昨日発生していたサイトログインできない不具合は修正されております(詳細はこちら)

日向倶楽部世界旅行編第2話「旅立ち」

まとめました
0
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 24時間ぶりの食事を終えた最上達は、ヒューガリアンに積み込む荷物の整理に追われていた。 特に日向は、足りない物、買えそうなもの、今すぐ必要なものを素早く脳内でリストアップし、それを見つけ出して行く必要があった為にてんてこ舞いであった。

2017-06-20 21:54:01
三隈グループ @Mikuma_company

それに比べて、最上達は自分達の着替えと手荷物を詰め込むだけ、日向に比べればだいぶ楽な作業であった。 「よし…と、これでボクらは大丈夫だね」 「そうね」 ダンボールに封をし、最上と初霜は荷物を三隈が手配した業者の元へと運び出す。

2017-06-20 21:55:01
三隈グループ @Mikuma_company

居間では日向が日用品から何に使うか分からない物まで、とにかくあらゆる物に囲まれていた。 当然二人は手伝おうとしたのだが 「こういうのは一人でやらないと分からなくなってしまうんだ、お前達は休んでて良いぞ。」 当の日向がこれを拒んだ、仕方ないので二人はそのまま荷物を運び出す。

2017-06-20 21:56:02
三隈グループ @Mikuma_company

荷物を運び出し終え、二人は日向に言われた通り休む事にした。 「とは言っても…どうしよっか?」 諸々を運び出してしまった彼らがやれる事の選択肢は少ない、夕食には早く、間食する程でもなく、やる事がない。 ベンチでスマートフォンを弄る程度の暇つぶしが限界だったのである。

2017-06-20 21:57:02
三隈グループ @Mikuma_company

しばらくして、そんな彼らの元にどこからか扶桑が歩み寄って来た 「あっ、扶桑様…」 「扶桑です、どうかしましたか?」 長過ぎる着物故、まるでチェスの駒のように移動する彼女に、最上は思わず笑いそうになる 「お二人は準備が終わったのですか?」 扶桑の問いを二人は肯定した。

2017-06-20 21:58:09
三隈グループ @Mikuma_company

「扶桑様の方はどうなさったんですか?…というより、あの後何を?」 食事が終わった後、扶桑は最上達とは別に何処かへ行ってしまっていた、故にこれは昼食後ぶりの再会である。 「少し散歩をしていました、ここは良いところですね。」 「ボクもそう思います。」 最上は初霜と共に頷く。

2017-06-20 21:59:02
三隈グループ @Mikuma_company

やがて扶桑はのそのそと二人の座るベンチの前へと歩み寄り、頭を最上の視線へと下げた 「…ところで今、お時間はありますか?」 そう言って紅い瞳がキョロキョロと交互に二人を見る、暇を持て余していた彼等の答えは決まっていた。 「では少し、お付き合い頂けますか?」 〜〜

2017-06-20 22:00:02
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 扶桑に連れられ、最上と初霜は泊地内にあるスーパーへとやって来た 「旅に出るにあたって、是非買っておきたいものがあるのです。」 向かう途中で彼女はこう言っていたが、二人はそれが何なのかまるで見当が付かなかった。

2017-06-20 22:01:02
三隈グループ @Mikuma_company

扶桑は一切の迷いなく歩く、野菜の森を抜け、肉と魚の山を越え、お菓子の国を通り越す、余りの迷いのなさに最上達はついて行くのに苦労したが、扶桑の圧倒的長身故に見失う事はなかった。 「ここです、二人とも。」 最終的に扶桑が立ち止まったのは、とても小さなおもちゃ売り場であった。

2017-06-20 22:02:14
三隈グループ @Mikuma_company

(こんなところで何買うんだ…?) 別段珍しいものがあるわけではない、水鉄砲やチープな卓球セットなど、ちょっと探せばどこにでもありそうなものばかりだ。 そういった商品の中から、扶桑は小さな何かを手に取った。 「これを買いたいのです。」 「これ…?」

2017-06-20 22:03:02
三隈グループ @Mikuma_company

扶桑の大きな手の上にあったのは、何の変哲も無い二つのサイコロであった。 「サイコロ…ですよね?」 初霜が目をパチパチさせながら訊くと、扶桑はそうですと頷いた 「何かあるんですか?このサイコロ…」 最上も思わず首を傾げて言ったが 「いえ、普通の賽です。」 と扶桑

2017-06-20 22:04:03
三隈グループ @Mikuma_company

「その、確認しますよ?本当にこれを買うんですか?」 横須賀最強の艦娘がスーパーでサイコロを買う、あまりの不自然さに最上は念を押すように再度訊いた、初霜も同様である。 だが二人に返ってきたのは肯定でも否定でもなく 「…ダメでしょうか?」 哀しそうな扶桑の顔と言葉であった。

2017-06-20 22:05:01
三隈グループ @Mikuma_company

「あっ、いやそうじゃないです」 「ちょっと驚いただけで…」 慌てて二人が否定すると、扶桑は安心したような顔になる 「良かった…では買ってしまいましょう。」 そう言うが早いか、彼女はサイコロ片手にレジへと向かう、最上と初霜もその後を着いて行った。

