日向倶楽部世界旅行編第2話「旅立ち」

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三隈グループ @Mikuma_company

【前回までの日向倶楽部】 せっかちな扶桑により公的な手続きも済まぬまま出港してしまい、危うくお縄となるところだった日向達は、話の分かる艦娘黒潮のおかげで事無きを得る。 そして「ヒューガリアン」と名付けられた船は海を進む、目的地トラック泊地はもうすぐだ。

2017-06-20 21:30:15
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第2話 「旅立ち」

2017-06-20 21:30:45
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〜〜 海上保安艦隊との邂逅から丸一日 「ぐぅー…」 最上と初霜は洋室のソファで横になっていた 「まだ着かないのかなぁ…トラック島…」 「きっともう少しよ…寝ていましょう…」 二人は無気力の極みといった様子で横になっている、何故か? 答えは簡単、腹が減っているのだ。

2017-06-20 21:31:08
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「食糧はどこだ?」 日向がそう言ったのは昨日の夜の事、これを尋ねられた扶桑は心底気まずそうな顔をしていた。 彼女の反応で粗方察せるだろうが、この船には食糧の類が積まれていなかった、あったのは水に溶かして飲む栄養剤のみである。

2017-06-20 21:32:04
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「水はあるし、栄養的には問題ないらしいけど…あんなプロテインみたいなのじゃお腹が膨らまないよね…」 「喋ると余計疲れるわ…大人しくしてましょう…」 そんな訳で、二人は芋虫のごとくジッとしていたのだった。 トラック島まではもう少しかかる。 〜〜

2017-06-20 21:33:02
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〜〜 やがて船はトラック島へと到着した、前日に「ヒューガリアン」と名付けられた船は、トラック泊地の港へと停泊する。 「これが那珂から報告のあったやつか、いくらなんでもデカすぎるだろ…」 出迎えの加古は見上げて言った、ヒューガリアンはさながら船の形をした怪獣であった。

2017-06-20 21:34:03
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そんな風に見ていると、日向を先頭に那珂達が降りて来た。 「お疲れ、なんかすごい事になったみたいだね。」 降りて来た一同に加古は声をかける、最上達は軽い敬礼をしてそうですねと返す。 那珂が自身のいない間の状況を尋ねると 「異常なし、だね。」 そう言って加古ははにかんだ。

2017-06-20 21:35:02
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続いて彼女は日向の方を向く 「んで、色々と荷物を積まなきゃならないんだっけ?スケジュールとかそこら辺、どうなのさ日向。」 「はい、それについては…」 日向が続きを言おうとすると、扶桑が横槍を入れた 「明日にはここを発てるようにお願いします。」 「えっ?」

2017-06-20 21:36:03
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日向だけでなく、その場にいたほぼ全員がそう言おうとした。 「扶桑様明日というのは…手配するものも、整理するものもありまして…」 「いえ、なるべく早くお願いしたいのです、明日でお願いします。」 咎める日向に扶桑はきっぱりと言った、なるべくという言葉の使われ方が危うい。

2017-06-20 21:37:01
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「そういう事なら業者の方は私の方で手配しましょう、すぐに来てくれますわ。」 一連のやり取りを見て、三隈は既に携帯を取り出していた。その様子から止める事は叶わないだろうと諦観し、日向は首を横に振ってこれを承諾した。 「ああ…分かりました、早速準備に取り掛かりましょう。」

2017-06-20 21:38:05
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日向は最上と初霜に目配せする、しかし彼等は首を横に振った 「日向さん、先に何か食べませんか…?」 最上がそう言うと、日向の腹も小さく鳴った 「…そうだな、軽く何か食べてからにしよう。お前達はどうする?」 三隈は平気そうな顔をしていたが、あきつ丸は首を縦に振った。

2017-06-20 21:39:02
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「私もご一緒して良いですか?」 日向が尋ねる前に扶桑が言った 「…よろしいですが、高級なところじゃあありませんよ。」 「結構です、連れて行ってもらえますか?」 言いながら彼女は2メートルの身長を屈める、日向はこれを受け入れ、最上達四人を引き連れて歩き出した。 〜〜

2017-06-20 21:40:01
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〜〜 トラック泊地内にある「虎麺」、海鮮系のスープを使用した「トラック・ラーメン」が一番人気のラーメン専門店である。 リーズナブルな価格にちょうど良い量と味で、職員や艦娘を問わず泊地内では人気の名店である。 準備前の腹ごしらえに、日向達はここへ足を運んだのだった。

