日向倶楽部世界旅行編第1話「豪華客船ヒューガリアン」

三隈グループ @Mikuma_company

二人に謝ると、続いて日向の方を向く 「あんさんも堪忍なぁ、なんかごっつ強そうやったから、ちょっとテンション上がってもうたわぁ。」 日向は頷いてから言葉を返す 「ああ、こちらも急に襲いかかってすまなかった。…黒潮さん、だったかな」 「せや、あんさん達名前は？」

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「私は航空戦艦娘日向、こっちは部下の最上と初霜だ。」 最上と初霜はぺこりと頭を下げた 「なるほど、日向はんに最上はん、初霜はんやな。波紋使いで最上ゆーたら、巡洋艦杯優勝したあの最上なん？」 そうですねと最上が応えると、黒潮はふむふむと首を振る。

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「はぁ〜っ…そうかぁあの最上かぁ、録画やけど試合見とったでぇ、大井はんとの試合はホンマ熱かったわぁ。」 最上は照れて頭をかく 「ははは…ありがとうございます。」 「最上さんったらすっかり有名人ね」 初霜に茶化され、最上はますます笑っていた

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「でもあんさん、なんか雰囲気違う気がするわぁ…」 雰囲気？と最上は首を傾げる 「試合見てるとこう、なんか鬼気迫る感じやったんに、こう見ると可愛い普通の女の子やねん、海の上やと人が変わるタイプやろ。」 「そ、そうですかね…」 「うーん、そうやと思うわぁ。」

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「そういえば黒潮さんって…」 最上は少し考えてから、何ですか？と訊いた 「何言うてもなぁ…要はあれやろ、自己紹介しろっちゅう事やな？」 お願いしますと最上達が言うと、黒潮はコホンと咳払いをし、懐から手帳のようなものを取り出した。

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「海上保安庁特殊警備救難部海上保安艦隊旗艦、二等海上保安監の黒潮や、よろしゅうな。」 「は？」 長い長い肩書きに三人は困惑した 「もう一度言うで？海上保安庁、特殊警備救難部所属、海上保安艦隊旗艦、二等海上保安監の、黒潮や。」 今度はきちんと聞き取れたので、三人は頷いた。

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深海棲艦との戦いがひと段落を迎えた頃、落ち着きを取り戻した海は無法地帯であり、海賊を始めとする海の犯罪組織が急速に増え始めていた。 また、対深海棲艦軍が「深海棲艦と戦う」という名目で作られていた為、対人戦闘を行うのは色々と不都合があった事もこの問題に拍車をかけていた。

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そんな時、海上保安庁によって作られたのがこの「海上保安艦隊」である。 これは従来の海上保安庁の任務に艦娘を加えたものであり、今までとは違う海賊や水難救助などに対応する組織として、現在でも幅広く活躍している。 「分かりやすく言えば、まあ海のおまわりさんやな。」

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先ほど取り出した手帳にはバッジのようなもの、そして彼女の顔写真が貼られていた。 「これはウチらで作ったもんやけどなぁ、なかなかええもんやろ。」 黒潮はニコニコしながらそれをまたしまう 「…そういえば、関西の方なんですか？」 自己紹介を終えた彼女に初霜が訊く

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「ん？まあどちらかといえば西やなぁ、なんでぇ？」 「なんだか、少し違うような気がして…」 確かに、彼女の関西弁はイントネーションなどに微妙なズレがあった。 「ああこれなぁ、コッテコテだと伝わらへん事があってなぁ、だからある程度エセにしとるんや。」 「なるほど…」

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そんな風に四人が話していると、作業していた村上が声を上げた 「黒潮さん、設定終わりました。」 「おおそうかぁ、ほなウチらはこれで。」 黒潮が合図すると白ヘル達が撤収していく 「ありがとう黒潮、気を付けてくださいね。」 扶桑は椅子から降りて彼女に礼を述べた

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「おおきに、扶桑はんも気を付けてえなぁ」 黒潮も扶桑に手を振って扉の方へ向かう 「あんさん達、海賊とかがおったらウチらに連絡するんやでぇ？ウチらその道のプロやから、すぐ解決したるわ。詳しい事はホームページでなぁ」 最上達にそう言うと、黒潮は足早にブリッジを後にした。 〜〜

