メディアが報道しない本当のシリア・中東⒄ 「トランプの赤い一線」シーモア・ハーシュ/ヴェルテ(ドイツ)/2017年6月25日〜Trump’s Red Line by Seymour M. Hersh/ Welt, 25.06.2017(全訳)
- taiyonoibiki
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147. こうして大統領選全般を通じて海外不干渉主義をスローガンとし、アサドとの平和的関係を呼びかけていたドナルド・トランプは、就任後11週目にしてシリア空爆を実行し、それによって共和・民主両党から絶賛され、全米のメディアから真の英雄と称されることになったのだった。
2017-07-10 00:49:20148. MNSBCのチーフアンカー、ブライアン・ウィリアムズは、海上のアメリカ軍艦船から発射されるトマホークの映像を見て、「ビューティフォー」の言葉を連発し、CNNのファリード・ザカリアは「これでついにドナルド・トランプは正真正銘のアメリカ合衆国大統領になった」と述べた。 pic.twitter.com/wiTaCUR527
2017-07-10 00:51:14149. 2日の間にアメリカのトップ100紙が39の社説を掲載し、その全てがトランプのミサイル攻撃を絶賛もしくは支持していた。その中にはニューヨク・タイムズやワシントン・ポスト、そしてウォール・ストリート・ジャーナル紙が含まれている。 pic.twitter.com/lXt0mgAWyM
2017-07-10 00:52:12150. 5日後、トランプ政権はメディアを招集して記者会見を開き、シリアでの作戦内容の詳細について発表したが、作戦の責任者であったホワイトハウスの高官の身元が明かされることはなかった。
2017-07-10 00:52:49151. 発表の内容骨子は、アサドはハン・シェクーンでのサリン使用を否定しているがそれは嘘である、なぜなら、トランプ大統領がそう言ったからだ、というものだった。出席していたレポーターの中で、発表の内容に疑問を持つ者は一人としていなかった。議論しようとするものさえ皆無だった。
2017-07-10 00:53:15153. ⑴トランプ政権が、引き続きシリアが化学兵器を使用したと虚偽の声明を出し続けているために、アメリカのメディアと国民が、ロシアがシリアにおいて腐敗した情報操作と秘密の不法行為を繰り広げているという誤った信念を持つようになってしまった。
2017-07-10 00:54:13154. ⑵シリア全土においてそうであるように、シリアの同盟国であるロシア空軍はシャイラート基地にも配備されているから、当然、シリア政府が化学兵器を使用したことを知っていたし、使用を止めなかったことに対して責任を持っている。
2017-07-10 00:54:47155. ⑶シリア政府がサリンを使用したにもかかわらず、ロシアは依然としてシリアを支持し続けている。
2017-07-10 00:55:39156. それはつまり、2014年に国連チームがシリアの12の施設から化学兵器及びその前駆物質を完全撤去したと宣言したが、実はシリアは未だに化学兵器を隠し持っているのであり、これまでにも度々使用していることを証明している。
2017-07-10 00:56:00157. そこで、ダマスカス郊外で反政府武装組織に対して化学兵器を使用したという疑惑が再浮上している。
2017-07-10 00:56:20158. 記者会見に臨んだ政府報道官は、発言の信頼性を担保するために、<考える>、<暗示する>、<信じる>といった言葉を注意深く使用し、その頻度はわずか30分の会見の間に10回を超えた。
2017-07-10 00:56:47159. しかし、彼は、発表の内容は情報コミュニティの<我々の同僚の一人>によって<機密解除された>情報に基づくものであると言った。
2017-07-10 00:57:15160. この政府報道官がここで言わなかった、また知らされていなかった多くの機密情報の中に、4月4日の空爆にシリアがサリンを使用していないという情報が含まれている。
2017-07-10 00:57:38161. ところが、メインストリーム・メディアは政府が望むように反応したのだった。つまり、無数の警告を無視して、ロシアがシリアのサリン使用を隠蔽しているという物語を創作して、それを国中の人々にそれを信じ込ませたのである。まさに冷戦期の新装版という感じがする。
2017-07-10 00:58:27162. ニューヨーク・タイムズがその例である。アメリカの最も信頼における新聞とみなされているこの新聞が、例えば次のようなヘッドラインを一面に踊らせたのである。 <ホワイトハウス、ロシアのシリア化学兵器使用隠蔽工作を非難>
2017-07-10 00:58:54163. そのニューヨーク・タイムズの記事はロシア政府が否認していると記しながら、その中で政府報道官が<機密解除された情報>としたものが、ここで突然、<機密情報>に変えられている。
2017-07-10 01:00:06164. 事実として、シリアが化学兵器を使用したといういかなる公式情報も存在していない。事実としては、単に報道官が<攻撃に関して機密解除された情報>といっただけだ。
2017-07-10 01:00:29165. 根本的矛盾が4月末ごろになって現れてきた。ロシアも、シリアも、そしてアメリカ合衆国も、イスラム国とアルカイダ民兵を殲滅することに集中していたから、その三者間に根強い不信感がわだかまっていることはなんとしてもよくないことだとわかってきたのだった。
2017-07-10 01:01:28166. 「結局のところ、シリアが化学兵器を使用したというシナリオのおかげで一番得をしたのは他でもない、サラフィストトジハーディストたちだったのです」と情報コミュニティ上級補佐官は私に語った。
2017-07-10 01:01:49167. 「シリア、ロシア、アメリカの間に相互不信の不快な不協和音が高まっていたその間隙を突いて彼らは勢力を盛り返すことができたのだから。」
2017-07-10 01:02:23168. 「問題は、嫌われ者のシリアの信用を高める偽のサリン攻撃のようなシナリオを書くものがまだ出てきたら、どうなるのだろう?トランプは必要もないのに突然掛け金を釣り上げて、攻撃命令を出すように自分自身を追い込んでいったのです。
2017-07-10 01:02:51169. またインチキな話を作ってトランプのところに持って行こうとする輩がいないなんて考えないで方がいいですね。トランプは、自分が間違いを犯したと認めることができない性格なのだから。」
2017-07-10 01:03:17170. ※ハン・シェクーンとシャイラートの攻撃に関する具体的な質問状を6月15日付でホワイトハウスにメールしたが、まったく回答がない。 (了)
2017-07-10 01:03:48171. 解説: ピューリッツァー賞受賞者で、捜査型ジャーナリストのシーモア・ハーシュが再び<アサドの化学兵器>の虚偽を鮮やかに証明して見せてくれた。
2017-07-10 23:08:13