2017-06-20 21:41:03
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「いらっしゃい!おおモガちゃんに初ちゃん、今日は日向ちゃんも一緒かい?」 威勢の良い声で出迎える親方を見て日向は笑う 「相変わらず元気そうだな。」 「ラーメン作ってるうちはピンピンよ、今日は暇だから好きなところ座ってくれ。」 席を指差し、親方は調理準備に取り掛かる

2017-06-20 21:42:09
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が、すぐに親方は手を止めて今度は入口を指差した 「後ろにいるのはお連れさんかい?」 日向が後ろを向くと、頭を低くしながら店に入ろうとする扶桑の姿があった 「あ、ああ…初めてトラックに来た人だ、とびきり美味しいのを頼む。」 ガンッと縁に頭をぶつける彼女を見て日向は言った。

2017-06-20 21:43:09
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「なるほどね、じゃあとっておきを作ってやろうじゃないか。…お客さん、大丈夫かい?」 「ええ、ご心配なく…」 角のような髪飾りをのれんに引っ掛けつつも、扶桑は無事に入店して席に着いた。 2メートル以上の身長から来る座高は凄まじく、一人だけ明らかに浮いていた。

2017-06-20 21:44:06
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だが当人はそんなこと気にもとめず、キョロキョロと辺りを見回していた 「ここは中華そばのお店なのですね。」 「そうです、ここのラーメンすっごく美味しいんですよ。」 「まあ、楽しみですね。」 物珍しそうにあちこちを見ては、扶桑は機嫌良さそうに微笑んでいた。

2017-06-20 21:45:03
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やがてラーメン達が来た 「へいお待ち、トラ麺5人前ね。」 五つの「トラック・ラーメン」が日向達の前に並ぶ、店内にいただきますの声が響く 「はあーっ、もうお腹ペコペコだ…!」 「気持ちは分かるが、熱いから気を付けろよ。」 言ったそばから最上達はアチチと声を上げた

2017-06-20 21:46:02
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その様子に日向は呆れて笑った、笑ったのだが、すぐに真顔となった。 「ん…?ん?」 最上達が熱い熱いと言っていたラーメンを、扶桑は何の躊躇もなく食べていたのだ。 「とても美味しいですね。」 「あ、ああ…扶桑様、熱くないのですか?」 神妙な顔で訊く日向を扶桑は笑う。

2017-06-20 21:47:02
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「猫舌の反対…なんでしょう、熱いものは得意なんです。」 扶桑は微笑みながらラーメンをどんどん減らして行く。 「なるほど…」 「凄いですね…ボクなんて熱いものが苦手で苦手で…」 最上や初霜はフーフー冷ましながらラーメンを口に運んで行く。

2017-06-20 21:48:02
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数分でラーメンを完食した扶桑は、一息つきつつメニューを開いた 「これは、ギョーザ…ですね?」 指差す先には「特製餃子」の文字、最上達はウンウンと頷く。 「私、ギョーザは食べた事が無いのです。皆さんご一緒にどうでしょう?」 守護神はまだ食べ足りないようだ。

2017-06-20 21:49:32
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最上達もまた食べ足りなかった為、特製餃子を三人前頼む事となった。 注文を受け、焼く音と煙が店内を走り抜け、三皿の餃子が彼らの前に並べられた。 「これがギョーザですね?いただきます。」 ヒョイと箸で摘み、扶桑は熱々のギョーザを口に運ぶ、それを咀嚼し飲み込み、そして微笑む。

2017-06-20 21:50:11
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最上達もギョーザを取り、醤油、ポン酢、ラー油を混ぜたタレに付けて食べる 「あつつっ…でも、美味しい…!」 薄めの皮に包まれたちょうど良い分量の肉と野菜、麺類とは真逆なパリっという焼き目の食感、それらが海鮮系スープに浸されていた味覚に革命を起こす。

2017-06-20 21:50:47
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空腹も相まって箸がみるみる進み、気が付けば餃子もご飯もあっという間に無くなっていた。 濃い味を堪能した一同はすっかり満腹となり、手を合わせてごちそうさまを終えた。 「ああ…五臓六腑に染み渡る…」 「ホントね…」 最上と初霜は幸福の絶頂といった顔で締めに水を飲んだ。

2017-06-20 21:52:02
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その様子を扶桑はニコニコしながら眺めていた 「…扶桑様、どうかしましたか。」 そしてそれを見ていた日向が彼女にこう訊いた、扶桑は目を閉じて首を横に振る 「なんでもありませんよ、見ていただけです。」 「そうですか…」 その後一同は会計を済ませ、店を後にした。 〜〜

2017-06-20 21:53:20