2017-06-20 22:06:02
三隈グループ @Mikuma_company

サイコロがレジに置かれ、店員がピッとすると値段が表示される、扶桑はその様子をなんだか楽しそうに見ていたのだが、肝心の代金を出す様子がない。 「…扶桑様?」 「はい?」 二人の声かけに、扶桑は微笑みながら答える、代金を出す様子はない。

2017-06-20 22:07:01
三隈グループ @Mikuma_company

「あの、お金は…」 二人がそう言うと、扶桑は困ったような、というより申し訳なさそうな顔で答えた 「ああ、ごめんなさい。私、実はお金を持っていなくて…」 「…なるほど。」 何故扶桑が自分達を呼んだのか、その理由を彼らは即座に理解した。 〜〜

2017-06-20 22:08:03
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 サイコロを購入し、最上と初霜は扶桑を連れて日向倶楽部の建屋へと戻って来た。 「お前達か、扶桑様と何処へ行っていたんだ?」 作業はあらかた終了したようで、玄関の前では日向が缶コーヒーを片手に一服していた、最上達は軽く散歩をしていたと報告する。

2017-06-20 22:09:01
三隈グループ @Mikuma_company

「私の方もほとんど終わったよ、調理器具や日用品はまとめて新品を購入して済ませたし、兵装は三隈達がやってくれている。」 そう言うと日向は空き缶をゴミ箱に放り込む 「お前達も忘れ物はないか?」 明日の朝ドタバタしたら困るぞと日向、最上達は大丈夫だと返す。

2017-06-20 22:10:02
三隈グループ @Mikuma_company

「扶桑様も大丈夫ですか?この島でやり残した事があると後で分かったら、それはそれで困る。」 日向は念の為扶桑にも確認を取る、扶桑も最上達と同様に大丈夫だと返した。 「…まあ、出発自体は明日ですから、もう一度よく確認しておいて下さい。」 「はい、そうしましょう。」

2017-06-20 22:11:02
三隈グループ @Mikuma_company

その後一同は三隈とあきつ丸が戻って来るまでの間、建屋のリビングで茶などを飲みながらゆるりと過ごした。 やがて二人が戻って来ると、扶桑を連れて外で夕食を済ませた。 「では皆さん、明日から宜しくお願いしますね。」 来客用の宿泊施設へ向かう扶桑を見送り、最上達は帰宅した。 〜〜

2017-06-20 22:12:01
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 その夜の事、執務棟の中を革靴を履いた背広姿の男が歩いていた。 彼はこのトラック泊地の提督、書類上は艦隊の最高責任者であるのだが、彼は那珂の様に有能な人物ではなく、艦娘を率いるのに適した男ではなかった。 故に彼は、その肩書きを利用した小さい仕事を日々行っているのだった。

2017-06-20 22:13:06
三隈グループ @Mikuma_company

「あそこの蕎麦屋、あんまり好きじゃないな…なかなか巡り会えない…」 ぶつぶつと呟きながら廊下を歩き、彼は執務室の扉へと向かう、彼の部屋は執務室を通り抜けた先にあるのだ。 時刻は夜の八時、執務室は既に無人であるはず、彼は迷う事なく鍵を挿入した。 しかし、鍵がかかっていない。

2017-06-20 22:14:01
三隈グループ @Mikuma_company

閉め忘れたのだろうか?空き巣に入られるほどショボいセキュリティではない為、彼は何の気なしに扉を開いた。 「…あれ、まだ居たのか…」 扉を開くと、月明かりだけが射し込む真っ暗な執務室、そしてよく見慣れたシルエットが目に入ってきた。

2017-06-20 22:15:03
三隈グループ @Mikuma_company

「ここは私の部屋でもあるんだよ、良いでしょう、居ても。」 見慣れたシルエット…もとい那珂の影は、提督の姿を確認すると椅子からゆっくり立ち上がった。 「何か用事でもあるのかい、こんな遅くに…」 提督はカバンを一旦ソファに置き、その上に上着を置いた。

2017-06-20 22:16:02
三隈グループ @Mikuma_company

やがて、窓の外を見ていた那珂が振り返り 「ねえ」 と切り出した 「提督のお母さんって、どんな女(ひと)だった?」 「えっ、母さん…?」 「そう、お母さん。」 那珂は頷く、月明かりの逆光により、提督から彼女の顔は全く見えなかった。

2017-06-20 22:17:11
三隈グループ @Mikuma_company

「母さんか…」 提督は少し考えてから答えた 「ヘンな人だったよ、ヘンだけど…息子である俺の事をいつも考えてくれてたし、良い人だったよ。いや…だったって変だな、まだ生きてるし。」 「暖かかった?」 彼の言葉を聞くなり那珂は訊いた、素早い問いかけと内容に、提督は少し戸惑った。

2017-06-20 22:18:06