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日向倶楽部世界旅行編第2話「旅立ち」

まとめました
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三隈グループ @Mikuma_company

「うーん…考えた事も無かったけど、暖かかったと思う、寒くはなかった。」 された事もない質問にぼんやりとした答えを返す、それ聞いた那珂は少しの沈黙の後、静かに口を開いた 「…そうだよね、母さんって、母親って、暖かいものだよね。」 雲が月を隠し、執務室が完全な暗闇に包まれる。

2017-06-20 22:19:02
三隈グループ @Mikuma_company

「ありがとう、それを聞きたかっただけなの。じゃあ、おやすみ。」 靴音を立てながら提督の横を通り過ぎ、那珂は真っ暗な執務室を出て行ってしまった、バタン、と扉の閉まる音が響く。 「那珂…」 雲が晴れ、窓から再び月光が射し込む。 静寂に包まれた執務室で、提督は一人呟いた。 〜〜

2017-06-20 22:20:11
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 翌朝、出港の準備が完全に完了した日向達はヒューガリアンへと乗り込んだ。 各々の部屋もきちっと割り当てられ、三隈の手配した業者によって荷物は全て部屋に運び込まれている、 のだが 「ここがボクらの部屋かぁ、ちょっと狭いなぁ…」 自室に入るなり最上はボヤいた。

2017-06-20 22:21:28
三隈グループ @Mikuma_company

「確かに…ちょっと窮屈かもしれないわ。」 初霜もボヤく。 最上と初霜の部屋は綺麗な客室の一つ、狭くはなく比較的大きいものであったが、それはあくまで「宿泊施設」として見たときの話、本格的に生活を営む場所としてはかなり手狭なのだ。

2017-06-20 22:22:17
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ヒューガリアンの生活スペースは豪華客船、更に大きな部屋も当然あるのだが、長い間使われていなかった為か老朽化が随所に見られた。 「問題なく生活できそうな部屋」を三隈が見積もった結果が、この絶妙な広さ…もとい狭さの部屋なのであった。 「まあ仕方ないね、荷物開けよっか。」

2017-06-20 22:23:05
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そう言って最上達がダンボールを開こうとしたその時、船内にアナウンスが流れ出した 「…なさん、艦橋に集まっていただけますか?…皆さん?艦橋に集まっていただけますか、扶桑です、呼んでいます。」 時々キィィィンという音を鳴らしつつ、扶桑のアナウンスが流れていった。

2017-06-20 22:24:02
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アナウンス通り最上達がブリッジに向かうと、既に皆が集まっていた。 「これで全員揃いましたね?」 扶桑は操縦用の椅子に座ったまま、最上、初霜、日向、三隈、あきつ丸の五人を見渡して言った。 「これよりヒューガリアンは出港します、しかし…その前に皆さんにお話があります…」

2017-06-20 22:25:02
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扶桑はスッと椅子から立ち上がった、デカい 「お話とは扶桑様、如何されましたか。」 日向が丁寧に尋ねると、扶桑は手のひらを彼女に向けて言葉を制止した 「その話し方…もとい、私に対する態度についてのお話です。」 扶桑は目を閉じ、神妙な顔をしている。

2017-06-20 22:26:01
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最上達は何か失礼があったのかと互いに顔を見合わせた、その中でも日向は特に悩ましい顔をしていた。 「…何かいけなかったでしょうか。」 日向がそう訊くと、扶桑はコホンと咳をしてから答えた。 「…良いですか?私達はこれから一つ屋根の下、共に旅をするのです。」

2017-06-20 22:27:01
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扶桑は続ける 「ですから、私に対してあまり堅苦しい態度を取るのはよくありません、他人行儀が過ぎます。なので私の事は扶桑、扶桑さん、どうしてもというのなら"先生"と呼んでください。」 要するに、もっとフランクに気楽に接して欲しい、という事であった。

2017-06-20 22:28:04
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最上達は少し戸惑ったが 「…分かりました、ボクは扶桑さんって呼びます。」 「私も。」 最上と初霜は昨日サイコロ代を出した事を思い出し、なんとなくこれを受け入れた。 「二人ともありがとう、これからよろしくお願いしますね。」 二人に扶桑は優しく微笑む

2017-06-20 22:29:11
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それを見て三隈とあきつ丸も頷く 「ではビジネスライクなお付き合いは無しに、私はフーさんとお呼びさせてもらいますわ。」 「自分は誰に対しても同じなので、扶桑殿で。」 「分かりました、よろしくお願いしますね。」 提案は完全に無視されたが、扶桑は特に気にしていないようだった。