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〜〜 黒潮達が去った後、扶桑は皆を自分の前に集めて言った 「三人ともお騒がせして申し訳ありません、怪我はありませんでしたか？」 最上達は大丈夫だと応える 「そうですか、なら良かった…」 「扶桑様、この船大丈夫なんでしょうか？」 日向が懐疑的な目で言った

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「先程黒潮に話した通り、色々と問題がありました…。でももう大丈夫、通信機器も問題なく使えますし、この船の登録も済ませました。」 「…なら良いのですが。」 100%の納得はしていなかったが、日向は一応こう言った。 「航行に支障はありません、安心してください。」

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椅子の上で彼女は自信ありげに言った、仮にそうで無かったとしてもこの船を動かせるのは彼女しかいない為、日向達は納得するしか、任せるしかなかった。 「…そう、実は皆さんにお聞きしたい事があるのです。」 扶桑は唐突に話を切り替え、椅子から立ち上がった。

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「…今度はなんでしょうか？」 代表として日向が返事をする 「実はこの船の名前をまだ決めていません、何かありませんか？」 一同はまず、名前が付いていないことにひどく驚いた。 「この船、生活スペースは豪華客船の使い回しみたいですけど…じゃあそれの名前で良いんじゃ？」

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最上がそう言うと扶桑は困ったような顔をして 「それはダメです、新しさがありません…」 と言った、困ったというより悲しさすら感じる表情である。 「扶桑様が動かしてるんだから、扶桑号とか…」 初霜がこう言うと 「いけません、もっと目新しさを。」 扶桑はこう返す

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その後も「ミクマリン」「ジーザス・クライスト」「ベッピン丸」など、様々な案が浮かんでは却下されていった。 「扶桑様は何かないんですか…？」 「私にないから貴女達に聞いているのです…」 (この人、なんかイメージと全然違うぞ…) やがて議論が停滞した頃。

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「日向、先程から黙っていますが…貴女は何かありませんか？」 「私か…」 扶桑に言われ、日向は更に黙ってから口を開いた 「バーバリアンってのはどうだ。」 バーバリアン…未開人、野蛮人という意味である 「バーバリアン、悪くありませんね…」 が、すぐに扶桑はポンと手を打った

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「ヒューガリアンにしましょう。」 「は？」 「ヒューガルデンかよ」 最上と日向は唖然とした、その後ろで三隈がケラケラと笑っている 「ヒューガリアン、良い響きですし、日向倶楽部の名前にも合っています、これで良いでしょう。」 扶桑はウンウンと頷いた、さぞ気に入ったらしい。

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「待て、考え直せ…いや考え直してください、扶桑様。」 「そうですよ、いくらなんでもあんまりだ…」 食い下がる日向と最上だったが 「いいえ、これに決めました。それに船長であり旅の依頼主は私です、嫌とは言わせません。」 扶桑は首を横に振ってこれを突っぱねた、決定である。

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名前を決め終えた扶桑は満足気に椅子へと腰掛け、船…ヒューガリアンの操縦に戻る。 一方の日向は、最上が見たこともないような顔をして言った 「最上、人に振り回されるというのはなかなか疲れるな。」 「ひゅ、日向さん…」 最上は返す言葉が見つからないので、とりあえず笑った。

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「では皆さん、ヒューガリアンは引き続きトラック泊地を目指します。 操縦は私に任せて、ゆっくりと船旅を楽しんでください。」 扶桑はそう言って船を加速させた。 最新型船舶改めヒューガリアン、波をかき分けて海を進む… つづく

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【黒潮】 海上保安艦隊の旗艦で二等海上保安監を務める駆逐艦娘。 似非関西弁を喋る小柄な少女だが、保安監を任されるだけあって優れた手腕を持つ、精密な射撃や軽い身のこなしなど戦闘能力も極めて高い。 非常に陽気な人柄だが、悪党に対しては一切の容赦をしないドライな一面も持つ。

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【村上】 海上保安艦隊隊員の若い男、黒潮の部下。 海上保安艦隊は艦娘も所属しているが、元が元なので隊員は男性の方が多い。 【飛鷹】 海上保安艦隊の航空母艦娘、黒潮の部下。 【白ヘル】 海上保安艦隊の隊員達、白いヘルメットをしている事から白ヘルと呼ばれている。