼狽え気味な彼女に扶桑は微笑みながら言った 「大丈夫です、最新型ですから。」 「はあ…」 色々とぶっ飛んだ守護神に日向は終始困惑しっぱなしだった、眉は先程からハの字だし、口は常に半開きだ。

2017-06-13 21:35:04
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そんな彼女を見て、部下である最上と初霜も戸惑っていた。 (初霜、日向さんもあんな顔するんだね。) (そうね…) やがて諦めたのか、手持ち無沙汰な様子で日向は壁にもたれかかった。 「…はあ、お前達…船の探険でもするか?」 そんな風に彼女は最上と初霜に声をかける

2017-06-13 21:36:02
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「良いですね、多分ボクらの部屋もあるんでしょう?」 「そうね、広い部屋だと嬉しいわ!」 まだまだ元気そうな二人に対し 「うむ、それも探さないとな…」 日向は昨日までのワクワクが疲労で消し飛んだのか、深い溜息混じりに呟いた。

2017-06-13 21:37:03
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「私達はここに居ますから、ひゅーちゃん達はどうぞ。」 三隈とあきつ丸はオペレーター席ですっかりくつろぎ、何処から持ってきたのか分からないお茶を飲んでいた。 「そうか、すまないな。」 「いえ、ごゆっくり。」 扶桑達を置いて、日向達はブリッジを後にした。 〜〜

2017-06-13 21:38:01
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〜〜 「この部屋はなんだろうな」 あてもなくふらふらと歩き、日向はとりあえず一つのドアを開いた。 「何もないですね…」 そこは広いだけで何もない、所謂空き部屋であった。 「うーむ、外装はバッチリだが物は少ないようだな、この辺は好き勝手にして良いというわけか。」

2017-06-13 21:39:02
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小さい映画館でも作ります?と初霜、日向は良いアイデアだなと笑った。 そこを後にすると、今度は別の大きな扉を開いた。 「…なんだここは」 「喫茶…ですかね?」 否、そこはステレオタイプなバーであった 「ビリヤード台もあるわ、まんま絵に描いたようなところね…」

2017-06-13 21:40:02
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棚には年代物の洋酒…の瓶が並んでいる 「…映画の撮影でもしたのか?この船…」 「お店とか開きますか…?」 「いや、そもそも呑む人間が少ないからな…」 日向は手に取った瓶を戻し、二人と共にバーのような場所を立ち去った。

2017-06-13 21:41:01
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「二人とも見て、あそこ!」 再び船内をてくてく歩いていると初霜が何かを指差した、その先にあったのは 「螺旋階段…」 そう、立派な螺旋階段である。 「うわあ、昔テレビで豪華客船の特集してたけど、まんまそれだ…船の中に螺旋階段…」 ポカーンとした顔で最上はそれを見上げる

2017-06-13 21:42:02
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「すごい船だな…すごい船だが…うむ…」 日向はそこまで言って黙ると、再び歩き出した、その後を最上と初霜は着いて行く 「すごいね初霜、豪華客船だよこれ」 「ホントね、それがほとんど貸切状態なんだからすごいわ!」 人っ子一人いない豪華客船を探険、なかなかできるものではない。

2017-06-13 21:43:01
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「でも管理はどうするんだろうこれ、どう思います日向さん?」 これだけだだっ広いと、掃除云々の話だけでは済まされないはずだと最上は言う 「うーん、そこは私も気になる…。あいつ…いや扶桑様が勝手に飛び出しただけで、本来は他に乗員がいるのかもしれないが…」

2017-06-13 21:44:02
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「一人で動かせはするけれど、それ以外の事は考えてないって設計なのかしら…」 「かもしれないね…」 「家具とかは三隈さんに頼めばなんとかなりそうだけど、他は…」 これからここに住むという期待に胸を膨らませると同時に、彼等は不安のざわめきも覚えていた。

2017-06-13 21:45:06
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探険はまだまだ続く 「ここは何かな」 一行は続いて近代的な自動ドアを開き、中へと入って行った。 そこは先程までのアンティークな豪華客船の内装から一変、とてもメカメカしい部屋であった 「ここは…なんて言うんですかね?」 「格納庫で良いんじゃないか?」

2017-06-13 21:46:04
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機械的なアームや機械的な留め具、機械的なディスプレイや機械的な機械が部屋を支配していた 「ここは艤装のメンテナンスもしているようだな、見ろ、私達のものもちゃんと置かれている。」 鎮座する自身の主砲を指して日向は言った、当然最上や初霜のものもちゃんと置かれている。

2017-06-13 21:47:01
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「…あれ、扶桑様の艤装は無いのかな」 「それらしきものは見当たらないな…別のところだろうか。」 主砲はおろか飛行甲板らしきものも無い、あるのは日向達のものだけである。 「うーむ、まあ探しても仕方ないか、別のところへ行こう。」 三人は部屋を出て、また船内を歩き始める。

2017-06-13 21:48:02
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「にしても何というか、結構ハリボテだなこの船。」 いくつもある空き部屋のドアを開けては閉めて開けては閉めて、日向はため息まじりにボヤいた。 「機器は最新型みたいですけど、生活スペースは豪華客船のをそのまま引っ張ってきたんじゃあないかって、そんな感じがすごくしますね…」

2017-06-13 21:49:02
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がらんとした空き部屋やシェフのいない調理室、温もりを忘れた家具達が棲む洋室など、豪華客船部分はそういう寂しさで構成されていた。 「最新型っていうのはドックや操縦系統の事で、他は違うって事かしら?」 「そういう事らしいな…なんだか詐欺にあった気分だ」

2017-06-13 21:50:06
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それはそれとしてどこに住むか、家具などはどうするか、そんな事を話しながら歩いていた時 「ねえ最上さん、何か聴こえない?」 「えっ?…あ、ホントだ。」 その音はどこからか聴こえるピアノの音であった、ポロロン、ポロロンと廊下を駆け抜けている。

2017-06-13 21:51:06
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それは大きな扉の向こう側から聴こえてきた、三人は扉を開き中へと入る。 「あっ…」 そこには音を出すピアノ、そしてそれを弾く那珂の姿があった。 繊細な指先で弄ばれ、ピアノは小さなホールの中に声を響かせる。 やがて彼女は最上達が入って来たことに気付き、静かに鍵盤から指を離した

2017-06-13 21:52:10
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「…探険?」 鍵盤蓋を閉じ、那珂は三人の方を見た、対する三人は首を縦に振って答える 「お好きなんですか?ピアノ…」 最上が訊くと、彼女は表情一つ変えずに言った 「別に、弾けるから弾いていただけだよ。…弾きたい?」 「いえ、ボク楽器はからっきしで…」

2017-06-13 21:53:02
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そう、と言って那珂はピアノの前後屋根を閉じ、靴音を立てながら扉へと向かった。 「この船、大切にしてあげてね。」 最上とのすれ違いざまにそう言うと、彼女はそこを立ち去ってしまった。 「は、はい…?」 扉が閉じたあと、最上は目をパチクリさせながら答えた。

2017-06-13 21:54:02
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その後も一通り船内を見て回った最上達は、デッキへと出て外の風を浴びていた 「ふーっ、船の中だけど結構歩きましたね。」 「そうだなぁ」 豪華客船のデッキで風を浴びる、普通なら少しは言うこともあるのだろうが、潮風など彼らにとっては珍しくもなんともなかった。

2017-06-13 21:55:06