2017-06-20 22:30:02
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そんな中、日向は最後まで目を閉じたまま黙っていた、扶桑も同じように黙って返答を待つ。 やがて日向は目を開いた 「…分かった、なら遠慮なく呼び捨てにさせてもらおう。」 最上達に対する言い方と全く変わらぬ、普段通りの調子で日向は言った 「扶桑、改めてよろしく頼む。」

2017-06-20 22:31:01
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それを見て扶桑は満足げに微笑んだ 「よろしくお願いしますね、日向。」 扶桑は腰を屈め、日向の前に右手を差し出す。 日向もその手を取り、二人は互いに握手を交わした。 「私は扶桑、横須賀の守護神ですが、今はこの船の船長にして普通の旅人です。 改めてよろしくお願いしますね。」

2017-06-20 22:32:00
三隈グループ @Mikuma_company

そう言って一礼すると、次に扶桑は、隅に置いてあったテーブルを日向達の前に持ってきた。 「さて、もう一つお話があります。」 「なんだ」 早くも日向はタメ口が板につき始めている 「私達はこれから旅をしますが、行き先がまだ決まっていませんね?」

2017-06-20 22:33:02
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そう言って扶桑は、持っていた紙袋から板状の何かを取り出した 「…時計?ですかこれ。」 「はい、この船にあった時計です。」 それは何処にでもありそうな壁掛け時計、電池は入っていないらしく、針は完全に止まっていた。

2017-06-20 22:34:01
三隈グループ @Mikuma_company

「そして、これをここに置きます。」 続いて取り出したのは方位磁針、彼女はそれを時計の中心にテープで貼り付けた。 そのあまりに奇妙な行動を、最上達は黙って見守っていた。 「あとは、12が北になるように…出来ました。」 時計の針に代わって方位磁針の北が12時を指した。

2017-06-20 22:35:03
三隈グループ @Mikuma_company

「…扶桑さん、何ですかこれ?」 最上達が尋ねると 「はい、これで方角に数字が割り当てられました。」 笑顔で答える扶桑、最上と初霜の二人だけは、これが何なのか薄々勘付いていた。 「最後に、これを使います。」 そう言って扶桑は懐から木製の茶碗と

2017-06-20 22:36:02
三隈グループ @Mikuma_company

(マジか…) 昨日、最上達が彼女に買ったサイコロを取り出した 「おい扶桑、キミまさか」 「はい、サイコロの目が出た方角を目指して進みます。」 まるでバラエティ番組のような方式に、流石の日向も目眩を起こしかけた。 彼女の旅行計画もパァである。

2017-06-20 22:37:01
三隈グループ @Mikuma_company

「では、最初の目的地を選定します。」 三隈だけは口角を上げて笑っていたが、他の皆は不安を覚えていた、そんな彼らを前に扶桑は上機嫌でサイコロを投げる。 彼女の手を離れたサイは碗の中をコロコロと転がり… 「…3と、6、足して9ですね。」 彼女の言う通り、合計9が出ていた。

2017-06-20 22:38:09
三隈グループ @Mikuma_company

すると扶桑は、何処からか今度は世界地図を取り出し、トラック島から赤いマジックでまっすぐに線を引き始めた 「数字は9、方角は西、よってヒューガリアン最初の目的地は…」 キューッと引かれた線は、ある地点でピタッと止まった。 そこは 「パラオ共和国ですね。」 つづく

2017-06-20 22:39:09
三隈グループ @Mikuma_company

【ヒューガリアン】 横須賀鎮守府で建造された最新鋭の艦、カテゴリは「艦娘母艦」とされる。 修理や補給、果ては開発まで行える機能を備えた「動く鎮守府」であり、優秀な艦娘一人での運用が可能な「巨大艤装」でもある。 一方で生活スペースは古い豪華客船の流用の為、老朽化が激しい。

2017-06-20 22:40:16
三隈グループ @Mikuma_company

【艦娘母艦】 艦娘を艦載機のように搭載する船舶、現地で使われなくなった漁船などを改修したものが始まり。 小さいもので6名、大きいものでは20名以上の艦娘を搭載可能、簡素な補給設備を備えるものもある。 大規模作戦が行われていない現在では、海賊による運用の方が多く見られる。

2017-06-20 22:41:17